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嘆きの聖女編
聖女、誕生する
しおりを挟む219-①
教会から逃げ出したシルエッタは街を飛び出し、あても無く彷徨っていた。
「ああ……私は何という事を…………ひぃっ!?」
シルエッタの目の前に殺めてしまったはずの神父が姿を現した。
「シルエッタ……何故だ……何故殺めた……お前に手を差し伸べたというのに……」
「お許しを……お許しを……お許しを!!」
シルエッタは地に伏し許しを乞うたが、前髪を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられた。眼球が飛び出さんばかりに目をカッと見開いた、血塗れの神父の顔が眼前に迫る。
「さぁ……その目に焼き付けろ……お前の愚行を……お前の罪を!!」
「あ……あああああああああっ!!」
シルエッタは絶叫と共に飛び起き、周囲を見回した。
今いるのは、街を飛び出し、彷徨い続ける中で見つけた廃屋の中だ……シルエッタは、深い深い溜め息を吐いた。
何日経ったのだろう……十日より先は覚えていない。あの日から……悪夢を見なかった日は一日たりとも無い、悪寒が止まらない……!!
シルエッタは部屋の片隅で膝を抱えて震え続けた。眠るのが怖い……眠りたくない……!!
シルエッタは襲い来る睡魔に必死に抵抗を試みたが、四日目の朝、遂に倒れてしまった。
夢の中でまた、血塗れの神父が現れた。いつものように、目をカッと見開き、ゆらゆらとシルエッタに近付いてくる。
「その目に焼き付けろ……お前の愚行を……お前の罪を──」
「お黙りなさい……」
シルエッタは神父の呪詛の言葉を遮り、言い放った。
「私に……罪など……存在しない!!」
「……お前は、許されざる罪人だ……!!」
「お黙りなさい、罪人はむしろお前の方よ……!! あの国賊を褒め称え、シャード王家を貶めた……!! 我が国の法に照らし合わせれば、お前こそ反逆罪を犯した大罪人、死んで当然!! 死んで……当然なのよ……」
「そのような法などもはや存在しない……シャード王朝は、とうの昔に滅んだのだ」
「うるさい……うるさいうるさいうるさい!! 認めない……シャード王国は滅んでなんかいない……私に罪など存在しない!!」
いつの間にか、シルエッタの右手には燭台が握られていた。
「罪人め……私の前から消え失せろ……!!」
シルエッタは神父の頭に燭台を振り下ろした。燭台が頭をカチ割る瞬間、シルエッタは自分の姿を幻視した。
「ハァ……ハァ……」
飛び起きたシルエッタは慟哭した。
「全て……全てはあの男のせいだ……大切な家族と帰るべき場所を失い……地を舐め、泥をすするような生活を強いられ……その地獄から救い出してくれた恩人をこの手にかけてしまったのも……全て!!」
泣いて、泣いて、泣いて、泣き尽くしたシルエッタの顔には微笑みが貼り付いていた。
「ふ……ふふふ……ふふふふふ……滅ぼす、いや取り戻すのよ…………この国を本来あるべき者の手に!!」
この日……暗黒教団の聖女シルエッタは誕生した。
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