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女性の元気、プロレスの元気を市(まち)づくりにも
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美央:人口が二十万人を割り込み、人口減少にあえぐおてんば市ですが、このたびの市長選では圧勝でしたね。特に女性票が多く集まりました。新市長としての抱負を聞かせてください。
日奈子:「やさぐれ」とか「はちゃめちゃ」とか、よくいわれますし、それは自分でもわかっていることですが、私もひとりの市民としてスーパーで買い物をして「今日はきゅうりが昨日より五十円も高い」と思ったり、同じ市内で暮らす女友達から「託児所の空き待ちで大変。それに私の時給よりも託児所の預かり料金の方が高いのよ」なんていう愚痴を聞かされたりして、そんな身近なできごとのひとつひとつが「おかしいものは誰かが変えなくちゃ」という気持ちに変わっていきました。
選挙戦で圧勝とか、女性票が多かったとか、そんなの全然関係ないです。結果的に女性票の七割を勝ちとったのは意外でしたが、私自身あくまでも市民目線で、目の前にある“おかしいと思ったこと”を全部変えていきたいと思っています。私がとり組んでいきたいのは、それだけですね。すべては市民目線ファースト。私へのインタビューは以上になります。
美央:お、終わらないでください(苦笑)。お聞きしたいことは山ほどあるというよりも、お聞きしたいことだらけなんですから。
日奈子:はいはい、もちろん冗談よ。自社媒体だと、つい気がゆるんじゃうわ。
美央:ゆるまないでください。今日の日奈子社長は日奈子市長なんですからね。
日奈子:もちろんよ、任せて。
美央:日奈子市長は、市長であると同時に、有限会社おてんば企画の社長で、おてんばプロレスのプロデューサー兼プロレスラーでもありますよね。市全体を俯瞰して見て、どのようなことをお考えですか。
日奈子:市長として市民の暮らしをよくできるのであれば、おてんば企画だろうが、おてんばプロレスだろうが、あらゆる団体の協力を求めていこうと思っています。少子高齢化が直撃する中、今いちばん必要なのは、地域としての盛りあがりじゃないのかしら。
そのカンフル剤として考えているのが、女子プロレスです。女性が元気である市(まち)は、きっと地域も元気である。それが私のポリシーですね。
美央:女性が元気な市。それが日奈子市長のあるべき姿ですか。
日奈子:女性が元気だったら、男性だって負けていないでしょ。男女とも元気で、みんながみんな住民の主役としてパワフルでいられる。最終的にはそんな市をめざしていきたいですね。
美央:女性の元気、プロレスの元気。そう考えると、女子プロレスそのものが日奈子市長の元気の源で、それがおてんば市の活性化にもつながっているというわけですね。
日奈子:あら、いいこというわね。さすが「おてんばだより」の名編集長だわ。もちろんプロレスはひとつの象徴でしかありませんが、その存在自体がユニークで、地域のアイデンティティーに直結している。温泉と女子プロレスのふるさと=おてんば市。それだけで絶大なプロモーションにつながっていくはずなので、その強みをさらに伸ばしていくこと、それが市長としての私のミッションだと思っています。
まぁ市長なんて、しょせんはシティープロモーションの仕かけ人みたいなものだと思うし、その意味では長年にわたり広告や編集の業務に携わってきた私の本領発揮といってもいいかもしれません。
美央:プロレスラー・プレジデント日奈子としては、どのような目標をお持ちですか。
日奈子:プレジデント日奈子は、いずれフェイドアウトしていくのかな(苦笑)。気がついたらいなくなっていたみたいな。うーん、そんな去り際が理想だと思っています。伝説の女社長レスラーがいたみたいな感じでも構わないし(笑)。
おてんばプロレスのプロレスラーとしては、ジャッキー美央とか赤毛のアン子とか、稲辺容子・隆子の姉妹とか、そのへんが次を担っていければと考えています。
美央:おてんばプロレスとしては、男子で女子プロレスラーのジュリーも人気ですよね。ジュリーにはどんなことを期待しますか。
日奈子:ジュリーには、早く女子になってほしい(笑)。とにかく声を大にして「(女子の世界へ)おいで」といいたいです。私たちは女子プロレスでからね~‥‥早く「あそこをちょん切れ」といいたいわ。
美央:「あそこ」というのは「あそこ」ですか(‥‥焦)。
日奈子:はい、「あそこ」です(笑)。ていうか、地域の今を伝える情報誌として、この表現はいただけないかな。ダメよ、編集長。
美央:あっ、すいません。気をつけますっていうか、最初にいい出したのは市長じゃ(苦笑)。
日奈子:まぁ、市長で社長の私がいっているんだから、しょうがないかぁ。あははは。これってセクハラじゃないですからね、念のため。ジュリハラなんていったら、ジュリーに怒られちゃうか。
美央:怒られますよ、社長。いや市長(冷や汗)。何よりも編集部長である私が怒ります。
日奈子:美央ちゃん、誌面がもったいないわ。まともな対談を続けましょう!
