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美しい羽が翼を広げる日はいずこへ
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美しい羽と書いて美羽。離婚という苦境にさらされながらも、胸を張って、体も張って、ひとり娘の弥生を育てている気丈な姿には心を打つものがあった。
「美羽ちゃんが羽を広げて、大空に羽ばたいていく日は、私も待ちわびています。おてんばプロレスの代表として、いずれは美羽ちゃんをエースというよりも、別な次元でのレスラーとして売り出し、より稼げる人材に仕あげたいです」。
そういって美羽の熱い想い、そしてそれをバックアップしようというジョニーさんの思惑に同調したのは、もちろん日奈子であった。ジョニーさんの本気度をうかがわせるように、おてんば企画の代表取締役である日奈子に対して、わざわざジョニーさんが電話をかけてきたのだ。おてんばプロレスの興行にかかわったところで、お金になんてならないのに、まさかそこまで動いてくれるとは――。きっとそれこそが、ジョニーさんのふるさとへの恩返しなのかもしれなかった。
実績豊富なジョニーさんと行動力抜群の日奈子による合体攻撃には、わくわく感しかなかった。おてんばプロレスのエースでチャンピオン、日奈子の片腕でもあるジャッキー美央も全面的に協力してくれることになっていた。どこまで力になってくれそうか、あてにならないところはあったが、天然のショー君も協力してくれるそう。ショー君の実家はラーメン屋だが、「お店にポスターを貼ってもいい」と親父さんも乗り気らしい。
役者はそろった。美羽の美しい羽が、大空に翼を広げて、未来を翔る日はそう遠くないだろう。もちろん地方の一企業が支えているだけのローカルプロレス団体。広告にかけられる費用なんて、まるでないに等しかったが、日奈子らの人脈を使ったり、無料のSNS広告を利用したりしながら、あの手この手で美羽のスター性をほじくりまわした。
が!
が!!
が!!!
美羽自身、成功を確信したところで、もうひとつの悲劇が襲いかかってきた。な、な、なんと――。年一回のおてんば市の検診を受けたところ、美羽の体に異変が見つかったのだ。その検診の名は、子宮がん検診。がんだなんて、まさに「が~ん」というのが率直な想いであった。
要精密検査。その結果は子宮頸がんだった。がんと聞いただけで、「ああ、自分はじきに死ぬ」という絶望感にひしがれた。がん、がん、がーん。そんな大きな病気だなんて、どうしていいのか皆目検討もつかない。日奈子社長に相談すべきなのか、あるいはキャバクラ「おてんば愛」の店長にも報告すべきなのか。
しかしながら、キャバクラ「おてんば愛」の店長は、男性でまだ三十代。ほとんど成りあがりで、ちょっと近寄りがたい雰囲気があり、体質的にはあまり得意じゃないのよね。まぁ、そこは仕事なので、テキトーに調子を合わせているだけなんだけどさ。
さりとて、おてんば企画の日奈子社長にも迷惑はかけたくない。うーん、どうしよう。迷って迷って迷ったあげ句、とりあえず美羽は、おてんばプロレスのエースで同世代でもある美央にその旨を告げることにした。美央は、おてんばプロレスを運営するおてんば企画の若き取締役でもあった。
「美央さん、ごめんなさい。こんなところに呼びつけて」といい、美羽が美央と会っていたのは、すずらん通りの一杯飲み屋である。がん患者が飲み屋かよ、という想いもないではなかったが、ビールの一杯や二杯、三杯ぐらい、どうってことはないだろう。
今日は水曜日。美羽自身、キャバクラの仕事はお休みで、娘の弥生には「ちゃんとお留守番してね。九時までには戻るから」と約束をしてきた。
「えーと、何を頼む? 私はやっぱり焼き鳥がいいかな。親父さんのおまかせコースが、これまたいいのよね」とかなんとかいいながら、二十代も中盤に差しかかった女子プロレスコンビは、思い思いのメニューを頼むと、ふたりで飲むのは初めてといっていい雰囲気の中、オッさん連中でやかましい一杯飲み屋のカウンターで向かい合った。
