68 / 282
聖道化師襲来編
隊員達、困惑する
しおりを挟む68-①
フリードと三人娘は、宿屋で武光とナジミの帰りを待っていた。
「も、戻ってきませんね、武光隊長とナジミ副隊長……大丈夫でしょうか?」
イットー・リョーダンと魔穿鉄剣から『武光は、怒って飛び出したナジミを追っかけてった』と聞いたキクチナが心配そうに呟く。
「大丈夫だろー、心配し過ぎだってキクチナ」
「そーそー、何のかんの言っても隊長と副隊長は仲良しなんだから大丈夫だよキクちゃん」
「は、はあ……だと良いんですけど」
その時、窓の外を見ていたミナハが声を上げた。
「三人共、隊長殿と副隊長殿が戻ってきたぞ」
四人は窓際に集まった。四人の視線の先では武光とナジミが手を繋いでこっちに向かって歩いていた。
「ほら見ろ、もう仲直りしてるじゃんか」
「よ、良かったです……」
「おーおー、手なんか繋いじゃって、しかも両手って……ああいうの、確か隊長の国では “らぶらぶ” って言うらしいよ?」
こちらに向かって来る武光とナジミを見て、ミナハが首を傾げる
「うーん……隊長殿と副隊長殿……何かおかしくはないか?」
「そうだよなー、仲直りの直後とは言え、人前でイチャつき過ぎだよなー!!」
「ねー!! フー君もそう思うよねー!?」
「いや、そういう事ではなく……」
「ま、とにかくアニキ達を出迎えてやろうぜ!!」
その後、部屋で武光とナジミを出迎えた四人の隊員達は困惑した。
……二人の様子がどうもおかしい。
「なぁー、ええかげん手ぇ離せやー」
「嫌です!! 手を離したら絶対に揉む気でしょう!?」
「あのなぁ……こうして一日中手ぇ繋いどく訳にもいかんやろ?」
「うぅ……絶対に揉まないで下さいね!? 絶対ですよ!?」
「安心しろ!! 俺は超人界一の紳士、ロ◯ンマスクに匹敵する紳士なんやぞ!?」
「誰なんですかそれ……」
武光(中身はナジミ)は小さく溜め息を吐くと、恐る恐る手を離した。そしてその瞬間、ナジミ(中身は武光)は即座に自分の胸に手を伸ばそうとして、再び両手首を掴まれた。
「こ、コラーーーーー!! 何が紳士のロ◯ンマスクですかっ!! 油断も隙も無いんだから!!」
「フッ……ロ◯ンマスクはな、アメリカ遠征編とか第21回超人オリンピックの時は、やさぐれて荒みまくってたんや」
「ば、バカヤローーーーーっ!!」
そんなやりとりをしている二人に、フリード達が恐る恐る声をかけた。
「あの……アニキ?」
「副隊長?」
「お二人共、一体何を……?」
「も、もしかして……お芝居の練習とか……?」
フリード達に気付いた武光とナジミは物凄い勢いで四人に詰め寄った。
「おう、フリード!! 聞いてくれや!!」
「ね、姐さん!? 何か口調が荒々しいんだけど!?」
「ああ……クレナちゃん!! ミナハちゃん!! キクチナちゃん!! 聞いて!!」
「クレナ……ちゃん!?」
「隊長殿!?」
「ほ、本当にどうしちゃったんですか!?」
「「じ、実は……」」
68-②
「「「「た……魂を入れ替えられたーーーーー!?」」」」
武光とナジミから事の次第を聞いたフリードと三人娘は叫びを上げた。
「って……いやいやいや、いくら何でもそんな事って……ねぇ、フー君」
「お、おう……ははーん、さてはアニキ達……俺達を担ごうとしてるな!?」
「あ……アホかーーー!! そんな事して俺らに何の得があんねん!!」
フリードに詰め寄るナジミ(中身は武光)を見て、キクチナが首を傾げる。
「で、でも……武光隊長はともかく、ナジミ副隊長がそんな事するでしょうか……?」
「そうだな。それに、芝居にしては副隊長殿の演技が上手過ぎる!!」
「へっ……?」
ミナハの言葉に武光(中身はナジミ)は、ぽかんと口を開けた。
「皆聞いて欲しい、今日の朝、私は副隊長殿の『隊長殿のモノマネ』を見た!! 失礼ながら……驚くほどド下手だったッッッ!! あの演技の下手な副隊長殿が……こんなにソックリに隊長殿の仕草や口調をマネ出来るはずが無いッッッ!!」
「確かに……姐さんにはムリだ!!」
「うん、副隊長にはムリだよ!!」
「た、確かに……ナジミ副隊長には絶ッッッ対にムリです!!」
「皆……ちょっと傷付くなぁソレ」
指先を合わせていじける武光(中身はナジミ)をよそに、ミナハは続ける。
「つまり隊長殿と副隊長殿の話は……」
「本当ってことなの!?」
「と、という事はつまり……」
「明日の昼までに何とかしなくちゃ、アニキも姐さんも死んじまうって事じゃないか!!」
「……うっ!?」
その時、ナジミ(中身は武光)が小さく呻き声を上げた。
「ど、どうしたんだよアニキ!?」
「武光様!? まさか……あの男が言っていた拒絶反応ですか!?」
「あ……いや……その……トイレに……」
「何だ……脅かさないで下さいよ武光様」
「ごめんごめん、ちょっとトイレ行って──」
「ハッ!? だ、ダメですーーーーーっ!!」
ナジミは武光を背後から羽交い締めにした。
「うげっ!? だ、ダメってお前……」
「は……恥ずかしいです!! 絶対ダメです!!」
「そんな事言うたかて、このままやと……も、漏れてまう……」
「ハッ!? そ、そうだ……クレナちゃん、そこの紐と手拭い取って!!」
「お、お前何を……あひぃん!? 」
「ちょっ!? 変な声出さないで下さいよっ!!」
「そ、そんな事言うたかて…………ふぅんんっ!?」
ナジミ(中身は武光)は紐で後ろ手に手首を縛りあげられ、布で目隠しされてしまった。
「ふぅ……これでよしと。武光様、行っても良いですよ?」
「いやいやいや、行けるかっっっ!?」
「こうでもしないと…………はうっ!?」
今度は武光(中身はナジミ)が呻き声を上げた。
「どうしたナジミ!? 大丈夫か!? くそっ、見えへん!!」
「武光様……ど、どうしましょう!? わ、私も……その…………お手洗いに……」
ナジミ(中身は武光)はズッコケた!!
「フリードぉぉぉ……ナジミを縛れ!!」
「ええっ!? でもアニキ!?」
「俺だけこんな目に遭うとか不公平や!!」
「いや、でも……アニキ」
「隊長命令じゃーーーーー!!」
「えぇ……」
「ちょっ、待ってフリード君……あひんっ!?」
あまりの剣幕に、フリードは仕方なく武光(中身はナジミ)を後ろ手に縛りあげた。
目隠しをされ、後ろ手に縛りあげられて、内股でモゾモゾとしている隊長と副隊長を前に、四人の隊員達は思わず呟いた。
「「「「何だコレ……いや、何だコレ……!?」」」」
その後、フリードやクレナ達に付き添ってもらって何とか用を足した二人とフリード達は困惑しつつも作戦を練った……暗黒教団の聖道化師、月之前京三を倒し、武光とナジミを元に戻す為の作戦を!!
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる