悪役令息に転生したのでそのまま悪役令息でいこうと思います

マンゴー山田

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海編

お魚ー!

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「おおー! お魚さん!」

僕たちはででーん!とたくさんのお魚さんがある市場へとやってきた。この何とも言えない匂いも市場っぽいよねー。
くふくふと僕は笑ってるけど、4人はハンカチで口元を押さえてる。うん。生臭いからねー。
それでも僕は並べられているお魚さんの目をじいっと見つめては横に移動している。ふむ。やっぱり足が早いなぁ。気温が高いから余計にか…。
でも光魔法を使えばなんとかなるのでは?

「おやっさん、おやっさん」
「どうした? 嬢ちゃん」
「これっていつ獲れたの?」
「いつって…あ、今さっきだな」
「ふぅーん…」

そう言うおやっさんをじぃっと見れば、すすっと目が泳ぐ。だろうね。

「レジィ?」
「これ獲れてからそんなに時間は経ってないんですけど、やっぱり気温で足が早いですね」
「足? 魚には足が付いてるのかい?」

首を傾げながらそう聞いてくるフリードリヒに、にはっと笑うとおやっさんも、にはっと笑う。

「足が早いって言うのは「傷むのが早い」って意味です」
「なるほど。レジィは物知りだな」

そう言いながらフリードリヒに頭を撫でてもらう。うふふー。

「しかし…傷んだ魚など買うのか?」
「生じゃ無理ですけど、焼いたり煮たりあぶったりすれば大丈夫だと思うんです」
「あぶ…?」
「炙りですね」
「どういう意味なんだい?」

おや。流石のノアも食べ物に関しては知らないか。
いつも教えてもらうけど今は逆だね。

「炙りは表面をさっと焼いたりすることだよ」
「? それって焼いてるんじゃないの?」
「焼くのは全体に火を通すことなんだよ。炙りは半生って言えばいいのかな?」
「生…」

うっわぁ…と嫌そうな表情を隠そうともしないリーシャに苦笑いを浮かべると、目の前にあるサーモンをじぃっと見つめる。お腹の辺りがちょっとだけ膨らんでるのは卵があるからかな?

「おやっさん。このお魚ってサーモン? 鮭?」
「シャケ? なんだそれ? こいつはサーモンだぞ?」

鮭ではなくサーモンか。なら生で食べられそうだな。
ふむふむと頷きながらどうやって食べようかと悩んでいると「シャケ? サーモン?」とアルシュが首を捻っている。

「鮭は生では食べられなくて、焼いたり火を通して食べるもので、サーモンは生でよし、炙ってよしなんだ」
「ほぉー。嬢ちゃんよく知ってるなー」
「本で得た知識ですけどね」

そう言ってえへん、と胸を張れば「この辺りじゃ焼くことしかしねぇからなー」とおやっさんがこぼす。
あらら。やっぱり生で食べたりはしないかー。そりゃ生なんか怖くて食べられないよねー。だとすれば光の浄化魔法をなんとしてでも魔石にしなければ…! お魚さんは生でもおいしいんだぞ!って知らしめないと…!

「それでどうする?」
「ううーん…このお値段よりいくらか割引いた値段なら買いたいんですよねー」
「……なんでだ?」
「だって僕、生でお魚さんが食べたかったんですよー。でもこれだと食べられないから…」
「生で…食べる?!」
「こ、これをですか?!」

おわ?! そんな驚くとは思わなくてビックリした。

「獲れたてなら身がぷりっぷりでおいしいんですよー。時期によって脂が乗ってたり、さっぱり食べれたり…」

そう説明しながらふと、おやっさんの後ろにあった大きな魚が視界に入った。
あ…あれは?! もしかしてもしかしなくても今とっても数が少なくなって食べる機会が減ったあの…?!

