博士の愛しき発明品たち!

夏夜やもり

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3 博士はネコ耳天使に興味があります(製作的な意味で)

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『つまりさ、あそこの二択で最適解は見つからないのさ!』
「あの理不尽りふじん、ホント、酷いと思う!」

 ゲームの話は続いている。

『それに、あのトラップの数々、覚えているかい?』
「もう! 何度やり直したかわかんないわよ!」

 私と博士は知らない、ゲームの話をしているのだ。

「ふむ……? なにやら大変そうじゃの?」

 うん、でも、ちょっとわかってきた。
 いくらか聞き込んで話をまとめると、妹とご友人がやっているゲームは理不尽要素がものすごいらしい。

「まるで人生みたい!」
『はは、悪夢付きのね!』
「ふむ……」

 いろいろと思う所はあるが、その理不尽とやらを、私が理解できた範囲で挙げていこうと思う。もしかしたら、私の偏見へんけんも入っているかもしれない。


**―――――
 ・ゲームの目的は魔王とかいう一番悪い人をやっつけることらしい。しかし、その目的を知るまでにいーっぱい障害がある。
 ・妹とご友人が言うには、魔王さんはめっちゃ強くて、ありえない感じにありえないらしい。

「ありえないってどれくらい?」
「そりゃありえないんだもん、本当、ひどい事になるの!」
「いや、その言い方じゃよくわかんないよ?」
『それがね、麗しの妹ちゃんの表現こそが適切なんだよ……。もうあれは、ありえないねぇ、うん』
「ふむ、面白そうじゃな? そういうコンセプトでなにか作るのも……」

 それは博士の発明が増える感じだった。

「やめてください! 博士は聞かない方が良い!?」
「そうよ! これはゲームなの! 現実じゃないから、ありえない感じよ!? 博士が手を出したら、やばいんだからね!!」
『んー? 夢の実現こそが……』
「ご友人、それ以上言ったら自爆してもらいますよ! カラスさんに頼んで!!」

 白カラスさんがびくっとしている。

『おおうわかった、これ以上は黙るよ』
「むぅ……」

 私たちに否定され、博士は少し引き気味にうなった。


**―――――
 ・強くなるためにはレベル? ステータス? まあ数字をいっぱいにする必要がある。

   ↓

 ・そのレベルを上げるためには、モンスター? なんか、けだものとか言ってたけど? まあその相手さんをものすごいいっぱいやっつける必要がある。

   ↓

 ・そして、けだものさんをやっつけるためには、政府へ駆除くじょの許可申請を出さなければならない。(出さずにけだものさんをやっつけると変な組織に追われ……まあ、たぶんゲームオーバー? ああ、ゲームが終わっちゃうみたいです)

「あの、なんで許可とかいるんですか?」
「さあ? 理不尽要素だから? なんか設定で、許可とらないと危ないとかだったわよ?」
『麗しの君、武器の使用は届けを出しとかないと駄目なんだぜ』
「ふむ? 猟銃免許的りょうじゅうめんきょなもんか?」
「あー、えと、それに近い、のかな?」
「えっとさ、ゲームの話でしょ?」
『ああ、ただし、政府が市民を徹底的に管理する、世界だからね!』

 あの、ゲームだよね? ご友人はフォーカスがどうとかいってなかった?

「許可や資格……のう?」
「……世界的にねー」
「ふむ、現実に近くしとるんか?」
『いや、もっと厳しい世界さ!』
「そそ! かなり、ヤバイわね!!」
「……てか、それでやめちゃう人、いるんじゃないですか?」
『そこで離れたユーザーは、実は幸せなんだぜ?』
「???」

 ゲームやめるのが幸せ? 意味が良く解んない。


**―――――
 ・駆除申請が通るまでに生活態度を色々頑張る必要がある。(ゲームが変わるとか言ってた。審査官しんさかんの好感度を上げるってなんなの!?)

   ↓

 ・その過程で選挙に出馬することもできる!?

 え? 目的変わってない!?
 そんで、選挙戦を楽しめて、勝ってしまうとゲームオーバーって、どういうこと!?
 なんか、負けても選挙資金が全部借金になちゃってゲームオーバーぽいし!

