47 / 282
両雄邂逅編
天照武刃団、備える(前編)
しおりを挟む
47-①
ひとまずの脅威は去り、マイク・ターミスタの防衛に成功した天照武刃団の面々は、次なる戦いに備えていた。
クレナはマイク・ターミスタの職人達と、刀匠ジャトレーの工房で、穿影槍の改良作業に取りかかっていた。
穿影槍は影魔獣に対し、絶大な威力を発揮したとはいえ、初の実戦だったのだ。訓練の時には分からなかった改善点や問題点がいくつも出てきた。
「訓練の時は動かない人形相手だったから気にならなかったんですけど……突き刺した時に相手が暴れると、発光ボタンを押す右手が “ズル” って滑っちゃって……」
「ううむ、それは問題じゃのう」
「それなら……弩みたいに、把(=グリップ)と引き金を付けるというのはどうだ?」
「ふむ……やってみるか。おおーい」
弩職人の一人が発した言葉にジャトレーは頷くと、弟子を呼び、穿影槍を渡した……と、言ってもジャトレーが渡したのは本物ではない。大きさと重さこそ、本物と同じように作られてはいるものの、発光機構などの内部機構はオミットされている模型である。まずは模型で試してみて、問題が無ければ実物を改良してゆくのだ。
「あと、激しく動きながらだと閃光石の装填も難しかったです」
「むむむ……よし、そこも何とかしよう。リョエン殿の槍に使われている雷導針の装填機構を応用すればいけるかもしれん」
クレナの意見を聞いた内部機構班の技術者達はすぐさま作業に取り掛かかった。
「それと……もう少し軽くならないですかね」
「そこはクレナ嬢が筋肉ムキムキになれば問題あるまい?」
ジャトレーの冗談に周囲の職人達は笑いを漏らしたが……
「なるほど!! 私……鍛えてきますっ!!」
「えっ?」
クレナは大真面目な顔で頷くと、物凄い勢いでジャトレーの工房を飛び出して行った。
「素直と言うか、単純と言うか……武光殿も大変じゃのう」
職人達は笑った。
47-②
フリードとミナハはナジミと共に訓練をしていた。
「さぁ、フリード君にミナハちゃん!! 今日は48の退魔技のその18と19を教えちゃいますよ!!」
「副隊長殿、よろしくお願いします!!」
「へーい」
やる気満々のミナハに対して、フリードはイマイチやる気の感じられない返事だ。
「む……なんですかフリード君、その気の無い返事は!?」
「いやー、だって姐さんの48の退魔技って、地味な技ばっかりなんだもん……キクチナから聞いたんだけど、三大奥義ってのがあるんでしょ? そういう凄いの教えてよ」
それを聞いたミナハがフリードを窘めた。
「馬鹿者!! 奥義というのは来る日も来る日も研鑽に研鑽を積み、鍛錬に鍛錬を重ねてようやく会得出来るものなのだぞ!!」
「えー、でもこの前教えてもらった指折り固めとか、影魔獣に効かねーじゃん」
「確かにな……だが、お前には効くぞ?」
「痛だだだだだ!?」
「どうだ? 影魔獣には効かなくても術者を取り押さえるのには役立つぞ?」
「ミナハちゃん、やめてあげて!?」
「……分かりました、副隊長殿」
ミナハは指折り固めを解いた。
「痛てててて……お前、もう少し手加減しろよなー」
「ふふん、これに懲りたら『奥義を教えてくれ』などと軽々しく言わない事だな」
「うーん、三大奥義ですか……別に教えてあげてもいいけど……」
「副隊長殿!?」
「マジで!! さすが姐さん!!」
「ではまず、三大奥義についてですが……」
ナジミは三大奥義について語った。
「三大奥義はアスタト神殿の壁画に記された三つの奥義で、それを修得するには多大な苦難が待ち受けています……壁画の絵が何か知らない間に変わってたり」
「何それコワイ!?」
「掛け方の解釈を間違えていると、壁画から御先祖様の霊魂が飛び出して罰を与えられたり……」
「御先祖様コワイ!!」
「ちなみに私は最初、《アスタトの復讐者》の壁画を見た時に、技の掛け手と受け手を間違えて解釈してしまっていた為に、壁画から飛び出してきた霊魂光線を喰らって……あの時は全身黒焦げになったかと思いました……まさか下側の人が掛け手で上側の人が受け手だったとは……」
「うそーん……」
ナジミはぶるりと身震いすると、フリードにニコリと微笑みかけた。
「さてと、それじゃあフリード君には特別に三大奥義を伝授してあげます!!」
「よ……48の退魔技を教えて欲しいっス!! 48の退魔技マジカッケェっス!!」
「遠慮しなくても良いのよ?」
「何言ってるんスか姐さん!! 奥義ってのはねぇ……日々の鍛錬と研鑽の上に成り立つものなんですよ!! ミナハも『奥義を教えて』とか軽々しく言ってんじゃねーよ!!」
「私は言ってないぞ!?」
兄貴分に似てきたなぁと思い、クスリと笑うナジミであった。
