16 / 35
第15話 人間国ルーデウス。
しおりを挟む
「行ってらっしゃいませ、ダーザイン陛下!」
大勢の国民が、俺とノーティアスの出立を見送りに来てくれた。王都ストーリアにはまだ「怪物(モンスター)」避けの外壁も何も作られてはいない為、もう家の間とか道のところにびっしりエルフが詰めかけている。
「見送りありがとう、みんな! 行ってくる!」
俺は馬に跨ったまま、大声で叫んだ。後ろにはノーティアスが乗っている。彼女は俺の腰をしっかりと掴んで密着していた。背中に柔らかいおっぱいの感触が、むにゅむにゅと伝わってくる。思わず伸びそうになる鼻の下。だが俺は必死に真顔を保った。
群衆の中に混じっていた母さんとナディアが、俺達の側まで駆け寄ってくる。
「ダー君! 体には充分気をつけてね。それから、知らない人にはついて行かない事。生水も飲んじゃダメよ。それから......」
「シェファ、俺はもう二十歳だよ。大丈夫だって」
「だって......心配なんだもの。やっぱりお母さんも行くわ!」
涙目になって馬に乗り込もうとする母さん。
「本当に大丈夫だから。俺がいない間、ドノナストを頼むよ。ちゃんとお土産は買ってくるからさ」
「ううー。わかったわよう......」
不満そうではあるが、母さんはようやく納得してくれた。
「陛下、ルーデウスの王都リーファスには、【裁定者】と呼ばれる強力な魔術師がいるそうです。彼は能力の高い者を観察し、犯罪を犯す危険がないか常に見張っているとの事。陛下が犯罪など犯すわけは有りませんが、人間のルールは私達エルフには分かりません。ふとした事が、犯罪とみなされる可能性もあります。くれぐれも、お気をつけて」
ナディアがそう言って、馬上にいる俺の手にキスをする。
「ああ、わかった。気をつけるよ。忠告ありがとう、ナディア」
「ああー! ナディアずるい! 私も!」
母さんも俺の手を取りキスをした。
「お二人とも、もうよろしいですか?」
後ろに乗っているノーティアスが、やんわりとした口調で二人を急かす。
「ええ、もう大丈夫よ。二人とも、気をつけてね」
「ああ。伝えるべき事は伝えた。旅の無事を祈っているぞ」
母さんとナディアはそう言って、微笑みながら俺とノーティアスに手を振った。
「さぁ、では参りましょうダーザイン様。僕と二人っきりのデートに」
「ああ、行こう」
俺は馬の腹を蹴り、みんなに手を振りながら王都ストーリアを後にした。そして一路北西を目指す。
人間の国についての情報源は、時々エルフの村を訪れていた行商人だ。彼はフォレス村がドノナスト王国に発展した今でも訪れていた。
エルフの作る木製の弓矢や防具、工芸品、麻や動物の皮で作られた衣服、そして蜂蜜。そう言ったものが人間の間では高く取り引きされるらしく、物々交換をして行くのだ。
行商人がこちらに差し出すのは首飾りや指輪等、アクセサリーの形をした「魔術道具」。そしてゼンマイ動力等の機械と魔術が組み込まれた「魔術機構」が主な品。これらは魔術のような不思議な効果を生み出し、日常生活の役に立つ。
例えば時間を示す時計も、この世界では魔術機構。常に正確な時間を、ほぼ永久に示してくれる。
それらの道具を手に入れた事で、エルフの文化レベルもかなり向上している。だが、今の所時計はまだ手に入れていない。今日は是非ともゲットしたいところだ。
「人間国ルーデウスの王都リーファスまでは、馬で一か月程かかるそうですね。となると、僕とのデートも一日ではなく一か月以上はかかる計算です。途中の村や町で、いっぱいイチャイチャしましょうね」
ノーティアスが嬉しそうに言う。
「ふふっ。そうはならないと言っただろ? まぁ、王都には何日か滞在するかも知れないけどな。それじゃあ、そろそろ加速するぞ。しっかり掴まっててくれ」
「はぁい♡」
ノーティアスが俺の腰にギュギュッとしがみつく。くあ、おっぱいの感触ヤバイ......! いかんいかん、集中しなくては。俺は前傾姿勢になり、愛馬スラストの首に手を触れる。スラストは、元々フォレス村で飼われていた馬。俺との相性は抜群で、ナディアから譲ってもらったのだ。
「さて、それじゃあ頼むぞスラスト。【活力最大活性(フル・バイタライズ)】!【強靭(ストロング)な肉体(ボディ)】!」
俺の右手が緑に光り、スラストの体に古代魔術の力が注ぎ込まれる。彼は力強くいななき、一気に加速した。
「おおッ! 想像以上のスピード!」
「きゃああああぁーっ!」
周囲の景色があっという間に流れていく。これなら数時間もすればリーファスに到着するだろう。
それにしても......ボーイッシュなノーティアスの悲鳴、女の子らしくて普段とのギャップがすごい。
そう、なんというか......めちゃくちゃ可愛い!
