【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

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第33話 白金の不安と悪夢。

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「よぉし! 祝杯だ! 」

 銀杏と共に屋台や居酒屋を周り、白金は祝杯をあげまくった。

 銀杏は酒に弱いのでお茶を飲んでいたが、周囲のワイワイとした雰囲気を楽しんでいるようだった。

「ふふっ!楽しいのう。ありがとう白金。これこそ、わしが望んでいた都じゃ」

 そう言って頭を白金の肩に預ける銀杏。そっと髪を撫でてやると、嬉しそうに頭を擦り付けてくる。

「うー、気持ちいい♡ 白金の指って、どうしてこんなに気持ちいいんじゃろうな♡」

「愛情込めて撫でてるからな......お、鐘が鳴った。もう結構遅い時間だな。そろそろ帰るか。おやじ、お勘定してくれ」

「毎度! お気をつけて!」

 金を払って帰路に着く。足がふらつく。調子に乗って飲みすぎたかも知れない。

「大丈夫か、白金。歩けるか?」

「ああ、大丈夫だ。俺たちの家は、こっちだぜ」

 そう、今回新たに、白金と銀杏の二人の住まいも建設していた。これも銀杏が望んでいた事だ。

 ちなみに亜水と葉月、日凛の家に、ドラザエモンは正式に家族として迎えられた。日凛の弟、と言うポジションだ。

 木蓮と累火にも、新たな家をあたえた。元々彼らに親は無く、二人暮らしだったらしい。そう言えば木蓮は累火を抱いて飛び去ってしまったが、その後どうなったのだろうか。

 二人の新居に到着する。さほど大きくはないが、充分な広さだ。

「うわぁ......素敵じゃのう」

「だろ? ここならいくら大声出しても大丈夫だぜ。好きなだけイチャつけるぞ」

「そ、そうじゃな......♡」

 恥ずかしそうに目を逸らす銀杏。だが繋いでいた手に、キュッと力がこもる。喜んでいるようだ。

 家の中に入るなり、二人は抱きしめあい、唇を重ねる。

「温泉もあるんだ。行こうぜ」

「温泉か、いいのう♡」

 白金の「二言呪・温泉」により、各家庭には温泉が湧き出している。当然ではあるが、いつでも温かいのが有り難い。

「ふぅー、極楽極楽♡」

「ああ、本当だな」

 軽くかけ湯で体を洗い、湯船でのんびりと語り合う。

「ところで木蓮の奴だけど......ありゃ一体なんなんだ?」

 銀杏の体がビクリと震える。

「ん?どうした?」

「い、いや、なんでもない。木蓮は、酒呑童子と言う強力な鬼を、自分の体を依り代として召喚したのじゃ。変身を解けば、元の姿に戻るじゃろう」

「なるほどな。だけどなんであいつは、元の姿に戻らないんだ?」

「う、うむ。何故じゃろうな......強くなった自分を誇示したいのかも知れぬな。そ、それより、あれじゃな、本当に素晴らしい都じゃなぁ。うむ。この家も快適じゃし、言うことないのう」

 何故か強引に話題を変えようとする銀杏。木蓮の事には触れて欲しくないのだろうか。

 銀杏は何か隠している。白金の「直感」がそう告げる。だがそれを追求する事で、もしかしたら今の関係に亀裂が入るかも知れない。そんな予感も同時に感じていた。

 ここは、無理に追求すると言う選択肢は排除だ。銀杏は俺を愛してくれている。それで充分じゃないか。白金はそう、自分に言い聞かせた。

「ああ、そうだろ。この温泉も最高だしな。でものぼせると良くねぇから、そろそろ上がろう」

「うむ、そうじゃな」

 それから二人は寝室へ行き、温泉ですっかり上気した肌を重ねあった。

   やがて眠りにつくと、白金は夢を見た。木蓮と銀杏が、同じ布団で寝ている夢。二人はまるで恋人のように愛しあっていた。

  銀杏が木蓮との旅の途中、疲れて眠ってしまったと言っていた事。木蓮の変わり果てた姿。何かを隠している銀杏。

  それらの不安が、こんな夢を白金に見せているのだろう。

 とんでもない悪夢だ。だが、夢だから、まだ救いはある。きっと木蓮とは、明日勝負する事になるだろう。

 負けられない。さもなければ、これは現実に起こりうる。

 必勝の決意を胸に抱きつつも、白金の悪夢は朝まで続いたのだった。

【銀杏視点】
「うーん、銀杏......大好きだぜ......」

 オレが目覚めてすぐ、白金の寝言が耳に入った。うわわ、オレの夢見てる。な、なんか......「愛してる」より「大好き」の方がドキドキするかも。

「し、白金、朝じゃぞ。起きるのじゃ。起きないと、こちょこちょしちゃうぞよ」

「んー? おお、銀杏。そうか、ありゃやっぱ夢だったんだな。いやー、なんかひでぇ夢見ちまってさ。最後には俺の元に戻って来てくれたけど......本当に、夢で良かったよ。おまえがこうして、ここにいてくれるんだからな。ほら、寝起きのキス、しようぜ......」