美央:あ、はい。まともな対談ですね(苦笑)。では、突然ですが、お休みの日とかは何をなさっていますか。
日奈子:お休みの日だなんて、何をいっているのよ。経営のことを考えているに決まっているじゃないの。ビジネス書を読んだり、外部のセミナーに参加したりしているわ。
美央:ほ、ほんとうですか? 日奈子市長はハッタリがお上手なので、その点どうなのかと。
日奈子:失礼ね。自治体の運営というのはマネージメントの集大成よ。こう見えても新しいことは常にインプットしているの。それがトップというものです。日本を代表する企業のトップの著書や、政治経済学者らの著書は、ほとんど読破しています。ここだけの話、私は一冊のビジネス書を十五分で読む速読術を身につけたのよね。
美央:そ、そうなんですか。
日奈子:詳しくはいえないけど、今はTime is moneyの時代よ。もちろん机の上だけで考えていても仕方がないので、相変わらずゴルフもやっています。ホールをまわりながら、グリーンのうえで考えること、それも貴重な時間のひとつになっているかしら。
美央:日奈子市長はゴルフがお好きですもんね。ストレス解消法としては、他にどのようなことをなさっていますか。
日奈子:お香とかサウナとかひとカラ(ひとりカラオケ)とか、いろいろあるわね。新しいストレス解消法を見つけること。それ自体が自分の脱ストレスにつながっているんじゃないかな。
美央:おてんば市のトップとして、市民の皆さんにお伝えしておきたいことはありますか。
日奈子:市民の皆さんにお声がけをするとすれば、みんなで希望を持ちましょう、夢を共有しましょうということかな、やっぱり。
私としては、これからを担う若者と、これからの子育てを担う女性が元気な市をめざしていきます。若者が元気なら、お年寄りの皆さんも安心して暮らせるし、女性が元気であれば、男性だって負けていられない。そんな相乗効果を狙っていきたいですね。
美央:日奈子市長は高齢者の生きがいづくりにも力を入れていますよね。
日奈子:お年寄りの皆さんって、いわば地域の知恵袋じゃない? できればそれをもっと活用して、児童館で昔の遊びを教えてもらったり、郷土料理の講習会を開いてもらったりできればと思っているの。
美央:今から十年後。市長で社長でプロレスラーでもある日奈子さんは、どんな生き方をしていると思いますか。
日奈子:十年後というと、私自身もう五十代か。きっと意地悪で、相変わらず目立ちたがり屋のババアになっているような気がします。市長さんはもう辞めているわね。だけど、社長はまだ続けているかな。できれば会社を三つぐらいやって、左うちわで暮らしていたいです。なんてね。嘘ですよ、今のは削除でお願い。
美央:日奈子社長。お願いしますよ、ほんとうに。
日奈子:はいはい、わかっているって。
美央:いやはや、なんとも個性あふれるインタビューになってしまいましたが、とりあえず日奈子市長の人間性だけは感じていただけたと思います。
文字数の関係上、今回はここまでにしておきますが、機会があったらまたやりましょう。読者からの反応次第ではあるんですけど。
日奈子:そうね。「日奈子市長の部屋」なんていうタイトルで、新たなレギュラーコーナーを設けてもいいわね。
美央:はいはい。レギュラーコーナーに関しては検討してみます。日奈子市長、今日は本当にどうもありがとうございました。
日奈子:ありがとう。「えい、えい、おてんば市~っ!」なんて。自社媒体だと、どうしても気がゆるむわね(笑)。
美央:あーん、もう。勘弁してくださいよ。
日奈子:「やさぐれ」とか「はちゃめちゃ」とか、よくいわれますし、それは自分でもわかっていることですが、私もひとりの市民としてスーパーで買い物をして「今日はきゅうりが昨日より五十円も高い」と思ったり、同じ市内で暮らす女友達から「託児所の空き待ちで大変。それに私の時給よりも託児所の預かり料金の方が高いのよ」なんていう愚痴を聞かされたりして、そんな身近なできごとのひとつひとつが「おかしいものは誰かが変えなくちゃ」という気持ちに変わっていきました。