「まぐろ?!」
「うお?!」
「おおおおおおやっさん! それ!」
「あ? 何だ急に?!」
「それ! おやっさんの後ろにあるお魚さん!」
「うん? ああ? これか? こんなもん鬱陶しいほど獲れるから捨てる魚だぞ?」
「勿体ない!」

ぐっと拳を作って力説すれば、フリードリヒ達が驚いている。それにそこを通りかかった人たちも何事かとざわざわしている。

「嬢ちゃん?」
「こんなおいしいお魚さんを捨てる?! なんて…なんて勿体ない…!」

くうっと唇を噛んでだん!と拳を地面に叩きつけたからか、おやっさんがドン引きしてる。ええ?! なんで?!

「よし。ならここにあるお魚さんと貝、それにエビ全部もらう!」
「レジィ?!」

何を言っているんだ?!というノアに構わず「でも鮮度が落ちてるからいくらか勉強してね!」ってにっこりと笑えば、ぬぐぐ、という表情を浮かべた後がっくりと肩を落として「…分かった」と頷くおやっさん。
やったー! ここに光魔法かけて生で食べよう! それにアヒージョにー、フライにー、ムニエルにー。うふふー。今日は海鮮尽くしだー!
でへへと一人笑っていると「レジィ、涎が出てるよ」とフリードリヒに言われて、差し出されたハンカチを受け取り涎を拭う。あばば。恥ずかしい!
すると。

「ほう。随分と思いきった買い物をするね」

と僕たちの後ろから突然声がした。ほへ?
それに全員が振り向けば、リーシャともソルゾ先生とも違うオオカミ色の髪に綺麗なカナリア色の瞳。誰だろう?と首を傾げれば、なぜかアルシュとノアが顔色を変えて慌てて直立する。うん? どうしたの?
そんなアルシュとノアを不思議そうに見つめる僕とリーシャ。

「ガラムヘルツ殿下?!」
「ほへ?」

おやっさんが立ち上がってそう叫ぶ。それに眉を寄せたのはフリードリヒ。今回も漏れなく目立つシルバーの髪は金色になってる。

「ああ、楽にしてくれ」
「は、はぃ!」

にこりと笑うガラムヘルツさん…殿下がそう言ってもおやっさんはガチガチに緊張している。っていうかガラムヘルツ殿下?がこんなところをうろうろしてていいの?
かくんと首を傾げてやり取りを見つめていると、カナリア色がフリードリヒに移った。すると少し瞳を大きくするけど、すぐににこりと笑みを浮かべる。…なんだろう。ちょっと胡散臭い。
じと、と不躾に見つめていると、僕の視線に気付いたガラムヘルツ殿下の表情がぱぁっと先程の笑みなどとは比べ物にならない程の笑みで僕を見た。え? 何?

「そうか! 君が…!」
「え? え?」

なになに? アルシュとノアがさっと場所をガラムヘルツ殿下に場所を譲ると、その場に膝をつき僕の手を握る。ええ?!

「君がレイジ…」
「失礼。この子はレジィ。誰かとお間違えでは?」

ガラムヘルツ殿下の言葉を遮って、にっこりと微笑みながらそう告げるフリードリヒの顔には「なんであんたがここにいるんだ」という言葉が見て取れた。
あ。この人本当に偉い人なんだ。そういえばこの人が来てから人が通らないなーと思ったら、兵士さんが止めてる。通行の邪魔だなー。

「えっと…ここだと邪魔になっちゃうので、お魚さんを持って移動してもいいですか?」
「ああ! もちろんだとも! 君もいいかな?」
「……そうですね」

そう言うフリードリヒの表情は苦々しそう。仲悪いのかな?
まぁいいや。それよりお魚さんの代金を支払わないとねー、とうさうさバッグからうさうさ財布を取り出そうとしたら、大きな手がなぜかそれを止めた。うん?
何ですか?とガラムヘルツ殿下の方を見れば「ここは私が支払おう」と告げる。え? なんで? 初対面の人に…しかも殿下にお支払いをさせるとか怖くてできないんですけど…。

「ここの支払いは私が。後日代金を支払うがいいかい?」
「は、はい!」
「え? いや…でも…」

わたわたと焦り出す僕を他所目に、さくさくと交渉が進みお魚さんを運び出す為に騎士さんたちがささーっと動き出す。ええええー!