 白金がそっと、オレの髪を撫でる。ああ、優しい。白金の手は、指は、とても優しくオレを撫でてくれる。

 オレは白金の唇に、自分の唇を重ねた。柔らかな感触が伝わってくる。

 オレは自然と涙がこぼれた。白金が慌てたように唇を離す。

「どうした? オレ、何か酷い事言ったか? だとしたら教えてくれ! 謝るよ!」

 オレはふるふるとかぶりを振る。だけど言葉が出てこない。嗚咽が漏れて、声にならない。ただただ、涙だけが溢れた。

「うぐっ、ふぇぇ。ギュってして。抱きしめて、欲しいのじゃ」

「わかった」

 白金の胸に抱かれ、顔を擦り付けて思いっきり甘えるオレ。そうしているうちに、ようやく気持ちも落ち着いてきた。

「白金......そなたに話しておかねばならぬ事が、あるのじゃ」

「なんだよ、改まって」

 オレは心臓をバクバクさせながら、震える声で真実を伝えた。そして、何故そんな事になってしまったのかも。

「実は、今の木蓮は、木蓮であって木蓮ではない。酒呑童子という、鬼に精神を乗っ取られておるのじゃ」

「なんだって!?」

  白金は目を見開いた。

「最初はうまくいっていたんじゃ。木蓮も、酒呑童子の力をコントロールしていた。じゃが、『酒呑童子の邪心』という厄介な存在がおってな。成り行きで其奴も木蓮の体に封じ込める事になった。その後からじゃ。木蓮がおかしくなったのは。はじめは普通だったんじゃが、鬼に変身したまま、戻ろうとしなくなった」

   オレが一旦話を区切ると、白金は話を促すように頷いた。

「わしに対しても、乱暴を働くようになった。殺されると思った。じゃが、わしが許して欲しいと懇願すると、優越感に浸ったような顔で乱暴をやめるのじゃ。どうにかこの新都に帰って来れたが......わしはあやつが恐ろしい」

   オレの告白を聞いて、白金は怒りにワナワナと震えた。

「あの野郎!」

「木蓮は悪くない。間違いなく、鬼に乗っ取られておるじゃろう。じゃが、このままにはしておけぬ。どうにか封じて、木蓮を元に戻さねば」

「だな。だけど、どうやって封印する? 奴の強さは尋常じゃない。多分俺とお前が二人がかりでも勝てないと思うぜ」

「それなんじゃが......恐らく一晩が過ぎ、さすがの奴も一度くらいは眠っているはずじゃ。そうなれば当然、木蓮の覚醒は解ける。足は不自由になり、術の力も弱くなる。酒呑童子はその事を知らぬ。勝機があるとすればそこじゃ。木蓮には悪いが、瀕死の状態まで追い込めば、奴を封じ込める事が出来るかも知れぬ」

   寝てない可能性もあるが......寝てる可能性の方が高い筈だ。

「なるほどな。なら善は急げだ。奴がこれ以上霊力を蓄える前に、倒すぞ」

「うむ。もはや勝負だの言っておる場合ではない。奴がわしに手を出した時点で、約束は反故(ほご)されたも同然。二人がかりで行くぞ。さすがにあの化け物相手に、他の者は巻き込めぬからな。死人が出る恐れがある」

「ああ、だな。よし、準備だ」

 そう言って布団から立ち上がる白金。

「あっ、待て、白金。そ、そのう......」

「ん?どうした、銀杏」

「出発する前に一回だけでいいんじゃが、その......イチャイチャしたい」

 恥ずかしい。でも、やっぱり言わずにはいられなかった。だって、もしかしたら死ぬかも知れないし。

「ああ、もちろん、いいぜ」

  白金は、オレを優しく抱きしめて、また布団に横になった。ああ、幸せ......。

  それからしばらく抱き合っていたが、オレたちはハッと使命を思い出し、バタバタと着替えた。

「すまぬ、甘えすぎた!」

「気にすんな! 俺も幸せ感じたぜ!」

 急ピッチで着替えを完了し、手を繋いで家を飛び出す。

「木蓮の家に行く前に、ドラザエモンを叩き起こす! あいつに俺の武器の作成を依頼してたんだ!」

「わかった!」

 神速歩、と思ったけど、覚醒してないから使えないじゃん!

「覚醒するまで、もう少しかかりそうじゃ! 今のまま行っても確実に負ける。少し時間をくれぬか?」

「ん?そうか。じゃあ朝飯でも食いに行くか。蕎麦屋ならもうやってる筈だぜ」

「うむ♡蕎麦は大好物じゃ♡」

 なんか緊張感ないよね......。でもいいんだ。だってそれがオレたちだからさ!
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