斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
175 / 282
本拠地突入編・2

斬られ役、スキルを発動する

しおりを挟む

 175-①

「「「サンガイハオウ……見参ッッッ!!」」」

 武光達の前に降り立ったサンガイハオウは肉体の感触を確かめるように、左右の拳を交互に一度ずつ前に突き出した後、額の前で前腕を交差させ、両肘を引いて構えた。

 降り立ったサンガイハオウを前に、武光とフリードはわなわなと肩を震わせていた。

「ちょっと武光、しっかりなさい!!」
「フー君!? 大丈夫!?」

 肩の震えが収まらない二人を心配したミトとクレナは、二人に声をかけたが……

「「カッコイイ……!!」」
「……はぁ!?」
「アニキやべぇよ……めっちゃカッコイイよ……」
「おう……今のめちゃめちゃカッコ良かったよな!?」

 恍惚こうこつの表情を浮かべる武光とフリードに女子一同は唖然とした。

「あ……アホかーーーっ!?」
「あべしっ!?」
「ひでぶっ!?」

 ミトは、武光とフリードにビンタを喰らわした。

「アレは敵なのよ!?」
「だってミト……合体やぞ!! 合体!!」
「この……バカーーーっ!!」
「ぐえっ!?」

 ミトの怒りの頭突きが武光の胸板に炸裂した。

「全く……何を子供のように目を輝かせているのですか!!」
「姫様の言う通りですよ、武光様!!」
「そうだよ、フー君も!!」
「二人共、リョエン様を見ろ!!」
「そ、そうです。リョエン先生の落ち着きぶりを見習って下さい!!」

 女子一同に指を差されたリョエンは慌てて咳払いをした。い、言えない……『興奮のあまり固まってしまっていただけ』などとは断じて言えない!!

「「「さぁ、覚悟しろ!!」」」

 右の拳を振り上げて、サンガイハオウが突進してきた。武光達はサンガイハオウの突進を散って回避した。壁に炸裂したパンチが壁に大穴を開け、大広間を揺らす。

「くっ……火術、炎龍!!」

 リョエンの放った凄まじい炎の奔流がサンガイハオウを包み込むが、サンガイハオウは炎をものともせず悠然と振り返ると、背中の翼を羽ばたかせた。

「ぐはっ!?」

 巻き起こした突風は、まるでロウソクの火でも吹き消すかのように、炎龍を軽々と消し飛ばしただけでなく、リョエンをも吹き飛ばし、リョエンを背中から広間の石壁に叩きつけた。

「あれほどの巨体……懐に潜り込めば!!」

 今度はミトがサンガイハオウに向かって突進した。3mはあろうかというサンガイハオウの足下に素早く飛び込んだミトだったが、先端が槍のように鋭く尖った蛇のように長い尻尾がミトに襲いかかる。

「くっ!!」

 猛攻を捌き切れず、ミトは一旦、尻尾の間合いの外に出た。

 この国屈指の天才術士の術を軽々と打ち消し、剣の天才と謳われる救国の英雄姫を寄せ付けないサンガイハオウを見て、シルエッタが満足げに微笑む。

「フフフ……それでこそ私が技術の粋を集めて作った影魔獣です」
「くっ……ナジミは先生をてくれ、キクチナはナジミの護衛や!! 残りの皆はこのデカブツを足止めしてくれ!! 俺は……シルエッタを捕らえる!!」

 武光の指示を受けて、仲間達が一斉に動く。武光はシルエッタ目掛けて階段を駆け上がった。

「うおおおおおっ!!」

 勢いよく階段を駆け上がった武光は『神妙にお縄を頂戴しろぃ!!』と踊り場にいるシルエッタに飛びかかったが、見えない壁に弾き返されて階段を転げ落ち、勢いよく床に叩きつけられてしまった。

「無様ね……触れてはならないものに触れようとして地に落ちる……貴方のような愚者には相応しい死に方……あら?」

 シルエッタは驚いた。階段から転落した武光が……平然と立ち上がって来たのである。

「……流石に石の床はちょっと痛かったな」
「そんな……あの勢いで落下したというのに怪我一つ無いなんて」

 いつもの微笑みが消え、驚愕の表情を浮かべているシルエッタを見て、武光は悪役らしい笑みを浮かべた。

「フフン……俺は斬られ役歴が長いんや、こちとら『階段落ち』の訓練も経験も山ほど積んできとんねん!!」

 障壁に弾き飛ばされた瞬間、武光は瞬時に体を丸め、頭をしっかりとガードしながら階段を転げ落ちていたのだ。ラノベでよくある『取って付けたようなもらい物』ではない……長年の鍛錬で会得した、真の意味での《技術スキル》が発動し、武光は負傷を回避していた。

 ちなみに負傷はしなくても『階段落ち』は結構……いや、相当痛い。専門家の指導の下で充分に訓練を積んだ上でやらないと大怪我は免れないので、素人は絶対に真似してはいけない。

「さて……と、ようもやってくれたなあ?」

 武光の視線に、シルエッタは心の奥底がほんの少しだけゾクリと騒ついたのを感じた。

「今回は……ヒップアタックだけでは済まさん!! ヒップアタックと……侍パワーボムの刑じゃーーー!!」

「「「そうはさせませんよ?」」」
「うおっ!?」
「「「死んじゃえゴミ虫♪」」」

 再び階段を駆け上がろうとした武光の前に、サンガイハオウが立ち塞がった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...