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幼児編
兄と決意
しおりを挟む「っっっっ!!!」
目が、合った。
ドアの前に立っていた人と、目が合った。
ヤバイ、私、閉じ込められてたのに自力で脱出できるってバレちゃった。
いや、まだチャンスはあるかも!
相手は少年だ。
せいぜい2、3歳上ってところだ。
うん、丸め込もう!
そして誤魔化そう!
「ちょ、ちょっと入って下さい!」
小声でそう言い、部屋の中に少年を引きずり込んだ。
そのままドアを閉め、少年と向かい合う。
・・・金髪碧眼の美少年って、初めて見た・・・
落ち着いてその少年を見ると、サラサラでクスミのない金髪、深い深い海の底を覗いているような気分にさせる蒼い瞳。
顔立ちは、まるで神様が丁寧に造りあげた彫像のよう。
スタイルもいいし、まさにTHE・美少年だった。
「ソラ、だよね?」
沈黙の末、美少年が口火を切った。
うわあ、声まで綺麗・・・
「あ、はい。朱雲 蒼来、です。あの、ドアが開いてたから外に出てみただけなんです。」
そう、私は何もしてない。
ドアが開いてたから出てみただけなんです!
「誤魔化さなくて良いよ。」
「え!?」
誤魔化さなくて良い、とはどういう意味だろうか。
「僕、ソラが力を使ってるの、感じてたから。」
ソラがこのドアの封印、解いたんでしょ。と言われ、動揺してしまった。
慌てる私の様子に、すっかり落ち着いた様子の美少年はフッと口元を緩め、ベッドに腰掛けた。
「ほら、ソラも座りなよ。全部僕が教えてあげる。」
隣をポンポンと示され、恐る恐る座った。
どうやら、悪い人ではなさそうだ。
「ソラが生まれたこの家は、能力者の家柄で、名門なんだ。僕は、ソラのお兄さんだよ。ソラより二歳上。僕にもソラにも、能力者の資質がある。」
もっとも、ソラはもう力を使って封印の解除なんてことしてたからもう正真正銘の能力者だけどね。と美少年、いや、お兄さんが笑う。
美少年が、お兄さん・・・
全然身内という感覚が湧かないんだけど。
まあ、いつか慣れるよね。
「この家では、子供が生まれると服だけを与えて部屋に封印する。力が制御できない子供は妖怪の餌になってしまうからね。力が制御できるようになるまで、部屋に封印しておくんだ。普通の子供は2、3歳で制御する
ようになるんだけど、ソラは遅かったね。家の者達はソラが死亡してるんじゃないかってハラハラしてたよ。まあ、僕はソラが生きてるって分かってたけどね。」
え、食料どうするのさ。
何年も飲まず食わずだったら本当に死ぬじゃん。
「食料、私、どうしてたんでしょうか。」
「食料は、自分の力で補うんだ。制御できずに漏れ出した力の一部を栄養として体内に取り込むんだ。」
便利だね、力って。
前世ではそんな話、聞いたこともなかった。
「力を制御するようになった子供は、力が制御されていることに気付いた両親によって部屋から出される。」
どんな金持ちだ!
子供1人に家と使用人!?
なんか・・・すごい家だなあ。
「でね、ソラ。ここからが本題なんだけど、ちょっと行方不明になってみない?」
「え、行方不明、ですか!?」
こんなに軽く、行方不明になってみない?って言われるのって、初めてだ。
しかも、初対面の人から。
え、この子、誘拐犯だったの?
いや、でもお兄さんだし、それはないのかな。
「あー、表向き行方不明になって、僕の家に来ない?この家にいるのは、ソラのためにも良くない。」
「私のために良くないって、どういうこと、ですか?」
覚醒して早々、とんでもない話ばっかり聞いてる気がする。
というか、自分の家を持ってるのか、この人。
「ソラの力は、とんでもなく強いんだ。だから制御に時間がかかったわけだし、今こうしてソラが制御していることだって奇跡なんだよ。父上だって、ソラはもう制御出来るようになる前に力が枯渇して死んでしまうって思ってるんだから。そう思ってるところに、その強大な力を簡単に制御して扱っているソラが現れたら、ソラが利用される。ソラの意思を無視して、その力を利用する。」
え、お父さん、だよね。
お父さんが娘を利用するって、そんなの、あるの?
弥生の時は親に捨てられてたから、親っていうものに憧れていた。
でも、親って、子供を利用できるの?
守ってくれる存在じゃないの?
「アイツはそんなヤツなんだ。自分以外の人間は全て、道具なんだ。それが家族だろうと関係ない。僕だって、アイツの道具だ。でも、ソラは自由だ。このまま、アイツが家に帰って来る前に僕の家に逃げて、そのまま息を潜めているだけでいいんだ。アイツが家に帰ってきて、ソラの力が制御されていることに気付いたら、その瞬間、ソラはもう、アイツの奴隷になるんだ!。今なら間に合う。逃げるなら、今しかないんだ!」
利用されるソラを見たくないんだ、と言う彼は真実を言っているように見える。
「ソラ、お願い。決断してくれ。僕がソラを守るから。僕に、ソラを守らせて。」
よし、とりあえず、行ってみよう。
ダメだったらどこかに逃げれば良い。
この家に特に執着はないし、この美少年の家に行こう。
乾いた唇が言葉を紡ぐ。
「私、あなたの家に行きます。お世話になります。」
ホッしたように息をつく彼の姿が、かつての桐谷 壮一に重なった。
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