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第3話 死亡フラグ回避!え?母さんが恋人代わりになるって!?

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 オーク国「ヴィーハイゼン」は、山の中腹にある国。人口は一万人。そのほとんどがオークの兵士であり、彼らの世話をするエルフの女性も少数だが存在する。

 俺と母さんは縄で縛られ、さらに狼に似た大型の獣「ヴォルフ」の鞍に縛り付けられて国の外まで連れてこられた。

「あばよ、非国民共」

 俺達を連れてきた三人の兵士がそう言って唾を吐き、去って行った。かつてはオークロードたる俺の部下だった筈の兵士達。悔しいが仕方がない。

「とりあえず山を降りよう、母さん。降りる途中に山小屋がある。狩りの時に使う場所さ」

「そんな場所があるのね。ダー君は物知りね」

「いや、俺も使った事があるってだけだよ」

 俺は母さんの手を引き、山を降り始めた。母さんの手はすべすべで柔らかく、意識するとなんだか顔が熱くなった。

「あら? ダー君なんだか顔が赤いわ。お熱かしら。こっち向いて」

「えっ?」

 言われるままに母さんの方を向く。すると母さんは俺の両肩に手を添え、顔を近づけて来る。ち、近い! このままだと唇が......! 

 ぐああ! なんて可愛い顔なんだ! 大きな目に整った鼻筋! 透き通った青い瞳と輝く金色の髪! そして白い肌に桜色の唇! 長い耳! さらには大きすぎるおっぱいとその深い谷間! 全てが俺のドストライクだ! キスしたい! だけどダメだ! 親子でキスは駄目!

「ちょっと待って母さん! これ以上顔を近づけられると、俺......!」

「はい、おでこコッツン。うん、熱はないみたいね。ん? どうしたのダー君。顔がもっと赤くなっちゃった」

「なっ、ななな、なんでもない!」

 俺はプイッと顔を背ける。心臓の音がエンジン音みたいに響く。やばい。俺はやっぱり、母さんを異性として意識してしまっている。

 オークにとっては親だろうが何だろうが雌は雌。気の赴くままに孕ませるだけだ。それは種族内では常識。

 だが俺には人間だった頃の記憶がある。その道徳観念から言うと、母親を好きになるなんて事はアウトだ。早くこの気持ちにはケリをつけなくちゃならないだろう。

「クスッ。おかしなダー君ね。もしかしてお母さんの事、大好きなの?」

 母さんは笑いながら、名残り惜しそうに顔を離す。

「好きって、いや、そりゃまぁ母親としてね! 当たり前だろ! 大好きだよ! でもそれだけだからね!」

 俺は照れ隠しに言ったつもりだったが、普通に恥ずかしい事をサラッと言った気がする。

「あはっ、やっぱりね。今のダー君ならきっとそう言ってくれると思ったわ。お母さんもね、ダー君の事が大好き。でも母親としてって......それ以外に何があるの?」

 悪戯っぽい笑みで俺の顔を覗き込む母さん。これってもしかして、わかってて言ってないか?

「べっ、別に! 深い意味はないよ!」

「ふーん、そうなの? あ、もしかして......お母さんを異性として意識しちゃう、とか?」

 ギクッ。結構核心に近いところ突かれた。

「ち、ちげぇし!」

 ドッドッドッドッ。鼓動が早くなる。真意を知られるのはまずい気がする。って言うか恥ずかしい。

「そうなの? でもオークってみんな生殖本能が強いじゃない? 誰でも構わない、みたいな。恋人とか、妻って概念もないみたいだし。だけどお母さんは、ダー君には見境なくそんな事はしてほしくないな。だから、しばらくはお母さんで我慢してね」

「へ? それってどう言う......」

 すると母さんは、俺の耳元に唇を寄せてそっと囁いた。

「お母さんを恋人代わりにしてもいいって事。だけどそれは、ダー君が本当に好きな人が出来るまでよ。きちんと恋をして、恋人を作って欲しい。それまでは、お母さんを代役にしてもいいわ。もちろん、嫌じゃなければだけど」

 囁き声に、耳がゾクゾクした。俺の中の道徳観念が音を立てて崩れていく。

「えっと......じゃあ、そうするよ」

「クスッ。やっぱりお母さんを異性として見ちゃってたんだね。しょうがないなぁ。はい、じゃあ今からお母さんはダー君の恋人役です。なんて呼びたいですか?」

 そう言ってウインクする母さん。死ぬほど可愛い。

「シェファール......いや、シェファって言うのはどうかな」

 俺は言ってて照れ臭くなり、鼻の頭をポリポリと掻く。

「シェファ! 素敵ね! 嬉しいわ、ダー君!」

 そう言って抱きついて来る母さん。柔らかい膨らみが、ムギュッと押しつけられる。理性が崩壊しそうだ。

「え、ええっと......それじゃあ進もうか、シェファ」

「うん!」

 俺は再び母さんの手を引いて歩き出す。小一時間程歩くと、ようやく山小屋が見えた。木造平家の中々立派なコテージ。ベッドやキッチン、トイレに風呂もある。

 このエンシェントソーサリー・クエストの世界観は、中世ヨーロッパ的なファンタジー世界だが、魔術機構と呼ばれる道具達が電化製品的な役割を担っている。トイレも魔術機構により水洗。風呂にはシャワーもある。

「素敵な山小屋ね。小屋って言うより家みたい」

「だろ? 食料品もたっぷりあるし、しばらくはここの備えだけで生活出来るよ。さぁ、入って」

 俺はベルトに付いた革製の小物入れから、山小屋の鍵を取り出してドアを開けた。

「うわぁ、広いね!」

「でしょ? 奥の部屋が寝室で、右がトイレ、左がお風呂だよ」

 室内設備の説明をし、それから母さんをリビングのテーブルに着かせた。

「今、お茶でも淹れるよ」

「ありがとう、ダー君」

 それからしばらく、お茶を飲みながら母さんと話をした。これまでの事と、これからの事だ。

 父の言葉を思い出す。エルフ村への焼き討ちは、食い止める事が出来なかった。恐らくガオンハルトが後を引き継ぎ、村へ攻撃を仕掛けるだろう。

 とりあえず、俺と母さんは追放された為、エルフ村への焼き討ちへは参加しない。つまり勇者エステルの復讐の対象にはなり得ない。死亡フラグを回避出来た訳だ。

 だけど、本当にそれでいいんだろうか。あのエルフ達を、みすみす見殺しにするのか俺は。前世において、あれ程大好きだったエルフ達が現実にいるのに、仲良くならなくていいのか?

 母さんだって、同族が襲われるのは嫌な筈だ。なら、答えはほとんど出ている。

「難しい顔をして、どうしたのダー君」

 母さんが微笑む。この笑顔を曇らせるような事はしたくない。

「シェファ......俺はエルフを守りたい。もうオーク族から追放された自由の身だ。なら、何をしたって自由。反乱も自由だ。一休みしたら、もう一度あのエルフ村に行こう。彼らを救うんだ」

 俺の提案に、母さんは両手を合わせて目を輝かせた。

「まぁ! 偉いわねダー君! 私もね、そうしたいと思ってたの。百点満点よ! チューしてあげる!」

 母さんは椅子から立ち上がってテーブルに両手を突き、向かい側に座る俺の頬にキスをした。

「うわ......!」

 俺は思わず、母さんにキスされた部分に手を触れた。

「ねぇダー君。うわって何!? もしかして、嫌だった?」

 拗ねた顔を見せる母さん。そんな様子もまた可愛い。

「いや、違うんだ。その、びっくりしたのと嬉しいのがごっちゃになって」

「あら、嬉しい? じゃあもっとしてあげる!」

「いやいや、充分! もう充分だよ!」

 俺はワーワー騒ぎながら結局おでこにキスをしてもらい、その後母さんと交代でお風呂に入った。そして休息の為、ベッドで仮眠を取る。

 オーク軍が兵を揃えて出陣するのは、経験上恐らく明日の午後。仮眠から目覚めた俺達は、早速村へと向かう事にした。



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