斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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最後の決着編

斬られ役共、成敗する

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 266-①

「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 雄叫びを上げて突撃してくる武光達に対し、白の影魔獣は背中から数十本にも及ぶ触手を生やした。

〔気を付けろよ武光!!〕
〔ご主人様に手を出す奴は……片っ端から撫で斬りじゃーーー!! ヒャッハー!!〕
「イットー!! 魔っつん!! コイツを倒して……皆の所に帰るで!!」

〔我が相棒よ、我らの力……存分に見せつけてくれようぞ!!〕
〔…………………………………………油断するな〕
「おう!! 行くぜネキリ・ナ・デギリ!! 影醒刃シャドーセーバー……ん? 今、影醒刃喋らなかったか……?」
〔…………………………………………喋ってないよ〕
「そ、そうか…………いやいやいやいや!? お前喋れたのかよ!?」

「おい!! 来るぞ分身!!」
「お……応ッッッ!!」

 武光と影光は、超聖剣イットー・リョーダン、魔王剣ネキリ・ナ・デギリ、魔穿鉄剣、そして影醒刃シャドーセーバーの四本の剣で迫る触手を片っ端から斬り落とし、斬り払い、斬り飛ばし、斬り捨てながら進む。

「行けぇぇぇぇぇっ!!」

 攻撃の間隙かんげきって、影光は影醒刃の刀身を敵に向かって勢い良く伸ばしたが、影醒刃の切先は敵に届く前に止まってしまった。

「チッ、やっぱりか……オイ本体!! 影醒刃の切先だ、あそこに敵の謎バリアがある!!」
「任せろ分身!!」

 武光は影醒刃の切先の位置を確認すると、一瞬視線を下げた。
 距離感を瞬時に掴んで歩幅や立ち位置を調整するのは斬られ役の必須スキルである。四歩、障壁までの距離を武光はそう読んだ。
 今前に出ているのは左足……四歩目は左足が前に出てしまい、右手のイットー・リョーダンを振り下ろしにくい。武光は三歩で目標に到達出来るように歩幅を少し大きくした。

 ……一歩目!! イットー・リョーダンを背負うように構え──

 ……二歩目!! 左手を前に突き出しながら、弓を引き絞るように上体を反らし──

 ……三歩目!! 足の踏み込み、左手を引く反動、腰の捻り、肩の力、肘のしなり、そして手首のスナップ!! それら全てを動員してイットー・リョーダンを袈裟懸けに振り下ろす!!

 繰り出された一撃は、フリード達が渾身の力でようやく破った鉄壁の障壁を “すん!!” と容易く斬り裂いた。

 敵は驚愕し、戸惑っている。敵には目も鼻も口も無いが、武光と影光はそれを感じ取った。

「へっ……何をビビっとんねん。帰りを待ってる仲間がおるんや、お前みたいなカスに……構ってられるかアホンダラーーーーー!!」
「覚悟しやがれ!! テメェの出番はもう……終わりだあああああっ!!」

「「うおおおおおおおおおっ!!」」

 障壁を突破して来た武光達を貫くべく、白の影魔獣は先端を鋭い突撃槍ランス状に変化させた左右の副腕を伸ばしたが、武光達はイットー・リョーダンとネキリ・ナ・デギリでそれらを斬り飛ばし、ついに敵の懐に飛び込んだ。

 白の影魔獣は咄嗟に、頭部を巨大な剣に変化させると、地面に叩きつけるように振り下ろした。


 ……その一撃は、武光達を脳天から真っ二つに引き裂いた。


 白の影魔獣はそう思った……だがそれは錯覚だった。


 攻撃が当たる寸前、武光は左前方、そして戦いながら四肢の回復をはかっていた影光は、黒影刃覇織の状態から元の姿に戻りつつ右前方に跳んで攻撃を回避したのだ。そして……

「うおおおおおおおおおつ!!」

 “すん!!”

「でやああああああああっ!!」

 “ザンッッッ!!”

 イットー・リョーダンの一閃が白の影魔獣を腰から上下に分かち、ネキリ・ナ・デギリの追い討ちの一撃が上下に分かれた肉体を更に左右に断ち割った。

「「……成敗ッッッ!!」」

 武光と影光が血振りをして納刀すると同時に、断末魔の悲鳴のような甲高い音を上げて、四つに分かれた白の影魔獣は、粉々に砕け散った。

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