[完結]婚約破棄されたけど有名人になれました!

気奇一星

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 「違う! ここはもっと、感情を込めて歌うんだ!」

 次の日、私たちは、歌の練習をすることになった。

 「感情を込めるって、涙を流せばいいんですか?」

 「それが出来れば一番だけど、何回も同じ歌を歌っていると、毎回、涙を流せなくなるだろう。それに、離れて見ている人には、涙を流しているかなんて、遠すぎてわからないだろうしね。」

 確かに。一回歌って終わりじゃないんだ。これで、お金を稼ぐとなると、何十回、何百回と歌うことになる。

 「じゃあ、どうすればいいんですか?」

 「ローラは、歌手を見たことがある?」

 私たちの住んでいる国では、歌を歌うことを生業なりわいにしている人もいる。

 「ええ。・・・数える程ですけど。」

 「じゃあ、思い出して欲しいんだけど、その人達は、どんな風に歌っていた?」

 私は、記憶を辿っていく。

 「みんなの前に立って歌っていて、キレイな衣装を着ていて、歌も上手くて・・・。」

 「他に、何か印象に残っていることはないかい?」

 もっと、もっと、記憶を辿っていく。

 「そう・・・みんな手を動かしたり、体を動かしたりして歌っていた!」

 「正解。それこそが、感情を込めて歌うってことなんだ!」

 まだ、よく意味がわからない。

 だから、私は首を傾げて見せた。

 「感情を込めると言ったって、泣きながら歌ったり、怒りながら歌うんじゃない。要するに、それらを動きで表現するんだ。」

 そう言われて、やっと、何となくわかったような気がする。

 「じゃあ、それを意識して、もう一回歌ってみて。」

 私が歌う歌の内容は、簡単に説明すると、出会った男、全員を魅了するぐらいセクシーで美しい女が、次々によってくる男を、手玉に取りもてあそぶが、本当に好きになり、心から愛した男には、愛して貰うことができないという、失恋をテーマにした歌だ。

 私は、歌のさわり──サビ──のところである、失恋するシーンを、手や体を動かして、表現することにした。

 失恋とは、やっぱり悲しいものだから、胸が苦しくなってしまう。だから私は、体を丸め、胸をギュッと押さえた。さらに、去っていく彼の背中を「待って!」と、捕まえるように、目いっぱい手を伸す動作をした。

 「うん。良くなった! でも、まだ足りない。最初の、男たちを魅了する女も表現して欲しい。」

 「・・・分かりました。」

 正直、恥ずかしかったが、ここまできたのだから、やるしかない。

 私は、ウインク飛ばしたり、投げキッスをしたり、服から肩を見せたりと、セクシーな女を表現した。

 「すごく、すごく、いいよ! でも、後もう一息欲しい!」

 こんなに褒められたので、この時には、恥ずかしさなど微塵みじんもなくなっていた。だから、私は、今思いついたことを、ジョニーに見せた。

 それは、ただ、投げキッスするのではなく、手で銃の形を作り、人差し指を唇に当て、男たちを撃っていくというもの。

 「最高だ! なんて、素敵なんだ。」ジョニーは、拍手をして、とても喜んでくれた。「じゃあ明日、このバーで披露しよう。」

 「はい!」

 明日が楽しみになってきた!

 

 

 
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