 あと不正が出来るらしいけど、根回しができなかったり、スケープゴートを作ったりをしておかないと選挙おわってから逮捕されてゲームオーバーらしい。てか、参謀が進めてくるの!?
 それって罠じゃないの!? もしかして、それしなきゃ勝てないのかな!? 

   ↓

 ・選挙の誘惑ゆうわくに乗らず、駆除申請が通ってしまうと細々こまごまとしたお金を徴収される。お金を用意できないと当然ゲームオーバー。
 お金をかせぐ方法は、転売的な仕事と、サギ的な仕事しかないらしい……どうも精神衛生上よろしくない感じである。

 えっと、私は妹がそのゲームプレイするの、止めたほうがよくないかな!? 

「あのさぁ、そのゲーム、やめたほうがよくない?」

 私の問いかけに、妹も少しトーンが落ちる。

「えと、その、ね? あたしは大丈夫よ!? 作った人が頭おかしいってわかっててプレイする感じだから! 混同しないから! ね!」
『ま、まあ、あいつは、その、あれだからな! うん! あれだから!!』
「なんじゃ、知り合いが作っとるんか?」
『ちちちち、違うよ! ヤツは僕にアドバイス求めに来ただけさ! それに、あいつは僕の友達ではないよ!』

 これってご友人は製作者さんと知り合いっぽい?
 てか、アドバイスってかなり意見出してませんかね? ちょびっと警戒しつつ、私は別の角度から聞いてみる。

「それって海外のゲーム?」
「違うよ? でも、舞台はファンタジーなの!」
「えっと、申請がめんどくて選挙に出れるファンタジー!?」
『そ、その、特殊な土地なんだよ! 麗しの君!!』
「意味が解んない……」
「まあ、プレイヤー全員がそう思ったわ」
『確かに……』

 なんで意味わかんないって思いながらプレイしてるのかな? 私は思わず突っ込んだ。

「お二人ともさ、楽しいの?」
「…………」
『…………』

 何で黙るんだろう?

「なんでプレイしてるの?」
「ゲーマーのサガってやつ?」
『僕は、魂的な引き寄せがあったのさ!』

 なんだろう? 深く突っ込まない方が良いのだろうか?


**―――――
 ・晴れて許可が降り、けだものを倒しに行く最初の時点で、動くか動かないかの二択トラップがあって、答えは毎回変わる。

 間違えるとゲームオーバーでデータが消える。

「最悪じゃないですか!」
『そうだよ、30分が泡と消えるんだから、やってらんないんだぜ!』
「ほんと、3回連続でハズレ引いた時、机とかぶん殴っちゃったよ、あたし」

 ああ、ちょっとまえ大声だしてたの、それかぁ……。
 でもさ、妹さん? さすがに『のまぁああああ!!』ってのは、つつしんだ方が良いかなっておもうよ?

 というか私さ、ご近所さんにあやまりにいったんだよ!?
 朝になってからね! 妹もさ……私ばっかり責めないでほしいものだ。
 そういった葛藤かっとうを押し込めて、重要な事を聞いてみる。

「えと……たのしいんですか?」
「これはね、やってみないと本当、解んないの!」
『解析したけど、あの二択の乱数がブラックボックス化してるの、シュールな笑いだったぜ!』
「お主たちがのめり込む理由が、儂には良く解らんぞ?」

 なんというか、博士が困惑しているのは珍しいと思う。しかし、この二人が、なぜこれだけの熱量で語るのかもよく解んない。

「でね! あまりにもけだものをやっつけてると、ひとの目が変わるの! あたし怖かった!」
『そうだね! ヒロインちゃんのさげむような瞳、ぞくぞくきたぜ!』
「うわぁ……」
『極めつけのセリフ「変わっちゃったね……」は、僕の中ではどストライクだったぜ!』
「ねー! あれは、いいセリフよ!!」

 いや、いいセリフじゃないと思う。

「ふむぅ……愛人からそういわれるんは、儂、嫌じゃな」

 いやいや博士、そこは恋人で良いじゃん……。なんで愛人呼びにこだわるんです?

