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両雄邂逅編
天照武刃団、備える(後編)
しおりを挟む48-①
キクチナはリョエンのもとで、雷術を学んでいた。
雷術が使えれば、影魔獣の動きを一時的に止める事が可能となり、穿影槍を持つクレナの援護がしやすくなる。
ボウガンも通常の矢を放つものから《雷導針》を発射可能なものに改造されている。
ちなみに、《雷導針》とは簡単に言えば金属製の細長い杭で、雷術で発生した稲妻を誘導する為の物である。
雷術は天才リョエン=ボウシンによって編み出されたばかりで、まだまだ制御が難しく、雷導針を打ち込んでからでないと、雷がどこに落ちるか分かったものではないのである。
「ら、雷術……震天霹靂っ!!」
一条のか細い稲妻が、的に打ち込んだ雷導針に向かって “ぱちん” と疾った。
キクチナの雷術を見て、リョエンは小さく頷いた。
「キクチナさん、上手くなりましたね。少し休憩しましょうか」
「い、いいえ……まだまだです。もっと……もっと上手くならないと……!!」
朝からずっと訓練し通しのキクチナを見て、リョエンは顎に手をやり、フムと頷いた。
「いいでしょう。では……術の上達に大事な事を二つ教えます」
「は、はい……!!」
物凄い勢いでメモ帳を取り出したキクチナを見て、リョエンはクスリと笑った。
……なるほど、ミト姫様が目をかけて可愛がるのもよく分かる。三人の少女達は、形は違えど皆、真っ直ぐで頑張り屋なのだ。
「一つ、術の習得に焦りは禁物です。焦り・怒り・恐れなど、雑念を捨てて、精神を集中する……これが、術を習得するための近道です」
「は、はい!! もう一つは……?」
「二つ目は、師匠の言う事をよく聞くことです。休憩にしましょう、ね?」
「は、はい……」
キクチナは、リョエンが差し出した水の入った水筒を受け取った。
リョエンとキクチナはベンチに腰掛け、色々な事を話した。
「私はね、君達の隊長と副隊長、それにミト姫様にも火術をご教授させて頂いた事があるんだよ」
「そ、そうなんですか!?」
「武光君は割と器用で、すぐに簡単な火術を使えるようになったけど、ナジミさんはそれはそれはもう、ビックリするくらい不器用でね。最終的にはロウソクの火くらいの小さな火を出すのがやっとだった……まぁ、術の習得は誰にでも出来るものではないからね」
「ひ、姫様はどうだったんですか……?」
キクチナに聞かれて、リョエンは思わず、思い出し笑いをした。
「そりゃあもう、教えるのには本ッッッッッ当に苦労しましたよ? あの方も筋金入りの負けず嫌いですからね……必死になってやるんですけど、上手く出来ないとすぐ涙目になるし、秘密の特訓に深夜まで付き合わされた事も一度や二度じゃありません。『武光だけには負けたくないんですっ!!』って言って……コツさえ掴めば上達は早い方でしたが……」
「そ、そうだったんですか……」
「君も大人しそうに見えて、意外と姫様に似ているところがあるからね……深夜まで特訓とか言わないでくださいね? あまり不規則な生活を続けると妻に怒られてしまう」
「わ、分かりました…………では明日からは、『朝から深夜まで』ではなく、『早朝から夜まで』訓練する事にします!! リョエン先生、ご指導よろしくお願い致します!!」
「ハハ……」
リョエンは、苦笑するしかなかった。やはり、ミト姫様が目をかけて可愛がるのがよく分かる。
48-②
宿屋の自室にて、武光は深く悩み、考えていた。
「…………俺らも、名乗りのポーズ考えた方がええやろか?」
〔オイ!?〕
〔ご主人様!?〕
……冗談はさて置き、武光は深く深く悩み、考えていた。
ヨミは、『私の剣を知らないか?』と言っていた……前にこの世界に来て、魔王に攫われたナジミを救出する為に魔王城に潜入した時、行動を共にしていたヨミは、『あの剣は母親からもらった大切な物』と言っていた。易々と手放したり、無くしたりするとは到底思えない。
「……ちゅう事はつまり、奪われたって事か……?」
誰に、という部分はすぐに見当が付いた。
「暗黒教団の奴らか……」
暗黒教団が信徒達に配布している操影刀……使用者の生命力を吸い、影魔獣に力を与える剣……
影光の元になった男である、影光と同じ答えに行き着くのに時間はかからなかった。
「もしかして……操影刀はヨミの吸命剣・妖月を元に作られてる……?」
〔ああ、僕も操影刀の持つ嫌な雰囲気は何処かで感じた事があると思っていたんだ〕
〔じゃあ、あの鳥もも女の剣を追えば、操影刀の製造拠点を見つけられるって事ですね!!〕
「うーん、それはそうなんやけど……なんせ手掛かりが無いからなあ……」
「武光様ーーー」
煙が噴き出んばかりに頭を悩ます武光の元に、訓練を終えたナジミがバスケットを手にやってきた。
「おう」
「ずっと悩んでたみたいですけど……大丈夫ですか?」
「いやな、これからどうやって暗黒教団の手掛かりを探せばええんかと思ってな……うーん」
「あまり、根を詰め過ぎるのも良くありません、少し休憩しましょう」
「……せやな」
「あ、そうだ。これ差し入れです」
ナジミが、手に持っていたバスケットの蓋を開けた。バスケットの中には赤ん坊の顔くらいありそうな、どデカイ豚まんのようなものが入っていた。
「で、デカイな……」
「ハイ、この街の名産品です。鶏のお肉と、この近くでしか採れない山菜がたっぷり入っててとっても美味しいんですよ!!」
「名産……この近くでしか採れない……ハッ、そうかーーーっ!!」
武光は勢い良く立ち上がった。
「ふぇっ!? 武光様、どどど、どうしたんですか急に!?」
「何で気付かんかったんや……時代劇でも悪事に足が付く定番やのに……操影刀の素材に何が使われてるかを調べたらええんや!!」
「どういう事ですか? ちょっ、武光様ーーーーー!?」
呆気に取られるナジミを置いて、武光は駆け出した。
操影刀の素材の産地……きっとその近くに、操影刀の製造拠点はある。
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