キャーキャー言うノーティアスの悲鳴は到着まで続いた。時計がないので正確な時間はわからないが、おそらく体感で三時間程だ。
「着いたぞ、ノーティアス」
「ふああ! これが王都リーファス......!」
目をキラキラさせるノーティアス。俺も感動していた。高い外壁の向こう、遥か遠くにに見える巨大な王城。ちらほら見える、時計台や塔、教会。ぶっちゃけ町の中はほとんど見えないが、壁の高さだけでもかなり壮観だった。
出入り口はアーチ状になっていて、門の前には左右三名ずつ、合わせて六名の兵士が番をしている。
大陸の北側に位置する王都リーファスは、東西と南、全部で三箇所に入り口がある。ここは南側の入り口だ。
俺は馬をゆっくりと進め、門の前に到着。馬上から番兵に挨拶をする。
「初めまして。私は南東にあるエルフの村【フォレス】よりやって来た者です。名前はダーザインといいます。この者はノーティアス。私の従者です。この度フォレスは国となり、ドノナスト王国を名乗る事となりました。以後、お見知り置きを」
すると、おそらく番兵をまとめているらしき初老の男性が、俺達のそばに近寄って来る。
「エルフですか......! やはり、噂に違わず美しいお姿。フォレス村が、今後はドノナスト王国となるのですね。かしこまりました。陛下にはお伝えしておきます。ところで今日は一体どのような御用件ですか?」
いかめしい外見に似合わず、丁寧な物腰。素晴らしい対応だ。兵士に対する教育の、質の高さがうかがえる。国王の人柄も、きっと良いのだろう。
「今日は買い物と観光です。もしかすれば、技術者に声をかけて、我が国との交渉を行うかも知れません」
そう伝えると、初老の番兵は微笑む。
「なるほど、了承致しました。では馬を降り、こちらの石板に手を置いて下さい。そちらの女性もお願い致します」
言われた通りに手を置く。続けてノーティアスもそれにならう。
「この石版には魔術が込められていて、邪(よこしま)な考えを持つ者を我々に知らせます。はい、もう結構ですよ。お二人とも問題ありません。どうぞ、お通り下さい。ただし、王都内では騎乗せずに徒歩で移動をお願い致します。馬を預ける場所もいくつかございますので、詳しくは案内人にお尋ね下さい。門をくぐってすぐの場所に、案内所がございます」
彼はニコリと笑い、手を門の向こうへと差し伸べた。俺とノーティアスは会釈をし、馬を引く。
「では、どうぞごゆっくりと観光をお楽しみ下さい。私の名前は、クルーゲンです。身元の証明を尋ねられたら、その名を出すと良いでしょう」
「ありがとうございます。クルーゲンさん」
俺は番兵のクルーゲン氏と握手を交わし、他の番兵にも挨拶をして門をくぐる。ノーティアスも同じようにし、俺の腕にしがみついて来た。
少し歩くと、クルーゲン氏が言っていた案内所があった。小さな木造の小屋で、上に「案内所」と看板が出ている。入り口はドアが一つ。その前に二、三人が順番待ちをしている。周囲の視線を感じながら、俺達もそこへ並ぶ。
「まずは馬を預けよう。それから宿を決めて、色々な店を回ろうと思う」
「宿を取るんですか!? じゃあ、一泊出来ますね!」
ウキウキするノーティアス。
「いや、念の為さ。泊まらないかも知れない」
「ええー。せっかく二人だけでイチャイチャ出来ると思ったのにぃ」
赤裸々なノーティアスの発言に、俺はドキリとする。周りの人間達が、ヒソヒソと話し合っているのが聞こえる。俺は覚醒してからと言うもの、あらゆる感覚が鋭い。それは聴覚もだ。少し耳を澄ましてみる。
「おい、見ろよあの耳! きっとエルフだ。なんて美しいんだろう」
「そうね。素敵な男性だわ。あの女の子が羨ましい」
「いやいや、羨ましいのは男の方だろう? あのエルフの女の子、可愛いくておっぱいも超デカい。最高じゃないか。それに今、イチャイチャって......きっと今日エッチな事をするんだぜ。羨ましいなぁ」
「あなたって最低ね。さようなら」
「おい、ちょっと待てよ!」
なんて事だ。罪のないカップルを破滅に追いやってしまったようだ。
「ノーティアス、そう言う話はこっそりするものだぞ」
「あはっ。ごめんなさい」
自分の頭をコツンとし、ウインクしながら舌をぺろりと出すノーティアス。クッ......! なんて可愛さなんだ! やっぱり一泊するか......!
