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18.ニンジャの落とし物
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「おね……お姉様が、お嫁に行くの、嫌だった、から……っ!」
しゃくり上げながら、なんとか言葉にするルチア。
「スピナ国との顔合わせにレティシア様が行かなければ、縁談は白紙になるとお考えになったルチア様の実に浅はかな計画でした」
「それは……本当に浅はかだね」
さすがにエヴァンも呆れる計画である。
「でも2ヶ月も監禁するなんて、少しやり過ぎたのではありませんか?」
「違うのっ! 私、そんなこと命じてない! 私は、数時間だけお姉様の足止めをするようにとお願いしただけなの! それなのに……っ」
ルチアは力強く否定した。握り締めた拳が、小さく震えている。
「ま……魔王と名乗った人は、本当に、その……死んだのですか?」
「はい」
エヴァンが頷くと、ルチアは床に崩れ落ちた。両手で顔を覆って、また涙を流す。
「嘘よ……嘘……! アリエッタが死んだなんて……!」
「ん? アリエッタ?」
ルルは首を傾げた。
「ルチア様。アリエッタとは……」
「私の侍女よ……アリエッタに主導してもらって、ティアお姉様を攫ったの。アリエッタが魔王のフリをして――」
「魔王はおっさんでしたよ?」
「……」
「……?」
「誰?」
顔を上げ、侍女を見るルチア。侍女も眉を顰めている。
「この計画におっさんは加わっていないわ。どこのおっさんなの? アリエッタは?」
「ちなみに僕たちを襲った暗殺者も、声の感じはおっさんでした」
「暗殺者なんて物騒なもの、私が雇うわけないじゃない!」
心外だと叫ぶルチア。
「大好きなティアお姉様に危険が及ぶようなことは、絶対にしないわ!」
「つまりルチア様は、利用されたということですか」
「私が、利用された?」
エヴァンの言葉をおうむ返しに問う。
「ティア様を拉致する計画に、便乗した誰かがいる。アリエッタは、もしかしたら既に……」
言葉を濁したエヴァンだったが、察したルチアの瞳からはまた涙が溢れてきた。
「どどどどうしよぉぉぉ! 私のせいでアリエッタがぁぁ!」
「昨日の暗殺者なら何か知ってるかもしれないけど……出来ることなら、もう会いたくないなぁ」
「でもティア様はもうお城に帰ったんだし、私たちに会いにくる理由なんてなくない?」
「あいつ『一度殺すと決めた人間は必ず殺す』とか言いそうじゃない? ああいう捨て台詞を吐く奴って、大体厨二病を患ってるからね」
無茶苦茶なエヴァンの持論だが、ルルは妙に説得力を感じてしまう。
「しかし暗殺者を捕らえたとして、素直に雇い主を教えるでしょうか? そういう輩は、どんな拷問にも耐える訓練を受けていると聞きます」
と、ルチアの涙をやや乱暴にハンカチで拭きながら侍女が言う。
「だよね。多分自称魔王も、捕まって拷問されるくらいならと思って自害したんだろうし……せめてもう少し情報があればなぁ」
腕を組み、あの暗殺者の言動に何かヒントはなかっただろうかと思い出すエヴァン。
「ノアも、何か気付いたことは無かった?」
「何も無いが、スピナ国のニンジャだということはわかった」
「やっぱり何もわかんない……………………え?」
その場の全員の視線がノアに集中する。
「なんであのニンジャが、スピナ国から来たって思ったの?」
「ニンジャの落とし物だ」
ノアはポケットから1枚のコインを取り出した。
「見たことのないコインだったから、昨夜どこのものか調べてみた。スピナ国の通貨だ」
「スピナ国……お姉様が婚約を結ぶはずだった……?」
「偶然とは思えないね」
ルチアは、レティシアが誘拐されてからのスピナ国の動向を思い返してみた。
顔合わせをすっぽかすとは、これまで築き上げてきた関係を無下にする行為だと非難してきたと聞いた。事情を説明しても、スピナ国が小国だからと馬鹿にしていると立腹し、最終的にはレティシアの代わりに第一王女リュミエールが欲しいと言っている、と。
「それって怪し過ぎない?」
話を聞いたルルが言う。
「絶対スピナ国の仕業よ! 最初からリュミエール様が欲しかった、ってやつよ!」
「ミエールお姉様が有能だからだわ……!」
許せない、とルチアは眉を吊り上げた。
「実際、ミエールお姉様はお父様よりも外交や政治の手腕に長けていらっしゃるもの。そんなミエールお姉様を手に入れたくなったのね!?」
「王族の中で唯一表舞台に出てくるリュミエール様の評判は、とても良いからね。美しく、聡く、時として冷酷な『氷の王女様』」
「ルチア様。本日、午後からスピナ国との会談があります。フェリクス王子もいらっしゃるようですが」
侍女の言葉にルチアは拳を突き上げ、踵を返した。
「ぶっ潰す!」
しゃくり上げながら、なんとか言葉にするルチア。
「スピナ国との顔合わせにレティシア様が行かなければ、縁談は白紙になるとお考えになったルチア様の実に浅はかな計画でした」
「それは……本当に浅はかだね」
さすがにエヴァンも呆れる計画である。
「でも2ヶ月も監禁するなんて、少しやり過ぎたのではありませんか?」
「違うのっ! 私、そんなこと命じてない! 私は、数時間だけお姉様の足止めをするようにとお願いしただけなの! それなのに……っ」
ルチアは力強く否定した。握り締めた拳が、小さく震えている。
「ま……魔王と名乗った人は、本当に、その……死んだのですか?」
「はい」
エヴァンが頷くと、ルチアは床に崩れ落ちた。両手で顔を覆って、また涙を流す。
「嘘よ……嘘……! アリエッタが死んだなんて……!」
「ん? アリエッタ?」
ルルは首を傾げた。
「ルチア様。アリエッタとは……」
「私の侍女よ……アリエッタに主導してもらって、ティアお姉様を攫ったの。アリエッタが魔王のフリをして――」
「魔王はおっさんでしたよ?」
「……」
「……?」
「誰?」
顔を上げ、侍女を見るルチア。侍女も眉を顰めている。
「この計画におっさんは加わっていないわ。どこのおっさんなの? アリエッタは?」
「ちなみに僕たちを襲った暗殺者も、声の感じはおっさんでした」
「暗殺者なんて物騒なもの、私が雇うわけないじゃない!」
心外だと叫ぶルチア。
「大好きなティアお姉様に危険が及ぶようなことは、絶対にしないわ!」
「つまりルチア様は、利用されたということですか」
「私が、利用された?」
エヴァンの言葉をおうむ返しに問う。
「ティア様を拉致する計画に、便乗した誰かがいる。アリエッタは、もしかしたら既に……」
言葉を濁したエヴァンだったが、察したルチアの瞳からはまた涙が溢れてきた。
「どどどどうしよぉぉぉ! 私のせいでアリエッタがぁぁ!」
「昨日の暗殺者なら何か知ってるかもしれないけど……出来ることなら、もう会いたくないなぁ」
「でもティア様はもうお城に帰ったんだし、私たちに会いにくる理由なんてなくない?」
「あいつ『一度殺すと決めた人間は必ず殺す』とか言いそうじゃない? ああいう捨て台詞を吐く奴って、大体厨二病を患ってるからね」
無茶苦茶なエヴァンの持論だが、ルルは妙に説得力を感じてしまう。
「しかし暗殺者を捕らえたとして、素直に雇い主を教えるでしょうか? そういう輩は、どんな拷問にも耐える訓練を受けていると聞きます」
と、ルチアの涙をやや乱暴にハンカチで拭きながら侍女が言う。
「だよね。多分自称魔王も、捕まって拷問されるくらいならと思って自害したんだろうし……せめてもう少し情報があればなぁ」
腕を組み、あの暗殺者の言動に何かヒントはなかっただろうかと思い出すエヴァン。
「ノアも、何か気付いたことは無かった?」
「何も無いが、スピナ国のニンジャだということはわかった」
「やっぱり何もわかんない……………………え?」
その場の全員の視線がノアに集中する。
「なんであのニンジャが、スピナ国から来たって思ったの?」
「ニンジャの落とし物だ」
ノアはポケットから1枚のコインを取り出した。
「見たことのないコインだったから、昨夜どこのものか調べてみた。スピナ国の通貨だ」
「スピナ国……お姉様が婚約を結ぶはずだった……?」
「偶然とは思えないね」
ルチアは、レティシアが誘拐されてからのスピナ国の動向を思い返してみた。
顔合わせをすっぽかすとは、これまで築き上げてきた関係を無下にする行為だと非難してきたと聞いた。事情を説明しても、スピナ国が小国だからと馬鹿にしていると立腹し、最終的にはレティシアの代わりに第一王女リュミエールが欲しいと言っている、と。
「それって怪し過ぎない?」
話を聞いたルルが言う。
「絶対スピナ国の仕業よ! 最初からリュミエール様が欲しかった、ってやつよ!」
「ミエールお姉様が有能だからだわ……!」
許せない、とルチアは眉を吊り上げた。
「実際、ミエールお姉様はお父様よりも外交や政治の手腕に長けていらっしゃるもの。そんなミエールお姉様を手に入れたくなったのね!?」
「王族の中で唯一表舞台に出てくるリュミエール様の評判は、とても良いからね。美しく、聡く、時として冷酷な『氷の王女様』」
「ルチア様。本日、午後からスピナ国との会談があります。フェリクス王子もいらっしゃるようですが」
侍女の言葉にルチアは拳を突き上げ、踵を返した。
「ぶっ潰す!」
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