「所でこれはどこに運べばいいのかな?」

ん?という拒否できない圧に僕は負け「えっと…。あっちの砂浜のほうに…」と恐る恐る言えば「よし。その魚たち全てを砂浜に運べ!」と命令を出してるガラムヘルツ殿下。お店の商品がすっからかんになったおやっさんが「ま、またどうぞー」と震える声で言ってくれる。可哀相に…。そんなおやっさんに「またねー」とばいばいと手を振って立ち上がると、なぜかガラムヘルツ殿下に肩を抱かれる。おん?

「では、行こうか」
「はへ?」

よく分らないけどたぶんお魚さんを運んでもらう砂浜に移動するんだろうということは理解できた。でもノアと手を繋がなきゃとノアを見れば、唇を噛んで動こうとしない。

え? なんで?

じゃあフリードリヒに、と思ったらフリードリヒも動こうとしない。それに「なんで?」と言葉にすれば「転ばないようにね」とガラムヘルツ殿下に肩を抱かれたまま、歩き始めた。



砂浜に移動すると、そこには準備万端な侍女さん達が待っててくれた。結局僕はガラムヘルツ殿下に肩を抱かれたまま騎士さんの後を歩いて、フリードリヒ達はなぜか僕たちの後ろを付いてくるだけ。なんで?
よく分らないことに混乱していると「さぁ、着いたよ」とガラムヘルツ殿下が微笑む。えっと…。

「あの」
「どうかした? レイジス?」
「僕、その…あなたのこと知らなくて…」

だから誰なのか教えてもらえると助かるんですよ、とちらりと上目遣いでガラムヘルツ殿下を見れば「可愛いなぁ」とでれっと鼻の下を伸ばしている。
なんだろう。フリードリヒと同族っぽい匂いがする。
けど、直ぐに真面目な顔に戻るとすっと、右手を左胸に乗せる。あれ? それって?

「初めまして…ではないけれど初めまして。レイジス。私はここより東にあるハガルマルティア王国の第一王子、ガラムヘルツ・ハガルマルティアと申します」
「あ、えと。レイジスです。レイジス・ユアソーンです」

ぺこりと頭を下げると「大きくなったね」と頭を撫でられる。それに首を傾げれば懐かしそうに瞳が細くなった。

「私は君が生まれた時に会っているんだ。その時、私もまだ子供だったけどね」
「ほへ? そうなんですか?」
「ああ。赤ちゃんの時は天使みたいな子だと思ったけど、大きくなっても天使だったね」

にこりと笑うガラムヘルツ殿下はなんだか親戚のお兄さんみたいだ。わしわしと大きな手で頭を撫でられながら「えへへ」と笑えば「バードの言った通りだな」と小さく呟いた。バード? 鳥さん?

「あの。質問、してもいいですか?」
「うん? 私が答えられる範囲ならばどうぞ?」

ガラムヘルツ殿下の言葉に、きゅうと服を握ってから顔を上げる。

「フリードリヒ殿下と離されてるのは…なんでですか?」

僕の質問が意外だったのか、カナリア色の瞳が大きくなった。
まだ知らない人とこうやって話すのはまだちょっと怖い。王宮にいた時も側にはいつも父様やフィルノさんがいてくれたから、あんまり怖くなかったんだ。でもフリードリヒ達とこうして離されるのは初めてで。
だから。

「僕、その…初めて会った人とかは怖くて…」

ぎゅう、と服を掴んで俯けばじんわりと視界がにじむ。すると「そうですわよ」と女性の声が後ろから聞こえた。え? 誰?

「ルスーツ」
「ルスーツ?」

だぁれ?と顔を上げて振り向けば、騎士さんとアルシュ、ノア、それにリーシャが敬礼をして頭を下げている。また偉い人だ!
でもその腕にはねむねむな羊耳のフードを被った小さな子がいた。

「ごめんなさいね? えっと…レイジス君でよかったかしら?」
「え? あ、はい。大丈夫です」

涙を袖で乱暴に拭うと、にこりと微笑んだルスーツさんはガラムヘルツ殿下に向き直ると、キッと瞳を吊り上げる。ええ?!