なんてやりとりをしていると、俺達の順番が回ってきた。俺は案内所のドアをノックする。すると中から、可愛らしい少年が顔をのぞかせた。歳の頃は十二歳くらいだろうか。
「はぁい、お客さんですね。僕は案内人のケイト! 若くても経験は豊富ですよ。よろしくね! 案内料は一時間で二千レンです。精算は案内終了後に経過時間で計算します。よろしいですか?」
「ああ、構わないよ。俺はダーザイン。こっちはノーティアスだ。よろしく頼む。ただ、今は現金がないんだ。途中で品物を売ってお金を作るよ。それでいいかい?」
「ええ、いいですよ! まずはどこから行きますか?」
「まずは馬を預けたい。その次は宿だ」
俺の要望を伝えると、ケイトは人差し指をピンと立てる。
「それなら、馬を預かってくれるうってつけの宿があります。そこへ参りましょう」
「そうなのか! 助かるよ。それじゃあ頼む」
「お任せ下さい! では、出発!」
ケイトは半ズボンに革靴、そして半袖のワイシャツにサスペンダーと言う、いかにも少年らしい服装で、意気揚々と前を歩いて行く。
俺とノーティアスもその後へ続く。少し歩いた所で、ノーティアスが俺の袖をクイッと引っ張り、耳打ちして来た。
「ダーザイン様、あの子、気を付けた方がいいです」
あの子とは、ケイトの事だろう。
「何故だ? 根拠はあるのか?」
するとノーティアスは首を振る。
「いえ、単なる勘です。ですが、僕の勘は当たるんです」
確かに、オークを殺さなかったノーティアスの判断は結果として正しかった。
「わかった。じゃあ気をつけるよ」
「はい!」
ノーティアスはニコッと微笑み、おっぱいを腕にむにゅむにゅと押し付けて来た。
うーん、やっぱり一泊しようかな......。
大勢の国民が、俺とノーティアスの出立を見送りに来てくれた。王都ストーリアにはまだ「怪物(モンスター)」避けの外壁も何も作られてはいない為、もう家の間とか道のところにびっしりエルフが詰めかけている。
「見送りありがとう、みんな! 行ってくる!」
俺は馬に跨ったまま、大声で叫んだ。後ろにはノーティアスが乗っている。彼女は俺の腰をしっかりと掴んで密着していた。背中に柔らかいおっぱいの感触が、むにゅむにゅと伝わってくる。思わず伸びそうになる鼻の下。だが俺は必死に真顔を保った。
群衆の中に混じっていた母さんとナディアが、俺達の側まで駆け寄ってくる。
「ダー君! 体には充分気をつけてね。それから、知らない人にはついて行かない事。生水も飲んじゃダメよ。それから......」
「シェファ、俺はもう二十歳だよ。大丈夫だって」
「だって......心配なんだもの。やっぱりお母さんも行くわ!」
涙目になって馬に乗り込もうとする母さん。
「本当に大丈夫だから。俺がいない間、ドノナストを頼むよ。ちゃんとお土産は買ってくるからさ」
「ううー。わかったわよう......」
不満そうではあるが、母さんはようやく納得してくれた。
「陛下、ルーデウスの王都リーファスには、【裁定者】と呼ばれる強力な魔術師がいるそうです。彼は能力の高い者を観察し、犯罪を犯す危険がないか常に見張っているとの事。陛下が犯罪など犯すわけは有りませんが、人間のルールは私達エルフには分かりません。ふとした事が、犯罪とみなされる可能性もあります。くれぐれも、お気をつけて」
ナディアがそう言って、馬上にいる俺の手にキスをする。
「ああ、わかった。気をつけるよ。忠告ありがとう、ナディア」
「ああー! ナディアずるい! 私も!」
母さんも俺の手を取りキスをした。
「お二人とも、もうよろしいですか?」
後ろに乗っているノーティアスが、やんわりとした口調で二人を急かす。
「ええ、もう大丈夫よ。二人とも、気をつけてね」
「ああ。伝えるべき事は伝えた。旅の無事を祈っているぞ」
母さんとナディアはそう言って、微笑みながら俺とノーティアスに手を振った。
「さぁ、では参りましょうダーザイン様。僕と二人っきりのデートに」
「ああ、行こう」
俺は馬の腹を蹴り、みんなに手を振りながら王都ストーリアを後にした。そして一路北西を目指す。
人間の国についての情報源は、時々エルフの村を訪れていた行商人だ。彼はフォレス村がドノナスト王国に発展した今でも訪れていた。
