斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
44 / 282
魔刃団結成編

天驚魔刃団、進撃する

しおりを挟む

 44-①

「私の剣を探して」

 そう言い出したのは、ヨミだった。

「お前の剣……?」

 影光は小首を傾げた。
 言われてみれば……ヨミがレムのすけと戦った時に使っていた短剣は、何の変哲も無い鋼の短剣だったが、以前は違う剣を使っていたような気もする。
 影光は武光が以前この世界にやって来て、ヨミと戦った時の記憶を辿った。

「ああ!! 思いだした……《チャーシューメン・豚骨》だな!?」
「《吸命剣きゅうめいけん妖月ようげつ》よっ!!」

 《吸命剣・妖月》……この国に数本しか存在しない、文字通り、命を吸う魔剣である。ヨミが持っていた吸命剣・妖月は斬った相手の生命エネルギーとも言える力を吸い取り、その力を使い手に注ぎ込み、力を与える。
 但し、その際に、注ぎ込む力に応じた痛み・苦しみを使い手に与え、過去にはその苦しみに耐え切れずに命を落とした者も多数存在するという、まさに魔剣である。

「……で、その吸命剣とやらを何者かにまんまと奪われた……と?」
「う、ウルサイわね!! ワンコオヤジ!!」
「……で、情報を集める為に魔族である事を隠して人間達に紛れていた……と?」
「な、何か文句ある!? ガリガリ鬼!!」
「……ゲ、ゴォアググ……ド?」
「何言ってるかさっぱり分かんないってば!!」
「しょーぐん、ねむい」
「ねむい」
「うっさいチビ共!! とにかく、あの剣はお母様から頂いた大切な物なの!! アンタ達も探すのを手伝わせてあげるから感謝しなさいよね!?」
「フン、小娘が偉そうに……そんなもの後回しだ、後回し!!」
「ま、確かに優先度は低いでしょうね……」

 ガロウとキサイの言葉にレムのすけも頷く。

「何でよ!? か弱い乙女が!! 二年近くも!! たった一人で!! 大切な物を探し続けてんのよ!? 健気だとか、可哀想だとか、助けてやりたいとか、下僕にして下さいとか思わないわけ!?」
「全く思わん!! それが他人に物を頼む態度か!!」
「同感ですね……」

 ガロウとキサイの言葉にレムのすけも再び頷いた。

「うーん、どうすっかなー……ん?」

 悩む影光の左右のそでをつばめとすずめが、くいくいと引っ張った。

「どうした? つばめ、すずめ」
「しょーぐん……かわいそう」
「うん……」

 どうやら、子供に優しい所は完全にコピーされているらしい。影光は片膝立ちになって二人と目線を合わせると、頭にぽんと手を置いた。

「……そうだな、手伝ってやるか!!」
「うん!!」
「うん!!」

 影光は立ち上がると、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしているガロウ達をなだめた。

「まーまー、そう嫌そうな顔すんなって。別につばめ達に頼まれたからってだけじゃない、一応他にも理由があるんだ」
「何だ、それは……?」

 ガロウの質問に影光は答えた。

「……操影刀だ」
「操影刀……? 確か、暗黒教団の奴らが影魔獣を生み出す時に使う道具だったか……」
「おう、使用者の命を吸い、影魔獣に力を与える剣……何かに似てると思わねぇか?」
「まさか、吸命剣・妖月か……!?」
「ああ……あくまで推測だが、操影刀は妖月を元に作られてるんじゃないかと思ってな……妖月を追えば暗黒教団に辿り着く気がするんだ。魔王軍に入り込むにしても、手土産の一つも必要だろう。幹部の首の一つでも持って行ってやろうぜ!!」
「ぬう……そう言う事ならば」
「分かりました」
「ゴムッ」
「ったく……つべこべ言わず、最初っから『手伝わせて下さい!!』って言えばいいのよ!!」

 影光に同意した三人に対し、悪態をくヨミだったが……

「しょーぐん、だめ!!」
「めっ!!」
「な、何よチビ共……」

 つばめとすずめの純粋で真っ直ぐ過ぎる視線にヨミはたじろいだ。

「そうだよなぁ。つばめとすずめ、人に何かを手伝ってもらう時はどうすれば良いか。将軍に教えてやってくれ」

 思考を読む事の出来るヨミである。つばめとすずめ、そして影光の言わんとする事を察し、ヨミはぐぬぬ……と唸った。

「わ……分かったわよっ!! やれば良いんでしょう、やれば!? や、野郎共!!」

 全員の視線がヨミの方に向いた。

「あの……その………………………ありがと」

 蚊の断末魔のような小さな声で、しかもそっぽを向きながらではあったが、それを聞いたつばめとすずめは嬉しそうに笑った。

「しょーぐん、いいこ!!」
「しょーぐん、えらい!!」
「な、生意気言うんじゃないわよ、チビ共!!」

 足取り荒く、集団から離れたヨミを見て、影光達は笑った。

「わはは、照れてやんの」
「よくやったぞ、つばめとすずめ」
「二人とも偉いですよ?」
「グモモ」

 何故自分達が褒められているのか分からずにキョトンとするつばめとすずめであった。

 しばらくして、戻って来たヨミに、影光は聞いた。

「ところでヨミ、妖月の行方だが……手がかりはあるのか?」
「フフン……当然よ!! この二年間……あちこちを飛び回って情報収集して、怪しい場所をいくつか絞り込んであるわ。とりあえずここから一番近いのは……マイク・ターミスタかしらね。影魔獣の出現も多発してるし」
「そうか……よーし、野郎共!! マイク・ターミスタに向けて進撃だッッッ!!」



 かくして、影光率いる天驚魔刃団は現れた……武光率いる天照武刃団の前に!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

処理中です...