選挙戦で圧勝とか、女性票が多かったとか、そんなの全然関係ないです。結果的に女性票の七割を勝ちとったのは意外でしたが、私自身あくまでも市民目線で、目の前にある“おかしいと思ったこと”を全部変えていきたいと思っています。私がとり組んでいきたいのは、それだけですね。すべては市民目線ファースト。私へのインタビューは以上になります。
美央:お、終わらないでください(苦笑)。お聞きしたいことは山ほどあるというよりも、お聞きしたいことだらけなんですから。
日奈子:はいはい、もちろん冗談よ。自社媒体だと、つい気がゆるんじゃうわ。
美央:ゆるまないでください。今日の日奈子社長は日奈子市長なんですからね。
日奈子:もちろんよ、任せて。
美央:日奈子市長は、市長であると同時に、有限会社おてんば企画の社長で、おてんばプロレスのプロデューサー兼プロレスラーでもありますよね。市全体を俯瞰して見て、どのようなことをお考えですか。
日奈子:市長として市民の暮らしをよくできるのであれば、おてんば企画だろうが、おてんばプロレスだろうが、あらゆる団体の協力を求めていこうと思っています。少子高齢化が直撃する中、今いちばん必要なのは、地域としての盛りあがりじゃないのかしら。
そのカンフル剤として考えているのが、女子プロレスです。女性が元気である市(まち)は、きっと地域も元気である。それが私のポリシーですね。
美央:女性が元気な市。それが日奈子市長のあるべき姿ですか。
日奈子:女性が元気だったら、男性だって負けていないでしょ。男女とも元気で、みんながみんな住民の主役としてパワフルでいられる。最終的にはそんな市をめざしていきたいですね。
美央:女性の元気、プロレスの元気。そう考えると、女子プロレスそのものが日奈子市長の元気の源で、それがおてんば市の活性化にもつながっているというわけですね。
日奈子:あら、いいこというわね。さすが「おてんばだより」の名編集長だわ。もちろんプロレスはひとつの象徴でしかありませんが、その存在自体がユニークで、地域のアイデンティティーに直結している。温泉と女子プロレスのふるさと=おてんば市。それだけで絶大なプロモーションにつながっていくはずなので、その強みをさらに伸ばしていくこと、それが市長としての私のミッションだと思っています。
まぁ市長なんて、しょせんはシティープロモーションの仕かけ人みたいなものだと思うし、その意味では長年にわたり広告や編集の業務に携わってきた私の本領発揮といってもいいかもしれません。
美央:プロレスラー・プレジデント日奈子としては、どのような目標をお持ちですか。
日奈子:プレジデント日奈子は、いずれフェイドアウトしていくのかな(苦笑)。気がついたらいなくなっていたみたいな。うーん、そんな去り際が理想だと思っています。伝説の女社長レスラーがいたみたいな感じでも構わないし(笑)。
おてんばプロレスのプロレスラーとしては、ジャッキー美央とか赤毛のアン子とか、稲辺容子・隆子の姉妹とか、そのへんが次を担っていければと考えています。
美央:おてんばプロレスとしては、男子で女子プロレスラーのジュリーも人気ですよね。ジュリーにはどんなことを期待しますか。
日奈子:ジュリーには、早く女子になってほしい(笑)。とにかく声を大にして「(女子の世界へ)おいで」といいたいです。私たちは女子プロレスでからね~‥‥早く「あそこをちょん切れ」といいたいわ。
美央:「あそこ」というのは「あそこ」ですか(‥‥焦)。
日奈子:はい、「あそこ」です(笑)。ていうか、地域の今を伝える情報誌として、この表現はいただけないかな。ダメよ、編集長。
美央:あっ、すいません。気をつけますっていうか、最初にいい出したのは市長じゃ(苦笑)。
日奈子:まぁ、市長で社長の私がいっているんだから、しょうがないかぁ。あははは。これってセクハラじゃないですからね、念のため。ジュリハラなんていったら、ジュリーに怒られちゃうか。
美央:怒られますよ、社長。いや市長(冷や汗)。何よりも編集部長である私が怒ります。
日奈子:美央ちゃん、誌面がもったいないわ。まともな対談を続けましょう!
美央:あ、はい。まともな対談ですね(苦笑)。では、突然ですが、お休みの日とかは何をなさっていますか。
日奈子:お休みの日だなんて、何をいっているのよ。経営のことを考えているに決まっているじゃないの。ビジネス書を読んだり、外部のセミナーに参加したりしているわ。
美央:ほ、ほんとうですか? 日奈子市長はハッタリがお上手なので、その点どうなのかと。
日奈子:失礼ね。自治体の運営というのはマネージメントの集大成よ。こう見えても新しいことは常にインプットしているの。それがトップというものです。日本を代表する企業のトップの著書や、政治経済学者らの著書は、ほとんど読破しています。ここだけの話、私は一冊のビジネス書を十五分で読む速読術を身につけたのよね。
美央:そ、そうなんですか。
日奈子:詳しくはいえないけど、今はTime is moneyの時代よ。もちろん机の上だけで考えていても仕方がないので、相変わらずゴルフもやっています。ホールをまわりながら、グリーンのうえで考えること、それも貴重な時間のひとつになっているかしら。
美央:日奈子市長はゴルフがお好きですもんね。ストレス解消法としては、他にどのようなことをなさっていますか。
日奈子:お香とかサウナとかひとカラ(ひとりカラオケ)とか、いろいろあるわね。新しいストレス解消法を見つけること。それ自体が自分の脱ストレスにつながっているんじゃないかな。
美央:おてんば市のトップとして、市民の皆さんにお伝えしておきたいことはありますか。
日奈子:市民の皆さんにお声がけをするとすれば、みんなで希望を持ちましょう、夢を共有しましょうということかな、やっぱり。
私としては、これからを担う若者と、これからの子育てを担う女性が元気な市をめざしていきます。若者が元気なら、お年寄りの皆さんも安心して暮らせるし、女性が元気であれば、男性だって負けていられない。そんな相乗効果を狙っていきたいですね。
美央:日奈子市長は高齢者の生きがいづくりにも力を入れていますよね。
日奈子:お年寄りの皆さんって、いわば地域の知恵袋じゃない? できればそれをもっと活用して、児童館で昔の遊びを教えてもらったり、郷土料理の講習会を開いてもらったりできればと思っているの。
美央:今から十年後。市長で社長でプロレスラーでもある日奈子さんは、どんな生き方をしていると思いますか。
日奈子:十年後というと、私自身もう五十代か。きっと意地悪で、相変わらず目立ちたがり屋のババアになっているような気がします。市長さんはもう辞めているわね。だけど、社長はまだ続けているかな。できれば会社を三つぐらいやって、左うちわで暮らしていたいです。なんてね。嘘ですよ、今のは削除でお願い。
美央:日奈子社長。お願いしますよ、ほんとうに。
日奈子:はいはい、わかっているって。
美央:いやはや、なんとも個性あふれるインタビューになってしまいましたが、とりあえず日奈子市長の人間性だけは感じていただけたと思います。
文字数の関係上、今回はここまでにしておきますが、機会があったらまたやりましょう。読者からの反応次第ではあるんですけど。
日奈子:そうね。「日奈子市長の部屋」なんていうタイトルで、新たなレギュラーコーナーを設けてもいいわね。
美央:はいはい。レギュラーコーナーに関しては検討してみます。日奈子市長、今日は本当にどうもありがとうございました。
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