「ガラムヘルツ様」
「な、なんだい? ルスーツ?」
「レイジス君と話がしたいからと言って、強引に連れてくるのはいかがなものかと思いますわ」
「ご、強引と言うわけでは」
「ない、とは言わせませんわよ。お店の商品を全部購入したと聞きましたわよ」
「あ、それは…僕が買おうと思っていたんです。だから…!」
「レイジス君。嫌なことは嫌と仰らないと、ガラムヘルツ様はお分かりにならない方ですわよ?」

ぷんすこぴんと怒っているルスーツさんだけどその声は小さい。たぶんねむねむの子がいるからだろう。
ずび、と鼻をすすって「分かりました」と頷けば「本当に可愛らしい子ですわね」と僕の頭を撫でながらほんわーとしている。

「レイジス君、フリードリヒ様の所へお戻りくださいな」
「いいんですか?!」
「こんな悲しい顔をされてますもの」
「い、いや…しかしルスーツ…」
「ガラムヘルツ様は少しお黙りになって!」

……………強い。母親になった女性は強いと聞くけどめっちゃ強いな。ルスーツさん。ずびずびと鼻を鳴らしてじぃっとルスーツさんを見上げれば「はぅ!」という奇妙な声をあげて、ねむねむの子を抱きつぶさないようにしながら胸を押さえている。おわ?! 大丈夫ですか?!

でも「さ、お戻りになられて」と優しく言われて、いいのかな?と後ろを振り返りつつも、とぼ…と足を一歩踏み出せばその足はだんだんと早くなって、ついにはフリードリヒに向かって走る。砂に足を取られながらも数メートルを走れば、フリードリヒも走ってきてくれる。
フリードリヒに飛びつくように胸めがけてダイブすれば、もうダメだった。

「うえええええええん!」
「大丈夫、大丈夫だからね?」
「フリードリヒ! フリードリヒ殿下あぁ!」
「怖かったね? 大丈夫だよ」

ぎゅうと抱き付けば、フリードリヒもぎゅうと抱き返され頭を撫でられながらわんわんと泣く。不安と寂しさで壊れた僕の涙腺は止まることなくフリードリヒの服を容赦なく濡らす。
僕が思いっきり泣いて、アルシュにもノアにもリーシャにも抱き付いて「怖かった」と全身で訴えた後、ルスーツさんに叱られたガラムヘルツ殿下がしょんもりとしながら「すまなかった」と謝りに来た。

「君に会えたことが嬉しくてつい…申し訳ない」
「僕もごめんなさい。ビックリしちゃって…その…」
「いや。レイジス。君のことは分かっていたつもりなのだが…やはりつもりだったようだ。本当に申し訳ない」

そう言って頭を下げるガラムヘルツ殿下に「やややややめてください!」とわたわたと両手を振って「頭をあげてください」と言えばようやく頭をあげてくれた。っていうか他国の王太子殿下がただの侯爵に頭を下げちゃダメだと思うんですよ!
でもガラムヘルツ殿下を見つめる騎士さん達の視線はちょっとだけ冷たいような気がするのは気のせい…だよね?
子供みたいにわんわん泣いていたのを見られてちょっと恥ずかしいんだけど。

「フリードリヒも。悪かった」
「……いや。ウィンシュタインが一番下なのは分かっているからな」
「……そうか。レイジスには何も?」
「ああ。まだ、何も知らない」
「一番下ってなんですか?」
「それはまた今度ね?」
「ガラムヘルツ殿下」
「申し訳ないが私からは何も言えないんだ。すまない」

ウィンシュタインが一番下ってどういうことなんだろう? よく分んない。でも。

「フリードリヒ殿下、フリードリヒ殿下」
「どうしたんだい? レイジス」
「お魚さんが傷んじゃいます…」
「っは! それは一大事だ!」
「だからだから、急いでお料理しましょう!」
「そうだな。私に何かできることがあったら言ってくれ」
「分かりました! じゃあリーシャ、光魔法でお魚さんを全部浄化して!」
「いきなりそれですか。まぁいいですけど」

「今泣いた烏がもう笑うってこのことですね」とぶつぶつ言いながらも運んでもらったお魚さんやエビ、貝なんかを浄化してくれる。
そう言えば腐ったものを浄化すると消えるーとか言ってたような気がするんだけど、どうなんだろう?

