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双竜塞編
斬られ役(影)、見抜かれる
しおりを挟む92-①
「ま、まさちゃぁぁぁぁぁん!! 待ってぇぇぇぇぇ!!」
「し……しつけぇぞコノヤロー!!」
こっ恥ずかしさのあまり、姫の間を飛び出した影光は、オサナに追いかけ回されていた。
「はぁ……はぁ……ま、待って……ぎゃんっ!?」
「お、おい……大丈夫か……?」
オサナが派手にすっ転んだ。転倒したオサナは廊下に突っ伏したままピクリともしない。
影光は遠くから声をかけたが……へんじがない。まるで しかばねのようだ。
「オサナ……? おい、オサナ!?」
どこか変な場所でも打ったのだろうか、心配になった影光がオサナに近付いたその時……
“ガシィッ!!”
「何ぃっ!?」
オサナが素早く体を反転させ、両脚で影光の胴体を挟みこんだ!!
「フッフッフ……かかったな愚か者め!! 飛騨の山中に籠る事十余年、編み出したるこの技名付けてカニバサミ!! もがけばもがくほど身体に食い込むわ!! どうや、動けるもんなら、動いて──」
影光はカニバサミされたまま立ち上がり、オサナをズリズリと引きずった。
「熱っつ!? ま、摩擦がっ!? こ、後頭部が……熱い熱い熱いハゲるハゲるハゲる!!」
あまりの熱さにオサナはカニバサミを解いた。床に転がって悶絶するオサナを見下ろしながら、影光が呟く。
「忘れてたぜ……子供の頃、お前が吉◯新喜劇の大ファンだったって事を……めだか師匠のギャグで来るとは小癪な真似を……」
「うぅ……酷いわまさちゃん、婚約者に……」
「だーかーらー!! 俺はお前の婚約者なんかじゃないっつってんだろうが!! 良いか、これ以上俺に……構うな、近づくな、つきまとうな!!」
「……何でそんなにウチの事を遠ざけようとするん?」
「…………」
オサナの問いかけに対し、影光は一言も発しなかった。
「…………本物のまさちゃんとちゃうから?」
「……ッ!? お前……気付いてたのか」
「……うん」
「いつからだ……」
「一目見た時から……かな。ウチも巫女として厳しい修行を積んできたから、色んなモンが見えたり聞こえたりすんねん。神様の姿とか、霊魂の声とか……あと、ウチの記憶にはほとんど残れへんけど、霊力が強すぎて、《サクシャ》とかいう『何かヤバい奴』と繋がってる事もあるらしいわ。ま……とにかく、気配が人間やなかったから……」
少しの間の後、影光は絞り出すように呟いた。
「お前の言う通り、俺は……アイツの記憶と人格をコピーされた影魔獣だ……だから、お前の好意には応えられない……すまん」
「関係……あるかーーーーーっ!!」
オサナの叫びに、影光はたじろいだ。
「う、うるせーな!! 何だよ突然!?」
「ふふ……まさちゃん覚えてる? 今の……まさちゃんに『何でアイツらにいじめられてるんや?』って聞かれて、『ウチ、ニンゲンとちゃうから……』って答えた時に、まさちゃんが言ってくれたんやで」
「……そんな事あったか?」
「あったあった!! 『オサナはええ奴や、泣かす奴は俺がゆるさん!!』って、いじめっこに喧嘩売りに行って……ボッコボコの鼻血ブーで戻って来たけど……ぶふっ」
「いや、だから思い出し笑いすんじゃねーよ!?」
「ごめんごめん。でも、本物とかニセモンとか関係あらへん、本物と同じ記憶と人格を持ってるんやったら、それはやっぱりまさちゃんやわ。身体が影魔獣でも、魂が本物と一緒やったからウチは──」
「それでも……俺はニセモノだ!!」
それを聞いたオサナは、しばらく考えた後、ポンと手を打った。
「よし!! じゃあ、こうしよう……影光っちゃんは……『2号』やねんっっっ!!」
「はぁ……2号!? 何だそりゃ!?」
「影光っちゃんはな、まさちゃんのニセモンなんかやなくて、まさちゃん2号やねん。シ◯ッカーライダーと仮◯ライダー2号は見た目が似てても全然違うやろ?」
仮◯ライダー2号のポーズをとりながら、(私、良い事言った!!)感満載のドヤ顔をしているオサナを見て、影光は思わず笑ってしまった……そう言えば子供の頃、二人でよく仮◯ライダーのビデオを見て、ラ◯ダーごっこしたっけか。
何だか上手く丸め込まれようとしている気もするが……悪い気はしない。
「ふっ、2号か……考えといてやるよ」
そう言って笑った影光に対し、オサナは影光に顔を近づけて怪訝な表情をした。
「んんーーー?」
「な、何だよ……」
「なー、その喋り方ワザとやろ? ニセモンって言われたくなくて……『アイツとは別人感』を出す為にやってるやろー」
「……うっ」
「正直言うて……全ッッッ然似合ってへんで」
「え……嘘やん」
「嘘ちゃうよ、違和感しかあらへん」
「いや、そんなん言われても……今更話し方元に戻すんも気恥ずかしいしやな……」
「じゃあ、ウチと二人だけの時は普通に話してや。何か……その喋り方はしっくりけぇへんわ、キショイ」
「おまっ!?」
「まっ、積もる話もあるし、立ち話もなんやからウチの部屋で話そ?」
「お……おう」
影光がオサナの後に付いて歩き出そうとしたその時だった。
「み、見つけたぞーーーーー!!」
ゲンヨウが物凄い勢いで走って来た。
「どうしたジイさん、そんなに血相変えて……」
「お、思い出したぞ……お主、私と共にお嬢様の御前まできてもらおうか!!」
「えっ!? ちょっ、待てってジイさん……おわーーーーー!?」
「か、影光っちゃーーーーーん!?」
オサナが止める間も無く、影光はゲンヨウに連れ去られてしまった。
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