エルフの作る木製の弓矢や防具、工芸品、麻や動物の皮で作られた衣服、そして蜂蜜。そう言ったものが人間の間では高く取り引きされるらしく、物々交換をして行くのだ。
行商人がこちらに差し出すのは首飾りや指輪等、アクセサリーの形をした「魔術道具」。そしてゼンマイ動力等の機械と魔術が組み込まれた「魔術機構」が主な品。これらは魔術のような不思議な効果を生み出し、日常生活の役に立つ。
例えば時間を示す時計も、この世界では魔術機構。常に正確な時間を、ほぼ永久に示してくれる。
それらの道具を手に入れた事で、エルフの文化レベルもかなり向上している。だが、今の所時計はまだ手に入れていない。今日は是非ともゲットしたいところだ。
「人間国ルーデウスの王都リーファスまでは、馬で一か月程かかるそうですね。となると、僕とのデートも一日ではなく一か月以上はかかる計算です。途中の村や町で、いっぱいイチャイチャしましょうね」
ノーティアスが嬉しそうに言う。
「ふふっ。そうはならないと言っただろ? まぁ、王都には何日か滞在するかも知れないけどな。それじゃあ、そろそろ加速するぞ。しっかり掴まっててくれ」
「はぁい♡」
ノーティアスが俺の腰にギュギュッとしがみつく。くあ、おっぱいの感触ヤバイ......! いかんいかん、集中しなくては。俺は前傾姿勢になり、愛馬スラストの首に手を触れる。スラストは、元々フォレス村で飼われていた馬。俺との相性は抜群で、ナディアから譲ってもらったのだ。
「さて、それじゃあ頼むぞスラスト。【活力最大活性(フル・バイタライズ)】!【強靭(ストロング)な肉体(ボディ)】!」
俺の右手が緑に光り、スラストの体に古代魔術の力が注ぎ込まれる。彼は力強くいななき、一気に加速した。
「おおッ! 想像以上のスピード!」
「きゃああああぁーっ!」
周囲の景色があっという間に流れていく。これなら数時間もすればリーファスに到着するだろう。
それにしても......ボーイッシュなノーティアスの悲鳴、女の子らしくて普段とのギャップがすごい。
そう、なんというか......めちゃくちゃ可愛い!
キャーキャー言うノーティアスの悲鳴は到着まで続いた。時計がないので正確な時間はわからないが、おそらく体感で三時間程だ。
「着いたぞ、ノーティアス」
「ふああ! これが王都リーファス......!」
目をキラキラさせるノーティアス。俺も感動していた。高い外壁の向こう、遥か遠くにに見える巨大な王城。ちらほら見える、時計台や塔、教会。ぶっちゃけ町の中はほとんど見えないが、壁の高さだけでもかなり壮観だった。
出入り口はアーチ状になっていて、門の前には左右三名ずつ、合わせて六名の兵士が番をしている。
大陸の北側に位置する王都リーファスは、東西と南、全部で三箇所に入り口がある。ここは南側の入り口だ。
俺は馬をゆっくりと進め、門の前に到着。馬上から番兵に挨拶をする。
「初めまして。私は南東にあるエルフの村【フォレス】よりやって来た者です。名前はダーザインといいます。この者はノーティアス。私の従者です。この度フォレスは国となり、ドノナスト王国を名乗る事となりました。以後、お見知り置きを」
すると、おそらく番兵をまとめているらしき初老の男性が、俺達のそばに近寄って来る。
「エルフですか......! やはり、噂に違わず美しいお姿。フォレス村が、今後はドノナスト王国となるのですね。かしこまりました。陛下にはお伝えしておきます。ところで今日は一体どのような御用件ですか?」
いかめしい外見に似合わず、丁寧な物腰。素晴らしい対応だ。兵士に対する教育の、質の高さがうかがえる。国王の人柄も、きっと良いのだろう。
「今日は買い物と観光です。もしかすれば、技術者に声をかけて、我が国との交渉を行うかも知れません」
そう伝えると、初老の番兵は微笑む。
「なるほど、了承致しました。では馬を降り、こちらの石板に手を置いて下さい。そちらの女性もお願い致します」
言われた通りに手を置く。続けてノーティアスもそれにならう。