すぐ隣の席に、まさか地元では有名な女子プロレスラーがいるとは思っていないらしく、誰も声をかけてくる気配はなかった。もっとも、ふたりの超絶美女ぶりだけは、やたら際立っていたのだが――。
「乾杯」を済ませると、美央が焼きたてのネギマを頬張りながら語りかけてきた。「私もさー、くる日もくる日も残業で、そのくせアルコールはやめられないから、肝臓はぼろぼろなの。私の場合、働き方改革よりも飲み方改革が必要かもね」。
「あはは」なんて、しきりに苦笑いを浮かべる美央だったが、その瞳の裏には疲労がにじみ出ていた。「夕べも十六ページのパンフレットの編集のやり直しで半徹状態。あー、や(嫌)んなっちゃう。一応は好きで選んだ道なので、愚痴ってなんかいられないんだけどさ」。
「そんな忙しいときに、すみません。美央さん」という美羽に対し、美央は「なんのなんの」といい、ニッという笑顔をのぞかせた。
「それよりも乳がんの件、聞かせて」という美央のひとことを合図に、美羽が自分の想いをぶちまけた。娘に帰宅時間を約束している関係上、通常の一・三倍ぐらいのスピードでまくしたてる美羽。要点はこうだった。
乳がんという病気と闘いながら、プロレスラーとしての道を歩めるのか。いや、歩んでもいいのか。おてんばプロレスという団体にとって、乳がんの患者を抱えることは、とてつもなく大きな負担になるのではないか。団体のトップである日奈子社長に相談したら、日奈子はどう答えるだろう。おてんば企画の取締役である美央は、どう思うのか。同世代という立場でも、ぜひ意見を聞かせてほしい。あ、できれば会社とは関係なく、ホンネで聞かせて――。
そんな美羽の想いが通じたのか、ビールやらチューハイやら、アルコールを摂取しまくりながらではあったが、美央がストレートな想いを語ってくれた。とにかく飲む飲む。へべれっけになりながら、美央が応じてくれたのは、次の通りであった。
「ミーちゃんさ、私(あたし)思うんだけど、人間なんてどう長く生きるかよりも、自分の居場所で、どう価値のある生き方をするかだと思うのよ。一瞬一瞬が輝いていて、自分で満足と思えれば、それでいいんじゃないのかな。
プロレス。好きだったらいいじゃん。キャバクラの仕事のことはわからないけど、もし娘を守るためだったら、それでいいんじゃないの。とにかく自分の信じた道を進んでほしい。それが今、私にできるアドバイスかしら」。
「飲んべえなので、ごめんね」という美央の言葉に、美羽は「ありがとうございます」とだけいい、白魚のような美央の手を握りしめた。太陽のような美央が、そこにはいた。「なんのなんの」なんて、きっとそれは美央さんの口癖なのかしら。自分のまわりの人のためになるんだったら、そんなの気にしないで――という美央の心の声が聞こえてきそうだった。なんのなんの。考えてみると、結構いい言葉だ。美羽がふとそう思ったとき、女という生きものの情の深さをテーマにした演歌が、お店のスピーカーからあふれ出ていた。
美羽が追加でオーダーをしたウーロン茶割が出てきたとき、美羽は涙を抑えきれなかった。なんてやさしいし、なんて強いの。身近にこんな先輩がいるなんてさ。美央には頭があがらないし、おてんばプロレスには感謝しかない。プロレスとは、どうせなら結婚前に出会いたかったなぁ。おてんばプロレスという団体が、こんなにも心地よいなんて。
あ、でも待てよ。結婚したおかげで、弥生という最愛の娘と出会えたわけだから、今が一番ハッピーなのかな、きっと。
人目をはばからずに、美羽と美央は一杯飲み屋の店内でハグを続けた。あらん限りの愛情を吐き出しながら、ひしと抱き合うふたり。一日一日を大切に、一分一秒を大切に。それが美央からのアンサーでもあったのだ。余命という名の十字架を背負いながら、美羽が翼を広げる日はいつのことか、それは神のみぞ知るということだろうが、その日を信じて歩みを続けるしかないと美羽は思っていた。
美央さん、ありがとう。ありがとうありがとう。美羽の心の中は、感謝の気持ちで埋め尽くされた。ということは、そうよね。おてんばプロレスのためにも頑張るしかないかぁ。結局はそういうこと。美羽の中で、おてんばプロレス愛が止まらなかった。
