[完結]婚約破棄されたけど有名人になれました!

気奇一星

文字の大きさ
4 / 4

4

しおりを挟む
 心臓がドクドク脈打っている。

 ついに、お客さんの前に立って、歌を披露する日が、来てしまった。

 今、私は、以前の、貴族の彼と婚約していた時に着ていたような、きらびやかなドレスを纏い、バッチリ化粧をしている。

 「きっと、大丈夫だよ。成功するさ。」ジョニーか、私を励ましてくれている。

 緊張が顔に出ているようだ。

 「・・・・・・はい。」

 ああ、歌詞を間違えたらどうしよう? 緊張しすぎて声がでなかったらどうしよう?

 不安なことばかり考えてしまう。

 ダメ、ダメ。そんなことばかり考えてちゃいけない! いっぱい練習してきたんだし。

 私は、息を大きく吸い、ゆっくりと息を吐いた。

 すると、マスターが、私たちに、声をかけてくれた。

 「さぁ、そろそろ時間だよ。頑張っておいで。」と、言い、優しい笑顔を見せてくれた。

 「はい!」

 私は、覚悟を決めて、バーの舞台に上がった。

 しかし、お客さんは、誰も私達の方を見ずに、お酒を飲んだり、仲間と話したりしている。

 どうしよう? 大丈夫かな?

 不安がぶり返してきた。

 そんな私をよそに、ジョニーは、早速、ギターを弾き始めた。

 すると、どうだろう。お客さん達が、ぞろぞろと、舞台の方に目を向けるようになってきた。

 ジョニーは今、歌の前奏ぜんそうを弾いている。

 これが、終われば、私は声を出して、歌わなければならない。

 ──そして前奏は終わった。

 私は、練習した通りに歌ったし、振付ふりつけで、歌も表現した──緊張し過ぎていて、自分で、ちゃんとできていたかが分からなかった。

 私は、その大きな音を聞いたことで、緊張から解き放たれた。

 それは、お客さんの、割れるような拍手だった。席から立ち上がり、拍手をくれている人もいた。

 「ありがとうございます!」

 その後、他に練習していた数曲も披露した。

 この日を境に、私の人生は、大きく変化した。

 次の日になると、どこから噂を伝え聞いたか、昨日よりも、倍以上のお客さんが、バーに集まった。

 少なからず、女性客もいたが、ほとんどが男性客だった。

 その男性客達が口を揃えて言うのが、「エロい」だった。

 何か複雑な気分。歌が上手いとか、かわいい・・・・・・は、ないか。三十四歳だし。それでも、他に何かなかったのだろうか。

 日を増す毎にお客さんは、増えていき、ついには、バーに入らなくなったので、近くの広場で、歌うことになった私たち。

 この頃になると、緊張などしなくなっていた。

 慣れとは、おそろしいものだ。

 「今日も、ローラの歌をみんなに、きかせてやろう。」と、ジョニーが言った。

 「はい!」

 私たちは、広場に設置された壇上に上がった。

 そして、私は歌声を響かせ、ジョニーは、ギターを奏でた。

 すると、そこに、白い馬に引かれた一台の馬車が、乗り付けた。

 「・・・!」

 その馬車を降りてきた人が、なんと言ったのかは、観客の歓声で、聞き取れなかった。でも、その人は、よく知っている人物だった。

 私は、声が出なくなるのではないかと思うぐらいの、息苦しさを感じた。

 その人とは、私に、婚約破棄を叩きつけた貴族の彼だ。

 歌っている途中だったので、そんな彼を視界に入れずに、何とか、その歌を歌い終えることにした。

 そうすると、舞台から降りて、彼の元に近づいた。

 観客たちの視線が、こちらに集中しているのがわかる。

 「おお、やはり、ローラだったか! 美しい! 私は、お前を探していたんだ。あの婚約破棄は無かったことにしてくれ。お前の後に婚約した女が、それはそれはとんでもない女だったのだ。だから、うちに帰ってきてくれ。」

 「それはできない。」

 「なぜだ? 私と一緒に来たら、今よりもっと美しくなれるし、食事も豪華になる。欲しいものなら、なんだって手に入れられる程の富がある。なのにどうして?」

 「じゃあ、もし、あなたと一緒になったら、夢を手に入れることはできる?」

 「夢・・・・・・だと?」

 「そう。夢よ。私は、今は、歌手をやっているけど、本当にやりたいこと、つまり夢は、歌手を続けることじゃないのかもしれない。それは、誰にも分からないこと。でも、歌手をやって、こんなにみんなに応援されて、三十四歳になった私でも、挑戦すれば、なんでもできるってわかったの。だから、私は、夢を見つけたい。」

 「何をふざけたことを言っているんだ! いくぞ!」

 彼が、私の手を強引に掴んできた。

 ムカついた私は、彼の手を振り払ってやった。

 「私は、あなたとは一緒にならない。帰るなら一人で帰って!」

 「君は間違──。」

 本当に、反吐が出る。

 パシンっと、私は、彼に、平手打ちを一発お見舞いしてやった。

 「ウォーーー!」観客たちのボルテージが上がっているのがわかる。

 「女の分際で、私をぶったな。」

 「あら、何かいけないことをしたかしら?」と、私は彼を煽った。

 すると、彼は悔しそうな顔をした。

 「後悔しても知らないからな!」彼はそれだけ言って、来た時と同じ馬車で去っていった。

 「ローラ! ローラ! ローラ!」観客が声援を送ってくれている。

 私。ローラは、夢を見つけるために、人生という、長い旅にでます!

 「それじゃあ、二曲目いきますよ! 『私の旅はどこまでもつづくよ。』。」


        完 

 

 

 
 



 

 

 

 

 
 

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました

九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」 悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。 公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。 「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」 ――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

酔って婚約破棄されましたが本望です!

神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」 偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか! それなら婚約破棄してやりますよ!!

処理中です...