しょわっと光魔法で浄化をしてもらってからおっきなぶりさんに近付けば、まさに死んだ魚の目に近かった目が艶々の綺麗な瞳に変わっている。おお? これはもしかしてもしかする? きょろきょろと周りを見渡せば「どうかしたの?」とガラムヘルツ殿下に声をかけられる。その声に「包丁を探してますー」と返せば「それは危ない! やめなさい!」とガラムヘルツ殿下に言われてしまう。
そう言えばフリードリヒからも口酸っぱく「刃物は危ないから触らないこと」って言われてるんだよね。やっぱり同族だなー。
それにくふっと笑うと「レイジス様」とすっと待機していた侍女さんが包丁を持って一定の距離を開けて頭を下げている。おお! 包丁持ってたのね!

「いかがいたしましょう?」
「えっと…三枚おろしして欲しんだけど…分かる?」
「サンマイオロシ…でございますか?」
「あー…うん。そっか。えっと、アンギーユさんを捌いた時みたいに切ってほしいんだけど…」

そう言った瞬間「ああ! あれですか!」と侍女さんの表情が明るくなる。ほわぁ?!
そしてぶりさんをサクサクと三枚おろしに捌いていく侍女さん。おおー…あの時の経験が生きている…!
ふんふんと侍女さんがぶりさんを捌いてる間に僕は貝類を処理していく。急遽用意してもらったグラタン皿にオリーブオイルをどばーっと入れて、ニンニクをドスンと騎士さんに拳で潰してもらって投入。それから貝類をどぼーん!と豪快に入れて最後に唐辛子をイン。それを煉瓦で組み立ててもらったレンガ窯の上に置いた網の上に乗せて放置。それを貝が無くなるまで作ればたくさんできあがって僕、ほくほく。
大量のお魚さんを捌いている侍女さん達だけどアンギーユさんみたいな大きさじゃないから早い。内臓とか骨とかの食べられない物はリーシャが火の魔法で焼いて灰にしていく。ゴミの処理もきちんとしなきゃね!

「アンギーユ? アンギーユって魔物の?」
「はい! とってもおいしかったです!」

わたわたと料理を作っていく僕たちを見ていたガラムヘルツ殿下のその呟きに、えへーと笑えば「え?」とカナリア色の瞳が大きく見開かれた。あ、やっぱり食べないのかー。もったいない。

「レイジス様、これでよろしいでしょうか」
「わぁ! めちゃくちゃ綺麗!」

ふはーっとやり切った侍女さんに「ありがとう!」お礼を告げる。スーパーで売っているような身にされたお魚さんに「すごーい! すごーい!」ときゃっきゃと笑えば「次はどうされますか?」と侍女さんが聞いてくる。現場監督アゲインな僕があれやこれを指示しながら次々と料理を作っていくけどやっぱり人手が足りなくて警護をガラムヘルツ殿下を守ってくれている騎士さん達にお願いしてアルシュ、ノア、リーシャを借りる。
それでも足りなくなって騎士さん達を巻き込んでみんなで料理をする。
そして、できあがった頃には僕のお腹がぐーぐーと鳴って。

「皆で食べよう!」

ということで、できあがったお魚のカルパッチョやフライ、海鮮丼、アヒージョといったたくさんのお魚さん尽くしの料理が所せましと並んでいる。
ついでに言うと砂浜で食べるのはよろしくない、というフリードリヒの一言で海の家っぽい場所を借りてガラムヘルツ殿下の護衛の騎士さん達も入ってご飯!