ひとまずの脅威は去り、マイク・ターミスタの防衛に成功した天照武刃団の面々は、次なる戦いに備えていた。
クレナはマイク・ターミスタの職人達と、刀匠ジャトレーの工房で、穿影槍の改良作業に取りかかっていた。
穿影槍は影魔獣に対し、絶大な威力を発揮したとはいえ、初の実戦だったのだ。訓練の時には分からなかった改善点や問題点がいくつも出てきた。
「訓練の時は動かない人形相手だったから気にならなかったんですけど……突き刺した時に相手が暴れると、発光ボタンを押す右手が “ズル” って滑っちゃって……」
「ううむ、それは問題じゃのう」
「それなら……弩みたいに、把(=グリップ)と引き金を付けるというのはどうだ?」
「ふむ……やってみるか。おおーい」
弩職人の一人が発した言葉にジャトレーは頷くと、弟子を呼び、穿影槍を渡した……と、言ってもジャトレーが渡したのは本物ではない。大きさと重さこそ、本物と同じように作られてはいるものの、発光機構などの内部機構はオミットされている模型である。まずは模型で試してみて、問題が無ければ実物を改良してゆくのだ。
「あと、激しく動きながらだと閃光石の装填も難しかったです」
「むむむ……よし、そこも何とかしよう。リョエン殿の槍に使われている雷導針の装填機構を応用すればいけるかもしれん」
クレナの意見を聞いた内部機構班の技術者達はすぐさま作業に取り掛かかった。
「それと……もう少し軽くならないですかね」
「そこはクレナ嬢が筋肉ムキムキになれば問題あるまい?」
ジャトレーの冗談に周囲の職人達は笑いを漏らしたが……
「なるほど!! 私……鍛えてきますっ!!」
「えっ?」
クレナは大真面目な顔で頷くと、物凄い勢いでジャトレーの工房を飛び出して行った。
「素直と言うか、単純と言うか……武光殿も大変じゃのう」
職人達は笑った。
47-②
フリードとミナハはナジミと共に訓練をしていた。
「さぁ、フリード君にミナハちゃん!! 今日は48の退魔技のその18と19を教えちゃいますよ!!」
「副隊長殿、よろしくお願いします!!」
「へーい」
やる気満々のミナハに対して、フリードはイマイチやる気の感じられない返事だ。
「む……なんですかフリード君、その気の無い返事は!?」
「いやー、だって姐さんの48の退魔技って、地味な技ばっかりなんだもん……キクチナから聞いたんだけど、三大奥義ってのがあるんでしょ? そういう凄いの教えてよ」
それを聞いたミナハがフリードを窘めた。
「馬鹿者!! 奥義というのは来る日も来る日も研鑽に研鑽を積み、鍛錬に鍛錬を重ねてようやく会得出来るものなのだぞ!!」
「えー、でもこの前教えてもらった指折り固めとか、影魔獣に効かねーじゃん」
「確かにな……だが、お前には効くぞ?」
「痛だだだだだ!?」
「どうだ? 影魔獣には効かなくても術者を取り押さえるのには役立つぞ?」
「ミナハちゃん、やめてあげて!?」
「……分かりました、副隊長殿」
ミナハは指折り固めを解いた。
「痛てててて……お前、もう少し手加減しろよなー」
「ふふん、これに懲りたら『奥義を教えてくれ』などと軽々しく言わない事だな」
「うーん、三大奥義ですか……別に教えてあげてもいいけど……」
「副隊長殿!?」
「マジで!! さすが姐さん!!」
「ではまず、三大奥義についてですが……」
ナジミは三大奥義について語った。
「三大奥義はアスタト神殿の壁画に記された三つの奥義で、それを修得するには多大な苦難が待ち受けています……壁画の絵が何か知らない間に変わってたり」
「何それコワイ!?」
「掛け方の解釈を間違えていると、壁画から御先祖様の霊魂が飛び出して罰を与えられたり……」
「御先祖様コワイ!!」
「ちなみに私は最初、《アスタトの復讐者》の壁画を見た時に、技の掛け手と受け手を間違えて解釈してしまっていた為に、壁画から飛び出してきた霊魂光線を喰らって……あの時は全身黒焦げになったかと思いました……まさか下側の人が掛け手で上側の人が受け手だったとは……」
「うそーん……」
ナジミはぶるりと身震いすると、フリードにニコリと微笑みかけた。
「さてと、それじゃあフリード君には特別に三大奥義を伝授してあげます!!」
「よ……48の退魔技を教えて欲しいっス!! 48の退魔技マジカッケェっス!!」
「遠慮しなくても良いのよ?」
「何言ってるんスか姐さん!! 奥義ってのはねぇ……日々の鍛錬と研鑽の上に成り立つものなんですよ!! ミナハも『奥義を教えて』とか軽々しく言ってんじゃねーよ!!」
「私は言ってないぞ!?」
兄貴分に似てきたなぁと思い、クスリと笑うナジミであった。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる