“強くてかわいい”キャバ嬢・美羽のプロレス一直線!

ちひろ

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めざすは生活苦からの脱出劇

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 中学生の頃、テレビで女子プロレスの試合に釘づけになっていたことはあるが、美羽自身、プロレスラーになろうと思ったのは、もちろん初めてのことである。美羽は二十四歳。十七歳で結婚し、翌年に長女の弥生が生まれ、一歳の誕生日を迎えたその日に、元・旦那が新しい女をつくって家を出て行った。
 十七歳というと、一般的にはJK(女子高生)として青春を謳歌している年齢であった。そんな花の十代に離婚だなんて、「悲しい」とか「苦しい」とか、そんな甘っちょろい感情が浮かんでいる場合ではなかった。とにもかくにも今すぐ秒殺してやりたい――という想いだけが、自分の全身を支配した。そのときはプロレスラーというよりも、スナイパーにでもなって、眉ひとつ動かすことなく銃を放ち、元・旦那の脳天をぶち抜いてやりたかったのだ。
 が、そんなことを考えている暇(いとま)もないくらい、すぐさま生活は困窮していった。引っ越し代の「ひ」の字すら捻出できずに困りあぐねていた美羽にできること、それは夜の街で働くことだった。とりあえず娘は、無理やり託児所に預け、昼間はクリーニング屋や弁当屋で働き、夜は水商売へ。即行動が美羽の信条でもある通り、「これはやばい」と思ったその日のうちに、履歴書を書きなぐって、夜の街へと駆け出していったのである。涙が止まらないとか、誰かに相談しようとか、そんな気持ちは一切なし。乾ききった感情の中、もうどうでもいいという想いだけが渦巻いていた。こうなったら地獄の一丁目一番地まで堕ちてやるという情念が暴発しかけたこともあったが、最愛の娘を巻き添えにするわけにはいかなかった。こうなったら娘のためだけに生きるしかないと美羽は心に誓った。歓楽街はどこも人手が足りないらしく、一発の面接ですぐさま採用が決まったのだけは不幸中の幸いであった。
 キャバクラという夜の盛り場では、もちろん“超”の字がつくほどのド素人。元・旦那との一件があってからは、いつの間にか男性のことを敵視するようになり、とにかく男という男どもからお金をふんだくってやろうと思っていた。美羽の中で増幅を続ける復讐心。つねに色っぽい動きを計算しながら、男どもを酔わせ、お金を使わせて、自分の懐を潤わせようという魂胆であった。こうなったら、おてんば市ナンバーワンのキャバ嬢になり、男どもからふんだくったマネーで郊外に一軒家を建て、娘の弥生とふたりで幸せに暮らすんだ。そんな想いが、美羽の頭の中でとぐろを巻いていたのである。
 が、しかし――。しかししかし。
 新たなスタートを切った初日から、いきなりドスケベなお客さんにあたり、疎(うと)ましい夜の街の洗礼を受けることになった。おさわりはご法度だといっているのに、やたらボディータッチを求めてくる中高年野郎。「減るもんでねえし、ちょっとぐらいいいべ」なんて迫ってくるが、ざけんじゃねーよ。このじじい。
 美羽自身、おてんば市で生まれ、おてんば市で育ったくちではあるが、「ちょっといいべ」とか「えっちすっぺ」とか、のほほんとしたいい方(方言)で迫ってくる男どものいい草には、大きな罠がひそんでいるのを警戒せずにはいられなかった。のんびりと草をはむような雰囲気で、じつはガツガツと女の体にかじりついてくるのだ。まったく、どいつもこいつもという感じ。
 定時のあとはアフターに誘われることも多く、体だけでなく、心までが悲鳴をあげていた。とにかく男どもの下心には、げんなりさせられてしまうことが多いのだ。「あ、いい感じのおじさんだな」と思えても、結局は女とやることしか考えていない。お酒がすすむにつれて、卑猥な言葉を連発し、ラブホテルに行こうとかなんとか、やたら甘い罠を仕かけてくる。自分の体は、あんたらの性欲処理マシンじゃないんだからさ。くそくそくそ。
 いくら生活のためとはいえ、こんな毎日が続いたのでは、たまったもんじゃない。多少は覚悟をしていたつもりだが、セクハラもセクハラ。どう考えても犯罪だろ。一時は本気で病んでしまい、今の自分にとって一番ふさわしい場所はどこだろうと自問自答しながら、市内の心療内科へ足を運んだこともあったっけ。
 つくづく女は損な生きものだと思う。アフターを終えてから、そのままホテルへ誘われたことは数知れずだが、お店のママさんから伝授されていた嘘-娘が高熱を出して大変―を貫きながら、どうにかかわし続けた。高熱が通じそうもないときは、「実家の父親が倒れた」とかなんとかいいながら、その場から逃げまくりの日々を送っていたのである。
 考えてみると、まだ携帯電話がなかった頃の女の人たちって、一体どんな風にしながら男どもの誘いを断っていたんだろう。もちろんインターネットもない時代。「たった今、電報が届いたの」とか「伝書鳩がやってきて」とか。うん、まさかね。ほんとうであれば、好きでもない男たちの誘いなんて、「えいや~っ」という想いで蹴散らしてしまえばいいんだろうけど、そこは雇われの身。商売がからんでくると、そうもいかないのは辛いところであった。
 あ、なんか、いきなり泥っとした話ばかりでごめんなさい。少なくともこの小説をお読みの皆さんは、スカッとさわやかな気持ちの持ち主であると信じています(著書談)。
 それにしても――娘の弥生は託児所に預ける以外になかったが、自分の時給から託児所の料金を引き算すると、一時間あたりの稼ぎが三百円にも満たないことを知ったときは、さすがに愕然としてしまった。実質的な稼ぎが三百円以下だなんて、一体いつの時代の話なの? ゼロがひとつ足りないでしょ。
 せめて実家が近ければ、いざというときに助けてもらえるんだけどなぁ。美羽自身、そんな想いに駆られることもしばしばであったが、美羽の実家はおてんば市から六十キロ近く離れたところにある人口九千人の小さな町。そこでは両親と弟がひっそりと暮らしていたが、彼らの素朴な笑顔を思い出すにつけ、たとえどんな状況になろうとも、決して弱音だけは吐くまいと自分にいい聞かせるのであった。
 もうすぐ弥生も小学生。甘やかしをするつもりはないが、高校やら大学やら、将来への道筋だけはつけてあげたかった。そのために必要なもの、それはもちろんお金だ。お金お金お金お金。そう呪文のように唱える美羽だが、昔から体力にだけは自信があったので、一時クリーニング屋と弁当屋とコンビニとそば屋と水商売という五つの仕事をかけ持ちしたこともあったほど。
 が、さすがに無理があったらしく、自ずと睡眠不足が慢性化し、いつぞやはそば屋の店先気を失うかのように眠りに落ちたことがあった。「おい、大丈夫か」という店長の声までが、夢の中でのできごととしか思えなかった。ほんとうに大丈夫なのかという問いかけに対し、いや、大丈夫なわけがない――と夢の中の自分が答えたことだけは、うっすらと覚えている。
 自分の心が闇の中に葬られ、最後の砦でもある自分の体がむしばまれようとしている今、美羽に残っているのは「こんちくしょー」という呪いのような気持ちの抜け殻だけであった。こうなったらユーチューバーにでもなって、一攫千金を狙ってやると思ってはみても、それこそ遠い夢物語でしかない。インターネットでライブ中継か何かをやると、すぐさま投げ銭で儲かるという話を聞いたこともあるが、一体全体何をどのようにすればいいのやら、皆目見当がつかなかった。すべては夢。ゆめゆめ。
 いっそのこと仲町商店街(おてんば市のメインストリートである)あたりで、大道芸でもやるか。うさん臭さに包まれた女占い師というのも悪くないかな。あはは。
 何か別な仕事で高収入のきっかけをつくらなければと思っていた美羽の脳裏をよぎったのが、何を隠そう、プロレスであった。
 きっかけは、じつに単純だった。キャバクラの常連さんから誘われて、おてんばプロレスの興行へと足を運んだのだが、これがまたすごいのだ。本気というか、みんながみんな体を張っていて、観客らにアピールしているその姿が光り輝いて見えたのである。「えっ、女子もプロレスをやれるんだ」という新鮮な驚き。闘う乙女たちのまっすぐな姿勢に、全身がしびれたということ、それが美羽の人生のターニングポイントへとつながっていったのである。
