22 / 282
聖剣士強襲編
斬られ役(影)、爆誕する
しおりを挟む22-①
シルエッタは一人、誰も知らない秘密の実験室で、恍惚の表情を浮かべていた。
その手の中にあるのは、武光を刺した蟲が変化した、操影刀・黒蟲である。
「フフフ……今まで沢山の人間で実験してきたけれど……異界人で実験するのは初めてですね」
床に木彫りの人形を置き、人形の頭上に手を翳す。
「…………はぁぁぁぁぁっ!!」
シルエッタが念を込めると、人形の頭上に光の玉が出現した。妖しくも眩く煌めく光の玉は、人形の足元に黒く、暗く、濃い影を作り出した。
「ふふふ……」
純粋なる好奇心、そして何より……これから自分に狼藉を働いた愚か者を徹底的に痛めつけるのだと思うと、思わず頰が緩む。
まぁ本物ではないが、今は色々と忙しい……今は影魔獣で我慢するとしよう。
テンションが上がったシルエッタは一応、念の為に周囲を見回して人がいないか確認してから、戯れに、インサンがよくやっているように、凶悪な笑みを浮かべて操影刀の刀身をペロリと舐めてみた。
「………………」
シルエッタは実験ノートに『操影刀は舐めちゃダメ!! 苦い!!』と記した後、コホンと咳払いをすると、改めて人形の影と向かい合った。
「さぁ……目覚めるのです!!」
シルエッタの投げた黒蟲が人形の影に突き立った!!
「…………?」
シルエッタは首を傾げた。
何も起こらない……?
シルエッタが影に近付いたその時だった。
突如として、影から物凄い量の煙が噴き出した。噴き出した白煙が一瞬で実験室を覆い尽くす。
「くっ……何が起きたというの!?」
視界を奪われたシルエッタが困惑していると、爆音と共に突然煙が吹き飛んだ。
シルエッタは音のした方へ目を凝らした。
……いる。あの異界人がそこにいる。髪こそ銀色だが、姿形も本物と寸分違わない。
黒蟲が、刺した相手から読み取った記憶を元に、対象の外見を再現したのだ。
「ふふふ……どうやら実験は成功したようですね。さぁ、こっちに来なさい……」
「…………」
武光の影魔獣は言われた通りに、ゆっくりとシルエッタの前まで歩いて来た。
制御も完璧のようだ。シルエッタは優しく微笑みながら言った。
「……跪きなさい」
「…………………………断るッッッ!!」
「うぶっ!?」
越◯詩郎ばりのヒップアタックが再びシルエッタに炸裂した!!
ヒップアタックを喰らって床に倒れ込んだシルエッタは、武光型影魔獣を睨みつけた。
「お前如きが、俺に命令するな……」
「なっ!? え……影魔獣の分際で……!!」
「ふぅん……俺、影魔獣なのか」
武光型影魔獣は手を開いたり握ったりしている。
「じゅ……13号ォォォォォォォォォッ!!」
シルエッタは自分の影を通じて実験体13号……インサン=マリートを召喚した。
「な、何だ!? ここはどこだ!? せ、聖女様!?」
「13号……あの失敗作を葬りなさい!!」
「あ、あれは……唐観武光!?」
「ズタズタに斬り裂き、暗黒教団の聖女に狼藉を働いた罪を……死をもって償わせるのです!!」
「へへへ…………お任せを!! オイ、テメェ!! 覚悟し……ガハァァァッ!?」
インサンは教皇から下賜された剣の柄を取り出した瞬間、瞬時に間合いを詰めた武光型影魔獣に顔面を鷲掴みにされ、後頭部を思いっきり床に叩きつけられた。
「グゥッ……て、テメェ……俺は……俺は143人殺しの……」
叫びを上げるインサンを武光型影魔獣は鼻で嗤った。
「フン、何が143人殺しだ……殺したと言っても雑魚ばかりだろう? 俺は……勇者と魔王をブッ飛ばしたぞ?」
「なっ!?」
聖剣士を強襲した武光型影魔獣は、インサンから暗黒教団の聖剣士の証しである黒聖剣の柄を奪った。
武光型影魔獣が力を込めると、黒聖剣の柄から瞬時に漆黒の刀身が伸びた。
「おおー!! ラ◯トセーバーっぽい!! いや……光じゃなくて影だから……シャドーセーバーか? うん……いいな、ソレ!! 今日からコイツは《影醒刃》だ!!」
「ふざけるんじゃねぇ!! そいつは俺様の剣……グハァッ!?」
インサンは横腹を蹴り飛ばされて石壁に叩きつけられた。
「うるさいよ、お前」
「ぐぐ……テメェ……もう許さねぇ!!」
「……失せろ」
「ギャアアアッ!?」
インサンは右腕の肘から先を剣状に変化させ、武光型影魔獣に飛び掛かったが、武光型影魔獣は影醒刃を振るい、インサンを真っ向から斬り下げた。
「い……嫌だ!! 死にたくねぇ!! 死にたく……死にたく……死に……たく……」
核を体ごと真っ二つに両断されたインサンは消えてしまった。
「ふ~んふ~んふ~ん、ふふふ~んふふふ~ん~♪」
ダ◯ス=ベイダーのテーマを鼻歌で歌いながら、武光型影魔獣はゆっくりとシルエッタの方を向いた。
「あのインサン=マリートから生み出した実験体13号がこうも容易く倒されるなんて!? か、影を……きゃあっ!?」
シルエッタは影魔獣を生み出している光の球を消そうとしたが、床に押し倒され、取り押さえられてしまった。
「おっと、俺を消そうったってそうはいかねえ!! そうなる前に……」
「私を殺そうというのですか? 私が死ねばあの光は消え、貴方は消滅します」
「何だとぉ!?」
「さぁ、そこをおどきなさい!! 私に服従するか、消えるか……貴方には二つの道しか無いのです!!」
それを聞いて武光型影魔獣は笑った。
「フフフ……そいつはどうかな!!」
「な、何を……んむぅっ!?」
シルエッタは唇を奪われた。熱く、ドロリとしたものが流れ込んでくる。何とか逃れようともがくものの、腕力の差があり過ぎた。
窒息寸前でようやく解放されたシルエッタは、四つん這いになって体内に流し込まれたものを吐き出そうとした。
「ゴホッ……カハッ……な……何をしたの!?」
「俺の体の一部をお前の体内に流し込んだ。今頃、お前の心臓に大穴を開けている事だろうさ」
「な……何ですって!? ううっ!?」
武光型影魔獣の言葉を裏付けるかのように、突然胸を襲った激痛に、シルエッタは左胸を押さえて蹲った。
「フフフ、安心しろ。お前の心臓に空いた穴は俺の肉体の一部がしっかりと塞いでる……だが、俺を消してしまったら……分かるな? まぁ、つまらない事は考えないこったな」
そう言って、武光型影魔獣はシルエッタに背を向けて歩き始めた。
「ま、待ちなさい実験体14号!!」
「誰が実験体14号だバカヤロー!! 俺は……唐観武光だ!!」
「それは違います。貴方はあの男の影から生み出された影魔獣にすぎません」
「影……か、武光の影……そうだなじゃあ俺は……《影光》とでも名乗るとするか!!」
「ど、どこへ行こうと言うのです!!」
「さぁな? でも俺の邪魔をする奴はお前らだろうと王国軍だろうと……本物の俺だろうとブチのめす!! 分かったら俺をどうにかしようなんて下らん事は考えない事だ、心臓破裂で死にたくなかったらな!!」
そう言うと、武光型影魔獣……《影光》はシルエッタのもとから走り去った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる