斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
33 / 282
調査隊結成編

聖将、蹂躙する

しおりを挟む

 33-①

 クレナが対影魔獣用新兵器・穿影槍せんえいそうと対面していたのと同時刻……
 
 マイク・ターミスタの南にある廃村に暗黒教団の信徒達が集まっていた。
 数は十五人……彼らはマイク・ターミスタを襲撃し、対影魔獣用兵器の開発を阻止するよう命じられた者達で、一応は『信徒』という扱いとなっているが、その実態は戦が終息して食い詰めた傭兵崩れや、脱走兵などの集まりだった。
 彼らは、村の広場で車座になって今後の対策を話し合っていた。

「チッ……何なんだあの男は!?」
「まさか影魔獣を斬る事が出来るとは……」
「あの黒い髪……もしかしてあの男が、聖女とやらが言ってた異界人いかいびとじゃねぇのか!?」
「厄介だな……敵をかなり消耗させてきたとこだってのに……」


「フン……まだマイク・ターミスタを陥せなていないのか……無能共め」


 突如、声がした。男達が慌てて声のした方に注目すると、木の陰から一人の男が現れた。
 暗黒教団のロングコートを身に纏い、フードを目深まぶかに被っていて顔はよく見えないが、声から察するに若い男で、右手には軍配のようなものが握られている。

「あぁ!? 何だテメェは!?」

 突如として現れた男を信徒達はにらみつけた。

「やれやれ、聖女殿も人を見る目がない……いくら人手が足りないからと、重要拠点の攻略をこんな連中に任せるとは。それとも……自分の作った影魔獣があればバカでもマイク・ターミスタをおとせるという自信かな?」

 人を食った青年の態度に信徒達は殺気立ったが、青年は意にも介さない。

「雑魚がごちゃごちゃうるさいなぁ、私を誰だと思っている。私は……暗黒教団六幹部が一人、《聖将せいしょう》エイノダ=イチュウハだぞ!!」

 男はフードを脱いだ。中から出てきたのは神経質そうな顔をした青年だった。

「……あっ、テメェは!!」

 エイノダの顔を見ていた達の内の一人が声を上げた。男は、かつて王国軍に所属していたが、軍を脱走した脱走兵であった。
 信徒の一人が声を上げた脱走兵の男に聞いた。

「おい、アイツの事知ってんのか?」
「ああ……成金貴族のイチュウハ家の長男で、三年前の大戦の時、俺はアイツが指揮する軍団の歩兵だった……」
「何でそんな奴が暗黒教団に……?」

  戸惑う男達に、エイノダが答える。

「フフン……王国軍には私の天才的な軍略の才に気付く者も、活かせる者もいないからな」

 不敵な笑みを浮かべるエイノダに対し、先程の脱走兵が忌々しげに吐き捨てる。

「ケッ、何が『天才的な軍略の才』だ!! 敵の策に翻弄ほんろうされて、疑心暗鬼に陥ったテメェのお粗末な指揮のせいで、俺達は敵の罠にかかって壊滅したんだ。大した能力も無ぇクセに軍団長になったボンボンのせいでなぁ!!」

 脱走兵の言葉にエイノダは取り乱した。

「き、貴様……ッ!! あの戦いは貴様らが命を捨てて戦っていれば勝てたんだ!! 私のせいではない!!」

 それを聞いた脱走兵は失笑した。

「オイ、聞いたか皆? 俺が脱走した理由が良く分かるだろう?」

 それを聞いた周りの男達がゲラゲラと笑う。

「テメェみたいなのを幹部に据えるようじゃあ、暗黒教団も先は見えたな……おい兄弟、コイツを捕らえて王国軍に投降しようぜ!!」
「ああ……それも悪かねぇ!!」
「褒賞金もたんまり貰えそうだしな!!」

 脱走兵の提案に次々と賛同する男達を見て、エイノダは歯嚙みした。

「なっ……貴様ら……!? 何を馬鹿な……今まで散々マイク・ターミスタやその周辺の村を襲っておきながら………私を突き出したところで、貴様らが今更許されるとでも……」
「あぁ!? 何寝ぼけた事言ってやがる……今までマイク・ターミスタ近隣を襲撃してたのは……お前なんだよ」
「な……何だと!?」
「俺達は、マイク・ターミスタを襲う影魔獣を影で操っていた暗黒教団の幹部を捕らえた英雄ってわけさ」
「くっ……」
「さぁ……大人しくしてもらおうか!!」

 男達は、懐から木彫りの人形を取り出し地面に置くと、人形の影目掛けて操影刀を投げた。影に突き立った操影刀が妖しく光り、人形の影が次々と立ち上がる。

 右ひじから先が剣状になった《剣影兵けんえいへい》、右肘から先がいしゆみ状になった《弩影兵どえいへい》、右肘から先が突撃槍ランス状になった《槍影兵そうえいへい》が各五体ずつ、計十五体もの影魔獣が現れた。

「へへへ……これだけの数の影魔獣から逃げられると思うなよ?」

 脱走兵は勝ち誇った笑みを浮かべたが、エイノダはそれを一笑に付した。

「フン……『これだけ』か?」

「何だと……?」

 エイノダは軍配を持つ右手を上げた。

「出でよ、我が精兵達よ!!」

 剣影兵A~Jが あらわれた!
 弩影兵A~Jが あらわれた!
 槍影兵A~Jが あらわれた!

 エイノダの背後の雑木林から次々と影魔獣が現れた。その数……三十体!!

「さぁ、行け……我が精兵達よ、反逆者共を始末しろ!!」

 エイノダの影魔獣達が男達に襲いかかった。男達も自分達の影魔獣を操り応戦したが、兵数差の前に、男達の影魔獣は倒され、術者である男達も一人……また一人と殺されてゆく。男達の数は十五人から十人に減っていた。

「ぐぐ……クソがっ!! オマエら、こっちも数を増やすんだ!!」

 脱走兵達は各々が持つありったけの操影刀を取り出した。中には操影刀を両手に五本ずつ持っている者までいる。彼らは人形の影に突き立てようとしたが……

「ぐうっ……む、胸が!?」
「く、苦しいっ!!」
「あ……ぐ……」

 男達が次々と倒れ、絶命してゆく。一度に大量の操影刀を使おうとした為に……操影刀に生命を吸い尽くされてしまったのだ。
 男達の数は五人まで減ってしまったが……

「はぁっ……はあっ……くそっ……だが……これで影魔獣の数は互角だ……」

 文字通り、命を削って影魔獣の数を増やした男達だったが、エイノダは彼らを鼻で笑った。

「互角だと……フフフフフ」
「な……何がおかしいってんだ!!」
「第二陣、前へ!!」
「なっ……!?」

 剣影兵K~Zが あらわれた!
 弩影兵K~Zが あらわれた!
 槍影兵K~Zが あらわれた!

 エイノダの背後の雑木林から、更に増援が現れた。

「……やれ」

 ……そこから先は、もはや戦闘と呼べるものではなく、一方的な虐殺だった。数の暴力の前に、男達の影魔獣は消滅させられ、男達も次々と殺され、最後に残ったのは脱走兵の男ただ一人となった。

「ひぃぃぃっ!? お、俺が悪かった!! 許してくれ!!」

 ひざまずき、地に頭を擦り付けて命乞いをする脱走兵を前にして、エイノダは冷笑を浮かべた。

「私には、影魔獣という忠実なる不死身の精兵達がいる……貴様のような、敵に無様に命乞いするような弱兵など要らん」
「ひっ!?」

 廃村に……男の断末魔が響き渡った。


 33-②

 エイノダが反乱者達を蹂躙じゅうりんしている頃、暗黒教団のアジトでは、教皇と聖女シルエッタが向かい合っていた。

「聖将は……マイク・ターミスタを陥せると思うか?」

 教皇の問いに、聖女シルエッタは微笑みながら答えた。

「ご安心下さい教皇陛下、聖将エイノダ=イチュウハ殿は、武将としての才や器にはいささか欠ける所がありますが、彼は己の生命力を使わずに影魔獣を生み出せる特異体質の持ち主です。
 それに、私が作った軍配……《聖将配せいしょうはい》があれば百体もの影魔獣を操る事が可能です。例えどれほどの無能だとしても百体もの影魔獣を率いて陥せぬ街がありましょうか」
「フフフ……そうか……そうだな」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...