15 / 35

第14話 覚醒するオーク達。

しおりを挟む
 その昔。オークは皆、エルフだった。

 我欲に駆られ、略奪を始めたオーク達。彼らはその邪悪な行いから光の女神ルクスの加護を外され、新たに闇の女神テネブラエの加護を受ける事となった。

 魔族となったオーク達はその貪欲さから、姿を豚のように変化させていった。そして現在に至る。

 俺はドノナストの王都「ストーリア」の中央広場にオーク達を集めた。まだ舗装などはしていない剥き出しの地面ではあるが、かなり広い広場だ。ニ万人くらいは余裕で入る。

 俺は広場中央にあるステージに上がり、七千人のオークを前に演説を始めた。エルフ達も好奇心から結構集まっている。って言うより、国民みんな集まってるなこれ。

「エルフ王国ドノナストに属するオークの戦士達よ、聞け! 俺は今日まで君達の行いを、密かに観察して来た。そして結論に至った。君達はもう、魔族などではないと! 善なる人族であると! つまり、オークの先祖であるエルフへと、先祖帰りする時が来たのだ。その為には俺の魔術による、魂の覚醒が必要だ。これより行う大魔術! 【魂の覚醒】をしかと見よ! 対象はオークのみ! 範囲は広場全域だ! 絶対に広場から出るなよ! では行くぞ! 【魂(アウェイキング)の覚醒(オブ・ザ・ソウル)】!」

 俺の全身が緑に輝き、その光は広範囲に広がっていく。

「うああああっ!」

 肉体の変化に驚愕し、身悶えするオーク達。彼らの容貌は、みるみる男性エルフのそれに変化していく。

 細身の体に金色の髪。目の色や体格、容姿にはもちろん個人差があるが、間違いなく彼らはエルフとなった。

「こ、これは......! ああ、なんと素晴らしい!」

 歓声をあげる元オークの男性エルフ達。そして彼らを抱き起すのは女性エルフ達だ。中には抱き合ったりする者もいた。これまで助け合ってきた中で、恋仲になっているオークとエルフがいても不思議はない。そう言う事だろう。

「皆、生まれ変わったようだな! それが君達の本来の姿! エルフの姿だ! たった今より、君達は闇の女神テネブラエの加護を外れ、光の女神ルクスの加護を受ける事となる。これまで苦手だった農作業などの命を育む仕事、武器以外の道具を作る仕事、そう言った事もすんなり出来るようになる筈だ! そして何より! 俺の仲間のエルフはレベルが十倍になる!」

 オオオーッと歓声が上がる。

「本当だ! 体が軽い!」

「ダーザイン陛下! 万歳!」

 広場は歓喜の渦に包まれる。

「よし! 盛り上がって来たな! ならば早速宴と行こう! 各自、家から好きなつまみと酒を持ってこい! 別に準備はしちゃいないが、この広場で好きなだけ騒いでくれ! 家で飲むより楽しい筈だ!」

 俺のその一言で、広場はあっという間に宴会場。飲めや歌えの大騒ぎだ。俺がステージを降りると、そばに控えていた母さんとナディア、そしてノーティアスが俺を拍手で迎える。

「立派な演説だったわ、ダー君」

「これで一層、皆の団結も強固なものとなったでしょう」

「シェファ、ナディア。ありがとう。うまくいって良かったよ」

 俺は母さんとナディアを両腕で抱き寄せた。そして彼女達の頬にキスをする。

「国家兵団も大幅にパワーアップですね。こんな光景を目の当たりに出来るなんて、夢にも思いませんでした。あの時、オーク達を殺さなくて本当に良かった」

 そう言って微笑むノーティアス。俺は母さんとナディアを解放し、ノーティアスを抱きしめる。そして彼女の頬にもキスをした。

「本当にその通りだ。君の判断は正しかったよ。ありがとう」

「うふふ。御礼は今度、僕と二人っきりのデートって事で良いですよ」

 悪戯っぽく微笑むノーティアス。俺は母さんとナディアをチラッと見るが、特に不機嫌にはなっていないようだ。

「ああ、約束しよう。君とデートする」

「本当ですか!? やったぁ! 言ってみるものですね!」

 両手を顔の前で合わせ、嬉しそうに踊り出すノーティアス。中々ダンスが上手い。そして大きなおっぱいが揺れている。

 クッ......! 踊るチビ爆乳のボクッ娘......! くっそ可愛いぜ......! 

