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05.ガニ股歩きのおじいさま
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ダンジョンの中は非常に入り組んでおり、その上豊富な罠や仕掛けも張り巡らされていた。
しかしノアたちは、このダンジョンの帰り道である。ある程度どこに罠があるかは既に把握していたし、仕掛けの謎も解いていた。
「この床は、『しりとり』をしながらじゃないと進めない仕掛けになっているの」
レティシアから、普段通りに喋って欲しいと言われたルルは、その要望通りに敬語で話すことをやめた。
灰色のコンクリートの床が、一歩先から赤色のタイルに変わっている。そのタイルは、ずっと奥まで伸びているようだ。
「しりとり……ですか?」
「あ。しりとりって分かる? 庶民の言葉遊びなんだけど」
「はい、存じ上げております」
ルールを説明しようとしたエヴァンだったが、レティシアは当然のように頷いてみせた。
「取り敢えずやってみせた方が早いわよね。じゃあ、『りんご』」
と言って、ルルは一歩進んで赤色のタイルに足を乗せた。
「ご、ね。『ゴリラ』」
続いてエヴァン。
「『ラミーカミキリ』」
そしてノアが続く。
「なるほど、心得ました! 次は頭文字が『リ』のものを言いながら、タイルに乗れば良いのですね!」
ルルとエヴァンは笑顔で頷き、レティシアがタイルに乗るのを待つ。
「少々お待ちくださいね。リ……リ……『りんご』!」
えいっ! とレティシアがタイルに乗った瞬間、どこからともなく『ブー』とブザー音が鳴り響き、赤いタイルが全て消失した。
「え?」
立っていた床が突然消えて、4人はそのまま落下する。
「……最初に言えば良かったね。同じワードはダメなんだ」
「いったた……! あ、みんな大丈夫!?」
落下した高さは2メートル程。親切なことに、地面は弾力性のある地面になっている。
往路で規則性が判明するまで散々落下を経験した為、エヴァンは慣れた様子で着地。ルルは予想外の落下であった為、着地に失敗して尻餅をついていた。
「大丈夫だ。問題無い」
「いや、問題しか無いわ! 何をしれっとした顔でティア様の上に乗っかってるのよ!?」
レティシアのお腹にしがみ付き、落下の衝撃を全て回避したノアは何食わぬ顔で立ち上がる。
「ティア様、だ、だ、大丈夫!?」
「はい、大丈夫です! 私、またお役に立てたのではないでしょうか!?」
「……うん。もう貴女がそれでいいなら、何も言うことは無いわ……」
疲れた顔で、ルルはすぐ目の前にある階段に向かって歩き出した。
階段を登るとさっきの廊下に戻り、消えたはずの赤いタイルも元通りになっていた。
「一応、ルールを再確認しておくわね。『同じワードは禁止』『架空の名称も禁止』『しりとりになっていれば会話はオーケー』よ」
「わかりました。次は失敗しないよう、気をつけますね」
気を取り直して、しりとりを再開する。順番は先ほどと同じ、ルル、エヴァン、ノア、レティシアである。
「『バナナ』」
「『ナス』」
「『スカシバガ』」
「ガ……?ガ、ガ……『ガニ股歩きのおじいさま』!」
一瞬、これはアウト判定ではないかと落下の衝撃に備えたルルだったが、ブザー音は鳴らなかった。
「『マジックショー』」
「『ヨット』」
「『トゲアリヅカムシ』」
「『衝撃の展開に乞うご期待』!」
(どんな展開なのよ)
ツッコミ体質であるルルは、レティシアの言葉のチョイスに思わず脳内で突っ込んでしまう。
「『イス』」
「『素敵な月夜に酔いしれる美女と僕』」
「『クモタツマキチョウ』」
「『運搬業務に勤めているおばさま』」
「…………『マツタケ』」
「『気高い僕に心を奪われる美女』」
「『ヨツメウンカ』」
「『可能な限り善処いたします』」
――こうして、一向は無事に赤色のタイルのゾーンを通過した。
「あんたまで途中から変な悪ノリするのやめてくれる!? しかもなんなのよ、そのナルシスト設定は!? ノアはよくもまぁ、聞いたこともないような虫の名前がポンポン出てくるわね! 全部実在してることに驚きを隠せないわ! あとティア様は言葉のチョイスが……」
「はい?」
「………………チョイスが、素晴らしかったわ」
言いたい事を一気に吐き出したルルだったが、さすがにまだ王女に厳しい言葉を投げつけることはできなくて、渋々言葉を濁した。
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