 おてんばプロレスが素人の団体で、チャリティー目的の活動であることは、もちろん百も承知だ。事実、おてんばプロレスは地元の女子大学の女子プロレスごっこ団体(非公認サークル)が始まりで、その後、おてんば企画という編集プロダクションが慈善事業として受け継いだ経緯がある。あくまでも地域の活性化を見据えた社会貢献活動の一環でしかないのであった。おてんばプロレスのレスラーになったからといって、給料がもらえるわけではないのだ。
 しかしながら、おてんばプロレスの現エースであるジャッキー美央さんとか、タイのバンコク駐在所にいる男の娘レスラーのジュリーさんとか、その人気ぶりからグッズの収入がすごいと聞いている。強さ、美貌、カリスマ性。加えて運もあるのかなぁ、きっと。サイン入りポスターやクリアファイル、DVD(動画)など、ありとあらゆるアイテムが売れているというのだ。たしかジュリーさんは、その小悪魔的な美貌(ほんとうは男子なのに)を活かし、写真集も出していたような――。
 まぁ、彼女らの働いているのが編集プロダクションなので、比較的安く印刷できるのかもしれないが、できることなら自分もプロレスというツールを活かして、現状を突破していきたいというのが美羽の偽らざる想いであった。目標は美央さんやジュリーさん。彼女らにない一面として、キャバ嬢レスラーというのは、けっこう稀有(けう)だと思うし、プロレスラー・ロッキー美羽に会うため、夜のお店にきてくれる可能性だってあるのだ。狙うは人生の相乗効果。馬車馬のように働くのではなく、自分の個性を前面に、より付加価値の高い収入をめざしてみせる。
 ていうか、やるしかないのよね、こうなった以上。雑草魂の女一匹プロレスラーとして、絶対に元・旦那のことを見返してみせる。このこのこの、くそったれめが。
 旦那って何だ。下から読んでも「だんなってなんだ」なんて、親父ギャグをいっている場合じゃないわよね。人生のオーナーは、あくまでも自分。人生のチャンスは、自分の力でつかみとるしかない。
一 匹狼の美羽の想いに応えるべく、おてんばプロレスの女ボス・日奈子から内定の連絡が入ったのは、おてんば市の街路樹が輝きを帯び始める五月初めのことだった。もちろん練習生からのスタートにはなるが、美羽にとっては自分の人生を変える絶好のチャンス到来であった。必ずやローカルプロレスの星になってみせるという想いで、ローカルプロレスラーの卵としての道を歩み始めたのである。よーし。めざすは、おてんばプロレスの超新星。リングの上で輝きまくり、みんなの推しになってみせる。
 入団決定の翌日。腕立て伏せやら腹筋やらヒンズースクワットやら、おてんばプロレスオリジナルのジャージ姿で、汗まみれになりながら必死の想いでトレーニングを続ける美羽がそこにはいた。日中はクリーニング屋や弁当屋で働き、夜はキャバ嬢のお仕事もしているので、わずかなすき間時間を使っての自主トレであった。体力の消耗はしんどいというのがホンネであったが、おてんばプロレスのレスラーとして羽ばたくチャンスを得た美羽にとしては、その汗の一滴一滴が将来の生活費につながっていくんだと自分にいい聞かせていた。
 ところが――。人生とはそう甘いものではないらしく、おてんばプロレスのメンバーに加わって一週間後、美羽が夜のお仕事を終えてママチャリで帰ろうとしているときに、酔っ払いのスクーターに激突されるというハプニングに見舞われた。相手は三十代で農家のせがれ。おてんば駅の周辺で飲んでいたらしく、事故ったときは完全にアルコールまみれだった。損害保険のおかげで金銭的には救われたが、美羽自身、全治二週間のケガを負ったのは手痛かった。左膝からの出血と右肩の打撲。左手首にも痛みが走った。
 オーマイガッ。まいったとしかいいようがなかった。「さぁ、すべてはこれからというときにケガかよ」と美羽は思ったが、いくらなんでも包帯姿で接客業につくことはできないだろう。キャバクラはもちろん、クリーニング屋もお弁当屋もすべてお休み。一時的に無収入状態に陥ったのは、痛恨のきわみであった。
 とはいえ、美羽にしてみれば生活を止めること自体、人生の終焉を意味することでもあったので、さんざん悩んだあげく、おてんばプロレスを主催している日奈子社長の会社-編集プロダクションのおてんば企画である-に泣きつき、編集ものの校正という在宅の仕事をまわしてもらうことになった。
 美羽にとって、もちろん校正は生まれて初めての体験。ていうか、デスクワークにつくこと自体、初心者マーク付きだったのである。ボールペンを握るなんて、赤と黒というインクの色の違いこそあれ、離婚届に無理やり署名をさせられたとき以来だわ。
 おてんば企画の自社媒体である「おてんばだより」をはじめ、自治体の広報誌や学校案内パンフレットetc。校正なんて「こうせい(こうしろ)」というルールがあるのかよ。なーんて。思わずそう叫びたくなるほど、校正業務の内容は入り組んでいた。
 が、ひとり娘である弥生との生活を止めるわけにはいかない。ついうっかりというのも重なり、先月分の水光熱費は未払いのままだし、住民税も払わなくちゃ。あっ、そういえば掃除機の調子も悪い。そろそろ限界だろうから、最悪買い替えるしかないわ。来月は友人の結婚式にも呼ばれているけど、あいにく着ていく服がない。おさがりでいいから、誰か安く譲って――などと考えていたら、美羽の頭の中でチャリンチャリンという悪夢のような精算の音が鳴り出した。
 弥生の「ママ、無理しないでね」という言葉に見送られながら、美羽は付け焼刃の校正ウーマンとして、編集ものの中に居並ぶ活字と格闘を続けるのであった。ひと口に校正といっても、正しい日本語の表現やら漢字の表記やら、いろいろなことが求められ、これがまたお手あげであった。国語辞典を開いたのなんて人生何度目だろう? 「日本語って簡単じゃないのね~‥‥」と頭を抱える美羽。誤字や脱字を見逃すわけにいかないというプレッシャーもさることながら、活字を追っているだけで、たちまち睡魔に襲われるのはどうしてなのかしら。
 キャバ嬢の世界でも言葉というのは大切で、何の気なしに発した自分の言葉が相手に誤解を与えてしまったり、過度の期待を抱かせることはよくあったが、そんな表現を避ける意味では、言葉の機微というものを改めて考えさせられるきっかけになったかな、たぶん。もちろん夜の世界では、言葉だけじゃなく、しぐさとか表情とか、いろいろあるんだけどさ。
 「あら、美羽ちゃんったら、キャバ嬢や女子プロレスラーだけでなく、校正ウーマンとしての道もいいんじゃないの?」という日奈子社長の言葉に、「プロレスなら二十分一本勝負ですけど、校正の時間無制限一本勝負は辛いです」といい、苦笑いを浮かべる美羽。ほんとうであれば、自分もおてんば企画の一員(できれば正社員)として、編集や校正の業務に携わりながら、おてんばプロレスの顔として会社を盛りあげていければいいんでしょうけど、うーん、やっぱり校正は無理だな(泣)。
 とにかく今はプロレスの練習生としてベストを尽くさなくちゃと思った美羽が、わずか十日間ほどの静養を経て痛々しい包帯姿のまま、おてんばプロレスの練習に現れたのには、無茶ぶりで知られる代表の日奈子でさえ度肝を抜かれた。スーパード根性で生き抜く覚悟が、美羽の全身にあふれ返っていたのだ。
 「えっ、美羽ちゃん、まだ治っていないでしょ。大丈夫なの?」という日奈子の心配をよそに、ひたすらヒンズースクワットを続ける美羽の姿には鬼気迫るものがあった。練習練習。今の美羽にとっては、一に練習、二に練習、三も四もなくて、五に練習なのだ。
 「はい、私は大丈夫です。こうなったらプロレスと心中してみせます」なんていっている美羽の奮闘ぶりを目の当たりにし、代表である日奈子の心が揺さぶられた。
――げっ。
――なんなの!?
――この娘(こ)。
 日奈子の中で、ひとつの炎が燃えあがった。それは美羽という女の子なら、きっとおてんばプロレスのスターになれるという確信めいた想いであった。まさにモノが違う女の中の女。「よーし、こうなったらド根性を絵に描いたような美羽ちゃんのために、大胆不(素)敵なデビュー戦を用意しなくちゃね」と日奈子は想いを馳せるのであった。
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