「あらノーティアス、踊るの? じゃあ私も!」

「ふふっ、では私もご一緒に」

 母さんとナディアもノーティアスとすっかり打ち解けている様子で、仲良く踊り始めた。ちゃんと息が合っている。そう言えば、エルフは歌も踊りも得意と聞いた事がある。豊穣を祝う宴では、女神や精霊に感謝して歌と踊りを捧げるらしい。

「さぁ、ダーザイン様も」

 ノーティアスに踊りを誘われるが、俺はリズム感ゼロ。前世も含め、これまでダンスなんて出来た試しがない。

「いや、俺はいいよ」

「ダー君、そんな事言わずに踊りましょうよ」

「そうですよ陛下。私が教えて差し上げますから」

 俺はナディアの指導を受けながら不恰好に踊る。上手にとは行かないが、なんだかんだで楽しい。

 だが美女達とそんな風に戯れていたのも、ほんの束の間。各々の場所で盛り上がっていた元オークの男性エルフ達が、こぞって俺の周りに集まり始めた。

「ダーザイン陛下! 本当に、なんと御礼を申し上げたら良いか......!」

「俺、この娘と結婚します! そしてきっと幸せな家庭を築いてみせます!」

 皆口々に感謝を述べてくる。俺はきっちり全員に握手と激励を返して行った。全員の挨拶が終わる頃には、もうすっかり日が暮れていた。

「ふぅ、よし。そろそろ解散するか」

 俺は颯爽とステージに飛び乗り、両手を広げた。

「みんな注目! これで我がドノナスト王国は、完全なるエルフの王国となった。明日、俺は人間の王国ルーデウスに赴く! そこで色々交渉してくるつもりだ! この国はさらに発展する! どうか期待していてくれ! そして今夜は記念すべき夜! みんな思い思いに楽しく過ごしてくれ! では、解散!」

 俺の号令を合図に、解散していくエルフ達。

「ねぇダー君、もしかして明日ルーデウスに行くのって......」

 母さんが不安気な顔で俺の袖を引っ張る。

「ああ。ノーティアスと一緒に行くよ。二人きりのデートを約束してしまったからね」

「ええー、残念。私も行きたかったなぁ......お土産、いっぱい買って来てね」

 ちょっと寂しそうに笑う母さん。少し申し訳ない気もするが、約束は約束だ。なにせこの辺にデートスポットは皆無。ルーデウスに行くくらいしか楽しそうな事が思いつかない。

「陛下、私にも是非お土産を......愛を込めてお願いします」

 ナディアも俺の顔を両手で挟み、真っ直ぐな目で懇願して来た。

「わかった。シェファの分とナディアの分、間違いなく買ってくるよ。期待しててくれ」

「クスッ。お二人とも、期待しててくださいね!」

 ドヤ顔で俺の腕にしがみつくノーティアス。俺はちょっとヒヤヒヤしたが、三人は仲良さげに笑い合う。どうやら俺を取り合ってバトル、みたいな展開ではないようだ。

 どちらかと言うと、仲良く分け合っている感じである。

「んじゃ、とりあえず帰ろうか」

 俺が先立って王城に向かうと、三人の美女達も和気あいあいと付いて来る。

「今夜の夕食は如何致しますか?」

 戻る道すがら、ナディアがそう尋ねる。

「広場でみんなが持ち寄ったものを、結構つまんだからなぁ。あまり腹は減ってないんだ。みんなはどうだ?」

「うーん、確かにそうね」

「私も、充分いただきました」

「ですね! じゃあ今夜はもう、ベッドインって事でいいんじゃないでしょうか」

 そう言って嬉しそうに胸を擦り付けてくるノーティアス。

「うん、それもそうだな。少し疲れたし、もう寝るとしよう」

 俺は「くああーっ」とあくびをする。

「おっと、そう簡単には寝かせませんよ、陛下」

「うふふ、そうよ。ダー君はもっとダンスを練習しないとね」

 ナディアと母さんも俺に胸を擦り付けてくる。

「ダーザイン様も筋はいいと思いますよ。特に腰の動きは、とても上手でした」

 正面に回ったノーティアスが、リズミカルに踊ってみせる。

「ふふっ、楽しそうだな。やれやれ、今夜も寝不足になりそうだ」

 俺は肩をすくめつつ、三人の美女と共に帰路に着いたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...