「でも、あそこで下手打つとルート変更からのゲームオーバーになっちゃうからね! 悩ましいわ」
『あれは、製作者の悪意を感じたぜ!』

 二人して、首をひねる。ああ、ご友人は白カラスさんですけどね。その姿を見て、私は疑問を言葉にした。

「あの……本当、真面目に聞きますが、おもしろいんですか!?」

 しかし、妹は少し首を傾げて答える。

「意見が分かれるのよねー」
『まあ、僕も多くのゲームはやっているが、あんなのは珍しいね』
「……」

 本当、なんでプレイしてるんだろ?

「で、魔法を覚えなきゃってなるんだけどさ……」
『仲間を入れるか、自分を入れるかで展開が変わるのさ!』

 んー? どういうことだろう?
 仲間が覚えるか、自分が覚えるかってことでしょ?
 変な言い方をするなぁ?
 なんぁ質問待ちっぽい雰囲気の妹たちに、私は率直に聞いてみた。

「展開変わるの?」
「ぜんっぜん! 変わるのよ! 仲間か自分かで、犠牲が!!」

 何だろう?
 これ、突っ込んだらやばい!?
 いや、フィクションでも厄介な方向に足踏み入れてない!?

『僕は仲間派だね! 主人公は自分の分身だろ?』
「えー、でもでも、自分で魔法使いたくない?」
『リスクが大きすぎるぜ?』
「まあ、一定確率で、ねえ……」

 ……ここは突っ込んで聞いておくべきかな?
 もし変な答えが返ってきたら怖いが、まあ聞かないともやもやするしなぁ。

「あの、さ……何が起きるの?」
「またゲームが終るんか?」
「いやぁ、ここは……そうじゃないんだけどねー」
『キャラがね、本当に変わっちゃうのさ!』
「えと、えっと?」
「あ、そこは、プレイしてからのお楽しみよ!!」
『そうだね、ひみつだよ!』
「そそ、ひみつー!」
「あー!?」

 それ気になっちゃうじゃん!
 てか、妹、私のくせを盗んだでしょ!?
 ってことはこれ、答え聞いても返ってこないじゃん!!
 私が頭を抱えていると、博士も首をひねった。


**―――――
 さらにいくつかの話を聞いて、私たちは結局首をひねるだけとなった。

「ふむ……しかし、聞けば聞くほどわけがわからんのぉ?」
「まあ、映画見てないひとが見てる人の話聞いてる感じでしたね」
「そう? ゲーム自体はオーソドックスなのよ?」

 オーソドックスなゲームってのが私解んないんだって!
 ふつうのゲームってデータとか消えるんだろうか?
 選挙があるんだろうか?
 何か取り返しのつかなそうなイベントが満載まんさいなのだろうか!?

『そうだね! あとはコスチュームチェンジで、世界が変わるぜ!』
「そそ! 見た目がね! すっごい変わるの!」
『ああ! ネコ耳から始まるアニマルイヤーに天使と悪魔の翼、それからツノ、シッポに、天使の輪とかがつけれるのさ! あれはぐっとくる!』
「え?」
「そそ! あれ種類選べるから悩んじゃうのよねー!」

 なんだろう、私それ、ちょびーっと聞き覚えがあるんですけど?

「ね! あれ、いみわかんな……」

 話の途中で、博士が言った。

「のう? それって今、儂らが作ってる奴じゃないんか?」

 それを受けて、ご友人もさらっと返す。

『そうさ! 僕は博士の問い合わせをトリガーに、こいつらを再現したくなったのさ!』
「おや、そうだったんか?」

 んー……?
 おっやー?
 これは、どういうことだろう?

「あの、博士……ご友人……」
『話を持ち掛けたのは博士のほうだけどね!』
「まあ、仕事に遊び心を加えるのは、悪いことじゃないからの!」

 そこで、妹も気が付く。

「えっと……あの、壊したよね? どういうこと?」

 急激きゅうげきに、話が現実へ戻されていく。

「残っとるのは、ツノとシッポと天使の輪か?」

 ……おやー?

『そうだぜ! ネコ耳と翼はだめだったからね! こっちは問題ないだろう?』
「……うぇ」
「うわぁ……」

 ……どうやら、ゲームの世界も世知辛いようだが、現実のほうはもっと苦くてえぐいってことらしい。
 私たちには、いまだ、人体改造の脅威きょういが残っていたことを、理解した。
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