「よっしゃー、これ俺のおこりだから」といい、親方が焼き鳥の盛り合わせをおまけで出してくれた。「俺の焼き鳥をたらふく食って、ふたりとも元気を出してよね」という言葉に、ふたりの超絶美女がほぼ同時に「ありがとう」と口にした。
「美羽ちゃんが羽を広げて、大空に羽ばたいていく日は、私も待ちわびています。おてんばプロレスの代表として、いずれは美羽ちゃんをエースというよりも、別な次元でのレスラーとして売り出し、より稼げる人材に仕あげたいです」。
そういって美羽の熱い想い、そしてそれをバックアップしようというジョニーさんの思惑に同調したのは、もちろん日奈子であった。ジョニーさんの本気度をうかがわせるように、おてんば企画の代表取締役である日奈子に対して、わざわざジョニーさんが電話をかけてきたのだ。おてんばプロレスの興行にかかわったところで、お金になんてならないのに、まさかそこまで動いてくれるとは――。きっとそれこそが、ジョニーさんのふるさとへの恩返しなのかもしれなかった。
実績豊富なジョニーさんと行動力抜群の日奈子による合体攻撃には、わくわく感しかなかった。おてんばプロレスのエースでチャンピオン、日奈子の片腕でもあるジャッキー美央も全面的に協力してくれることになっていた。どこまで力になってくれそうか、あてにならないところはあったが、天然のショー君も協力してくれるそう。ショー君の実家はラーメン屋だが、「お店にポスターを貼ってもいい」と親父さんも乗り気らしい。
役者はそろった。美羽の美しい羽が、大空に翼を広げて、未来を翔る日はそう遠くないだろう。もちろん地方の一企業が支えているだけのローカルプロレス団体。広告にかけられる費用なんて、まるでないに等しかったが、日奈子らの人脈を使ったり、無料のSNS広告を利用したりしながら、あの手この手で美羽のスター性をほじくりまわした。
が!
が!!
が!!!
美羽自身、成功を確信したところで、もうひとつの悲劇が襲いかかってきた。な、な、なんと――。年一回のおてんば市の検診を受けたところ、美羽の体に異変が見つかったのだ。その検診の名は、子宮がん検診。がんだなんて、まさに「が~ん」というのが率直な想いであった。
要精密検査。その結果は子宮頸がんだった。がんと聞いただけで、「ああ、自分はじきに死ぬ」という絶望感にひしがれた。がん、がん、がーん。そんな大きな病気だなんて、どうしていいのか皆目検討もつかない。日奈子社長に相談すべきなのか、あるいはキャバクラ「おてんば愛」の店長にも報告すべきなのか。
しかしながら、キャバクラ「おてんば愛」の店長は、男性でまだ三十代。ほとんど成りあがりで、ちょっと近寄りがたい雰囲気があり、体質的にはあまり得意じゃないのよね。まぁ、そこは仕事なので、テキトーに調子を合わせているだけなんだけどさ。
さりとて、おてんば企画の日奈子社長にも迷惑はかけたくない。うーん、どうしよう。迷って迷って迷ったあげ句、とりあえず美羽は、おてんばプロレスのエースで同世代でもある美央にその旨を告げることにした。美央は、おてんばプロレスを運営するおてんば企画の若き取締役でもあった。
「美央さん、ごめんなさい。こんなところに呼びつけて」といい、美羽が美央と会っていたのは、すずらん通りの一杯飲み屋である。がん患者が飲み屋かよ、という想いもないではなかったが、ビールの一杯や二杯、三杯ぐらい、どうってことはないだろう。
今日は水曜日。美羽自身、キャバクラの仕事はお休みで、娘の弥生には「ちゃんとお留守番してね。九時までには戻るから」と約束をしてきた。
「えーと、何を頼む? 私はやっぱり焼き鳥がいいかな。親父さんのおまかせコースが、これまたいいのよね」とかなんとかいいながら、二十代も中盤に差しかかった女子プロレスコンビは、思い思いのメニューを頼むと、ふたりで飲むのは初めてといっていい雰囲気の中、オッさん連中でやかましい一杯飲み屋のカウンターで向かい合った。
すぐ隣の席に、まさか地元では有名な女子プロレスラーがいるとは思っていないらしく、誰も声をかけてくる気配はなかった。もっとも、ふたりの超絶美女ぶりだけは、やたら際立っていたのだが――。
「乾杯」を済ませると、美央が焼きたてのネギマを頬張りながら語りかけてきた。「私もさー、くる日もくる日も残業で、そのくせアルコールはやめられないから、肝臓はぼろぼろなの。私の場合、働き方改革よりも飲み方改革が必要かもね」。
「あはは」なんて、しきりに苦笑いを浮かべる美央だったが、その瞳の裏には疲労がにじみ出ていた。「夕べも十六ページのパンフレットの編集のやり直しで半徹状態。あー、や(嫌)んなっちゃう。一応は好きで選んだ道なので、愚痴ってなんかいられないんだけどさ」。
「そんな忙しいときに、すみません。美央さん」という美羽に対し、美央は「なんのなんの」といい、ニッという笑顔をのぞかせた。
「それよりも乳がんの件、聞かせて」という美央のひとことを合図に、美羽が自分の想いをぶちまけた。娘に帰宅時間を約束している関係上、通常の一・三倍ぐらいのスピードでまくしたてる美羽。要点はこうだった。
乳がんという病気と闘いながら、プロレスラーとしての道を歩めるのか。いや、歩んでもいいのか。おてんばプロレスという団体にとって、乳がんの患者を抱えることは、とてつもなく大きな負担になるのではないか。団体のトップである日奈子社長に相談したら、日奈子はどう答えるだろう。おてんば企画の取締役である美央は、どう思うのか。同世代という立場でも、ぜひ意見を聞かせてほしい。あ、できれば会社とは関係なく、ホンネで聞かせて――。
そんな美羽の想いが通じたのか、ビールやらチューハイやら、アルコールを摂取しまくりながらではあったが、美央がストレートな想いを語ってくれた。とにかく飲む飲む。へべれっけになりながら、美央が応じてくれたのは、次の通りであった。
「ミーちゃんさ、私(あたし)思うんだけど、人間なんてどう長く生きるかよりも、自分の居場所で、どう価値のある生き方をするかだと思うのよ。一瞬一瞬が輝いていて、自分で満足と思えれば、それでいいんじゃないのかな。
プロレス。好きだったらいいじゃん。キャバクラの仕事のことはわからないけど、もし娘を守るためだったら、それでいいんじゃないの。とにかく自分の信じた道を進んでほしい。それが今、私にできるアドバイスかしら」。
「飲んべえなので、ごめんね」という美央の言葉に、美羽は「ありがとうございます」とだけいい、白魚のような美央の手を握りしめた。太陽のような美央が、そこにはいた。「なんのなんの」なんて、きっとそれは美央さんの口癖なのかしら。自分のまわりの人のためになるんだったら、そんなの気にしないで――という美央の心の声が聞こえてきそうだった。なんのなんの。考えてみると、結構いい言葉だ。美羽がふとそう思ったとき、女という生きものの情の深さをテーマにした演歌が、お店のスピーカーからあふれ出ていた。
美羽が追加でオーダーをしたウーロン茶割が出てきたとき、美羽は涙を抑えきれなかった。なんてやさしいし、なんて強いの。身近にこんな先輩がいるなんてさ。美央には頭があがらないし、おてんばプロレスには感謝しかない。プロレスとは、どうせなら結婚前に出会いたかったなぁ。おてんばプロレスという団体が、こんなにも心地よいなんて。
あ、でも待てよ。結婚したおかげで、弥生という最愛の娘と出会えたわけだから、今が一番ハッピーなのかな、きっと。
人目をはばからずに、美羽と美央は一杯飲み屋の店内でハグを続けた。あらん限りの愛情を吐き出しながら、ひしと抱き合うふたり。一日一日を大切に、一分一秒を大切に。それが美央からのアンサーでもあったのだ。余命という名の十字架を背負いながら、美羽が翼を広げる日はいつのことか、それは神のみぞ知るということだろうが、その日を信じて歩みを続けるしかないと美羽は思っていた。
美央さん、ありがとう。ありがとうありがとう。美羽の心の中は、感謝の気持ちで埋め尽くされた。ということは、そうよね。おてんばプロレスのためにも頑張るしかないかぁ。結局はそういうこと。美羽の中で、おてんばプロレス愛が止まらなかった。
「よっしゃー、これ俺のおこりだから」といい、親方が焼き鳥の盛り合わせをおまけで出してくれた。「俺の焼き鳥をたらふく食って、ふたりとも元気を出してよね」という言葉に、ふたりの超絶美女がほぼ同時に「ありがとう」と口にした。
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