17 / 282
聖剣士強襲編
少年、立ち向かう
しおりを挟む17-①
フリードの操る恐竜型影魔獣、《黒王》はインサンの人型影魔獣を相手に苦戦していた。
流石は六幹部の生み出した影魔獣である。動きの素早さや滑らかさ、正確さが段違いである。
インサンの影魔獣は攻撃をことごとく回避し、肘から先が剣へと変化した右腕で黒王の体を徐々に削り、削ぎ落としてゆく。
「くっ……つ、強い!!」
手も足も出ない……これが、暗黒教団の幹部であるインサンと捨て駒の実験動物でしかなかった自分との力の差なのか……!?
焦るフリードを嘲笑うかのように、インサンの影魔獣が黒王をズタズタに斬り刻んでゆく……フリードの眼前で、両足首を斬り刻まれた黒王が倒れ伏した。
インサンの影魔獣は倒れた黒王の顔を踏みつけると、剣状の右腕を振り下ろして黒王の頭部を斬り落とした。
首を刎ねられた黒王が、核のあった頭部を残して消滅する。
インサンの影魔獣は『次はお前の番だ』と言わんばかりに、バスケットボール大に縮んでしまった首だけの黒王をフリードの足下に蹴飛ばした。
フリードは、目も鼻も口も無いはずのインサンの影魔獣が凶笑を浮かべているような気がした。
(だ、ダメだ……か、勝てない!!)
一歩……また一歩と影魔獣が近付いてくる。
フリードは絶望した。やはり、僕みたいな何の力も持たない凡人が暗黒教団の幹部に立ち向かおうなどと考える事自体が無謀だったのだ。
影魔獣が駆け出した。影魔獣は、恐怖に身が竦み、硬直してしまっているフリード目掛けて、刃と化した右腕を振り上げた。
「……ひっ!?」
殺される!! フリードは思わず目を閉じたが、自分に死をもたらすはずの一撃はいつまでたっても襲ってこない。
「ふ、フリード君……諦めちゃダメ……!!」
「ナジミさん!?」
フリード目掛けて繰り出された影魔獣の攻撃を、ナジミが右手に出現させた光の剣で受け止めていた。
「ナジミさん!! 僕なんかに構わず逃げて下さい!!」
「そんなの……絶対に……嫌ですっっっ……君は……私が……守ります……くうぅぅっ……!!」
ナジミは顔を真っ赤にして必死に踏ん張っているが、女性の腕力では影魔獣に抵抗しきれるはずもなく、ジリジリと押されている。
「ど、どうして……どうして僕みたいな無力な役立たずを……!!」
「そ……そんなの関係ありません!! 力があるかどうか……役に立つかどうかで人を救うか決めるなんて……そんなの傲慢過ぎます……っ!! 私は……目の前で苦しんでいる人や、困っている人がいたら……力になり……たい……それだけですっ!!」
「で……でも!!」
「例え特別な力や才能が無かったとしても……っ!! 君が思っているほど……君は弱くなんかないし……それに……君は一人じゃありませんっっっ!!」
「な、ナジミさん……僕は…………僕は………………オレはぁぁぁぁぁッッッ!!」
フリードは雄叫びを上げると足元に転がっていた黒王の首の断面に右の拳をねじ込んだ!!
熱い、尋常じゃなく熱い……だが、それ以上に熱い血の滾りに任せ、フリードはインサンの影魔獣を殴り飛ばした!!
「あああああああああああああああああああああっ!!」
フリードは仰向けに倒れた影魔獣に馬乗りになり、黒王の頭部と一体化した右拳で敵を殴った、ひたすらに殴った。
“ガアアアアアッッッ!!”
主に呼応するかのように、右手の黒王が荒ぶる雄叫びを上げ、敵の身体を食いちぎってゆく……そしてとうとう黒王の牙がインサンの影魔獣の核に突き立った!!
核を破壊されたインサンの影魔獣は、もがき苦しむように地面を転がった後、煙のように消えてしまった。
「はぁっ……はぁっ……や、やった……!! やったぞぉぉぉぉぉっ!!」
少年は雄叫びを上げながら、天に向かって右の拳を高々と突き上げた。
直後、異変が起きた。フリードの右手にブッ刺さっていた黒王の頭部がどろりと溶けてフリードの右手に吸い込まれるように消えてしまったのだ。
先程までの高揚感も一瞬で失せたフリードは慌てふためいた。
「ゲェーッ!? え、影魔獣が右腕の中に入って来たーーーーー!? ナジミさん、どどどどうしましょう!?」
「おおお、落ち着くのよフリード君!! ええっと……ええっと……考えるのよ、私!! むむむむむっ……!!」
ナジミは考えた末に、両手を揃えてフリードの右前腕部を掴んだ。
「……えいっ!!」
「痛だだだだだ!? 絞っても出ませんから!! 雑巾じゃあるまいし!!」
「ご、ごめん!! 右手に痛みはある!?」
「絞られて痛いです……」
「おぅふ……」
ナジミとフリードは 困り果てた!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神具のクワで異世界開拓!〜過労死SE、呪われた荒野を極上農園に変えてエルフや獣人と美味しいスローライフ〜
黒崎隼人
ファンタジー
ブラック企業で過労死したシステムエンジニアの茅野蓮は、豊穣の女神アリアによって剣と魔法のファンタジー世界へ転生する。
彼に与えられた使命は、呪われた「嘆きの荒野」を開拓し、全ての種族が手を取り合える理想郷を築くこと。
女神から授かったチート神具「ガイアの聖クワ」を一振りすれば、枯れた大地は瞬時に極上の黒土へと変わり、前世の知識と魔法の収納空間を駆使して、あっという間に規格外の美味しい作物を育て上げていく。
絶品の「ポトフ」で飢えたエルフの少女を救ったことを皮切りに、訳ありの白狼族の女戦士、没落した元公爵令嬢、故郷を失った天狐の巫女、人間に囚われていた翼人族の少女など、行き場を失った魅力的なヒロインたちが次々と彼の農園に集まってくる。
蓮が作る「醤油」や「マヨネーズ」などの未知の調味料や絶品料理は、瞬く間に世界中の胃袋を掴み、小さな農園はいつしか巨大な経済網を持つ最強の都市国家へと発展していく!
迫り来る大商会の圧力も、大国の軍勢も、さらには魔王軍の侵攻すらも、蓮は「美味しいご飯」と「農業チート」で平和的に解決してしまう。
これは、一本のクワを握りしめた心優しい青年が、傷ついた仲間たちと共に美味しい食卓を囲みながら、世界一豊かで幸せな国家「アルカディア連邦」を創り上げるまでの、奇跡と豊穣の異世界スローライフ!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる