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調査隊結成編
天驚魔刃団、襲来する
しおりを挟む34-①
「進軍せよ、我が精兵達よ!!」
反逆者共を粛正してから五日後、降り続いていた雨も止み、暗黒教団六幹部の一人、《聖将》エイノダ=イチュウハは、マイク・ターミスタの南にある小高い丘から生み出した影魔獣達に進軍を命じた。
剣影兵が十体である。
古来より、名将と呼ばれた者達は寡兵で大軍を破り、小勢で難攻不落の拠点を陥してきた。
天才的な軍略の才を持つ自分ならば、マイク・ターミスタを陥とすなど、剣影兵の十体もいれば容易いはずだ。
エイノダは聖将配を防壁の門へと向けた。
「ようし……突撃せよ、我が精兵達……んん? あれは……」
防壁の門が開き、中から敵が迎撃に出てきた。大楯を装備した五人一組の隊が二部隊と……赤やら青やら黄色やら何か色とりどりの部隊が一隊、計十五人程度の軍勢だ。
笑止な……不死身の我が影魔獣軍団を相手にたったあれだけの人数で戦いを挑もうというのか。
エイノダは敵の軍勢を鼻で笑った。
34-②
「来よったな……!! 防御陣形!!」
一丸となって向かって来る十体の剣影兵に対し、武光は、門のすぐ前に展開していた天照武刃団とマイク・ターミスタ守備隊に指示を出した。
天照武刃団とマイク・ターミスタ守備軍の第一、第二小隊の総隊長に任命された武光の指示で、第一小隊と第二小隊は大楯を並べて敵側から見てVの字に壁を形成した。
しかしながら、武光達の防御陣形は『逆Vの字』ではなく、カタカナの『ハ』の字を描いていた。第一小隊が形成した防御壁と第二小隊が形成した防御壁の間には人がギリギリ一人通る事が出来るくらい隙間が空いてしまっている。
通常、防御壁に隙間などあってはならない。そこから敵の侵入を許してしまうと、陣形が内側から突き崩されてしまうからだ。
剣影兵も当然、その隙間を目掛けて突き進んできた。だが、それこそ武光達の狙いであった。
先頭の剣影兵が人一人分の隙間を通り抜けようとしたその時だった。
「クレナ!!」
「ハイッ!! やあああああっ!!」
“グサッ!!”
壁の内側で待ち構えていたクレナが、剣影兵の腹部に穿影槍を突き刺した。
核に命中していない限り、影魔獣には何のダメージも与えられない。剣影兵は腹部に穿影槍が刺さったまま、クレナを斬り裂くべく、肘から先が剣になった右腕を振り上げた。
「させるかよっ!!」
フリードが、振り下ろされた一撃を魔穿鉄剣で受け止めた。
「やれ、クレナ!!」
「うん!! くらえええええーーーっ!!」
フリードに言われて、クレナは発光スイッチを押した。 “バシュッ” という音と共に影魔獣の体内で閃光が迸った。
「どう……!?」
武光達は固唾を飲んだ。果たして、穿影槍は影魔獣に通用するのか──
“ずるり”
剣影兵の上半身が千切れ落ちた!! 効果は抜群だった……影魔獣の下半身は二・三歩よろよろと後ずさった後、仰向けに着き倒れ込み、そのまま消滅した。
「や、やった……!!」
「二人共、まだだ!!」
ミナハに言われて、クレナとフリードはハッとした。残った上半身がまだ動いている。フリードは慌てて剣影兵の背中に馬乗りになり、逆手に持った魔穿鉄剣を振り上げたが……
(アレ……? 何だコレ……凄く……うまそうだ)
〔何してるの!? 早く!!〕
魔穿鉄剣の声で、剣を振り上げたまま固まっていたフリードは我に返った。
(ハッ!? な、何考えてんだ俺は!?)
フリードは慌てて魔穿鉄剣を振り下ろした。背中に魔穿鉄剣を突き立てられた上半身はもがき苦しみ消滅した。
適当に刺したつもりだったが、どうやら偶然にもピンポイントで影魔獣の核を貫いたらしい。クレナが感嘆の声を上げる。
「フー君凄いっ!? 一発で核に命中させるなんて!!」
「たまたまだって!! ……って言うかその呼び方やめろ!!」
「二人共、油断すんな!! 敵はまだまだ来るぞ!!」
「ハイ、隊長!!」
「分かってるって、アニキ!!」
天照武刃団の戦いは続いた。
大楯の壁を乗り越えようとする敵は防壁の上で待機しているキクチナと投光装置部隊が牽制し、大楯の壁を迂回し、後ろに回り込んできた敵は武光がイットー・リョーダンで斬り捨て、そして、大楯の壁の正面の隙間から侵入してくる敵を、フリードとミナハに守られながら、クレナが穿影槍で一体、また一体と貫いてゆく。
そして遂に、最後の一体が消滅した。
対影魔獣用新兵器、穿影槍はその威力を遺憾無く発揮し、影魔獣の『撃退』ではなく、『撃破』に成功したのだ。
穿影槍があれば、超聖剣や雷術などの特別な力が無くとも影魔獣に対抗出来る……!!
兵士達は歓声を上げた。
34-③
剣影兵の部隊を全滅させられたエイノダは聖将配をギリリと握り締めた。
「馬鹿な……不死身の我が精兵達が……」
影魔獣は不死身ではなかったのか? いや……今はそんな事はどうでも良い!!
軍略の天才、聖将エイノダ=イチュウハの輝かしき戦歴に傷を付ける訳にはいかない!!
「許さん……圧倒的な軍勢で蹂躙してくれる!!」
エイノダは剣影兵の大軍勢を生み出した。その数……百体!!
「突撃せよ我が精兵達!! 敵を殲滅し、マイク・ターミスタを蹂躙するのだ!!」
エイノダが聖将配で武光達を指し示すと、百体の剣影兵は目標目掛けて一斉に駆け出した。
34-④
「う、嘘やろ……!!」
〔何て数だ……!!〕
それは、巨大な黒い塊のようだった。
迫り来る影魔獣の大群を前に武光は息を呑んだ。まさか、あれ程の数の影魔獣がまだ潜んでいたとは……あれだけの数を防ぎきるのは不可能だ。
武光が防壁内への退避を命じようとしたその時だった。
「あ、アニキ……アレを!!」
「んん!? あ……あいつら何しとんねん!?」
武光は唖然とした。どこからともなくフード付きマントを被った五人組が現れ、影魔獣の群れの中に飛び込んだのだ。
その場にいた誰もが影魔獣の群れに突入した五人は無惨に殺されると思ったが、影魔獣の群れに突入した五人組は影魔獣を次々と倒し、消滅させてゆく。
百体いた影魔獣は瞬く間に数を減らしてゆき、遂には全滅した。
「め……めっちゃ強いやん」
〔奴ら、一体何者なんだ……!?〕
五人組は、呆気に取られる武光達の方にゆっくりと向き直ると、フード付きマントを脱ぎ捨てた。
「ゲェーーーーーッ!? あ、あれはーーーっ!?」
〔……た、武光!?〕
武光とイットーは、素っ頓狂な叫びを上げた。フードの下から現れたのは、銀色の髪を持つ武光と瓜二つの男と、魔狼族・ゴーレム族・鬼一族・妖禽族の四人の戦士だった。
武光は五人組の中央に立っていた自分そっくりの男に向けて声を張り上げた。
「お、お前……一体、何者や!!」
武光の問いに対して、男はニヤリと笑った。
「ふっふっふ……お初にお目にかかるッッッ!! 俺は影魔獣・《影光》!! そして俺達は……《天驚魔刃団》、この国の……天下を奪る者だぁぁぁぁぁッッッ!!」
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