「これ…本当に食べるんですか?」
「もっちろーん! 甘エビさんおいしいんだよー!」

生魚は初めてなフリードリヒとガラムヘルツ殿下。そりゃそうだよね。だから僕がほくほくとしながら甘エビに手を伸ばし醤油とワサビを付けて…。
ぱくん!

「ふおおおおおおおおぉぉぉ!」
「だ、大丈夫かい?!」

奇声を上げた僕にフリードリヒが慌てるけど違うんだ! 美味しいんだよー!

「おいひい…エビさんおいひい…」

尻尾は食べられないからお皿の上に置いてもう一本、と手を伸ばす。するとやはり未知の料理の特攻隊長であるリーシャが手を伸ばし、恐る恐る甘エビさんを口にする。
その様子をごくりと固唾を飲んで見守るフリードリヒ達。

「あま…い? え? なんですかこれ?」
「甘い?」
「はい。甘エビさんはちょっと甘みがあっておいしいんですよー」

うふふと笑いながらまぐろのカルパッチョに手を伸ばし、もぎゅっと食べれば手作りドレッシングもおいしくてぱくぱく食べちゃう。揚げたてのエビフライやアジフライ、それに白身のお魚さんにタルタルソースをたっぷりと付けてざくり! ふわー! ふままままー!
バンズを貰ってチーズを敷いてその上に白身のお魚さんのフライを乗せてタルタルソースをどーん!とたっぷり乗せて上からバンズを乗せて…。ぱくり!
ふおおおおおおおおぉぉぉ! おいしいー!
うまうまとフィレオフィッシュもどきをもぐもぐすれば、皆も当然同じことをするわけで。皆にフィレオフィッシュもどきを作って渡せば一斉に噛り付く。もう噛り付くのは平気だからねー。
んふんふとそれを味わっていると、料理に手を付けずにこにこと僕を見ているガラムヘルツ殿下。やっぱり生のお魚さんは抵抗あるのかな?なんて思いながら、もりもりと今度はサーモンとマグロ、ぶりの乗った海鮮丼を頬張る僕。ああー…お口の中が海だよー。幸せだよー。
調味料たちはうさうさバッグの中に一通り入れてきたからね! お酢でもワサビでも胡椒でもなんでもござれ!
海鮮丼うまうましながら、ほんわーと幸せな気分に浸っているとガラムヘルツ殿下がくすりと笑う。

「その揚げたものを貰おうか」
「はーい!」
「あ、これおいしい」

未知のものを食べることに慣れているフリードリヒ達は一度口にしてしまえばもりもりと食べてくれる。けど。
ガラムヘルツ殿下とルスーツさんはまだ手を付けていない。未知の料理だから警戒されてるのかなぁ?
生じゃなきゃいけるのかな?

「えと…フライ辺りなら大丈夫だと思うんですけど…」
「ふむ。これはふらい、と言うのか」
「初めて見ますわ…」

あー…。そうですよねー…。揚げる、なんて調理法をするのは僕くらいだもんねー。今は王都辺りで流行ってそうだけど。
そういえばねむねむの子はどうしたんだろう?

「あの子なら乳母に任せてあるから大丈夫だよ」とガラムヘルツ殿下に言われ、その手にはアルコールが握られている事に苦笑いを浮かべる。
後でねむねむの子にドーナツをあげよう。僕のおやつだけどね。

もりもりとお魚さんたちに舌鼓みを打って、残った料理(勿論僕たちが手を付けていないもの)は騎士さん達に振る舞われることになった。
たらふくお魚さんを食べて満足した僕だったけど、まだあれを作りたい。サーモンから取れたあれを醤油に付け込んで氷の魔石が入っている木箱へイン。二、三日したらあれができあがる、はず。
待機してくれてるお医者さんにもお魚フルコースを振る舞って、ガラムヘルツ殿下とフリードリヒ達と別れて戻ってきた僕の部屋。侍女さんにいつものネグリジェに着替えさせてもらって、今はベッドに倒れこんでいる。
いろいろあった一日で疲れちゃった僕は、今日はもう寝ちゃおうとベッドに滑り込んですぐ夢の国へと駆けだした。



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