「この石版には魔術が込められていて、邪(よこしま)な考えを持つ者を我々に知らせます。はい、もう結構ですよ。お二人とも問題ありません。どうぞ、お通り下さい。ただし、王都内では騎乗せずに徒歩で移動をお願い致します。馬を預ける場所もいくつかございますので、詳しくは案内人にお尋ね下さい。門をくぐってすぐの場所に、案内所がございます」
彼はニコリと笑い、手を門の向こうへと差し伸べた。俺とノーティアスは会釈をし、馬を引く。
「では、どうぞごゆっくりと観光をお楽しみ下さい。私の名前は、クルーゲンです。身元の証明を尋ねられたら、その名を出すと良いでしょう」
「ありがとうございます。クルーゲンさん」
俺は番兵のクルーゲン氏と握手を交わし、他の番兵にも挨拶をして門をくぐる。ノーティアスも同じようにし、俺の腕にしがみついて来た。
少し歩くと、クルーゲン氏が言っていた案内所があった。小さな木造の小屋で、上に「案内所」と看板が出ている。入り口はドアが一つ。その前に二、三人が順番待ちをしている。周囲の視線を感じながら、俺達もそこへ並ぶ。
「まずは馬を預けよう。それから宿を決めて、色々な店を回ろうと思う」
「宿を取るんですか!? じゃあ、一泊出来ますね!」
ウキウキするノーティアス。
「いや、念の為さ。泊まらないかも知れない」
「ええー。せっかく二人だけでイチャイチャ出来ると思ったのにぃ」
赤裸々なノーティアスの発言に、俺はドキリとする。周りの人間達が、ヒソヒソと話し合っているのが聞こえる。俺は覚醒してからと言うもの、あらゆる感覚が鋭い。それは聴覚もだ。少し耳を澄ましてみる。
「おい、見ろよあの耳! きっとエルフだ。なんて美しいんだろう」
「そうね。素敵な男性だわ。あの女の子が羨ましい」
「いやいや、羨ましいのは男の方だろう? あのエルフの女の子、可愛いくておっぱいも超デカい。最高じゃないか。それに今、イチャイチャって......きっと今日エッチな事をするんだぜ。羨ましいなぁ」
「あなたって最低ね。さようなら」
「おい、ちょっと待てよ!」
なんて事だ。罪のないカップルを破滅に追いやってしまったようだ。
「ノーティアス、そう言う話はこっそりするものだぞ」
「あはっ。ごめんなさい」
自分の頭をコツンとし、ウインクしながら舌をぺろりと出すノーティアス。クッ......! なんて可愛さなんだ! やっぱり一泊するか......!
なんてやりとりをしていると、俺達の順番が回ってきた。俺は案内所のドアをノックする。すると中から、可愛らしい少年が顔をのぞかせた。歳の頃は十二歳くらいだろうか。
「はぁい、お客さんですね。僕は案内人のケイト! 若くても経験は豊富ですよ。よろしくね! 案内料は一時間で二千レンです。精算は案内終了後に経過時間で計算します。よろしいですか?」
「ああ、構わないよ。俺はダーザイン。こっちはノーティアスだ。よろしく頼む。ただ、今は現金がないんだ。途中で品物を売ってお金を作るよ。それでいいかい?」
「ええ、いいですよ! まずはどこから行きますか?」
「まずは馬を預けたい。その次は宿だ」
俺の要望を伝えると、ケイトは人差し指をピンと立てる。
「それなら、馬を預かってくれるうってつけの宿があります。そこへ参りましょう」
「そうなのか! 助かるよ。それじゃあ頼む」
「お任せ下さい! では、出発!」
ケイトは半ズボンに革靴、そして半袖のワイシャツにサスペンダーと言う、いかにも少年らしい服装で、意気揚々と前を歩いて行く。
俺とノーティアスもその後へ続く。少し歩いた所で、ノーティアスが俺の袖をクイッと引っ張り、耳打ちして来た。
「ダーザイン様、あの子、気を付けた方がいいです」
あの子とは、ケイトの事だろう。
「何故だ? 根拠はあるのか?」
するとノーティアスは首を振る。
「いえ、単なる勘です。ですが、僕の勘は当たるんです」
確かに、オークを殺さなかったノーティアスの判断は結果として正しかった。
「わかった。じゃあ気をつけるよ」
「はい!」
ノーティアスはニコッと微笑み、おっぱいを腕にむにゅむにゅと押し付けて来た。
うーん、やっぱり一泊しようかな......。
69
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる