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幼児編
出逢い
しおりを挟む次に目覚めた時、体にのしかかっていた倦怠感は綺麗に消えていた。
力はかろうじて制御できているが、少し乱れている。
やっぱり体調が悪いのに無理して制御しようとしたのがいけなかったんだろうか。
でもまあ、体調も良くなったし、今なら完全な制御ができるだろう。
目を閉じて、力を感じる。
膨大すぎる力が爆発しないよう、体内を血液のように循環させた。
「これで、よし。思ったより、力が大きかったな。慣れるまで時間がかかりそうだ。」
力が大きいほど、制御には繊細なコントロール力と精神力が求められる。
弥生の時よりもずっと大きな力はまだ蒼来には馴染んでおらず、時間がたつにつれて疲労感が増してくる。
それでも力がダダ漏れになるよりはマシだ。
力がダダ漏れになっていることはつまり、力の持ち主が未熟なことを示している。
力を持つものは、妖怪に狙われる。
妖怪にとっての天敵が未熟なうちに始末しておこうという考えだ。
その上、力を持つ者を食らえば、その妖怪の力は格段に上がる。
その力が強いほど、食らった妖怪は強くなるのだ。
蒼来のように濃度が高い、膨大な力を放出しているとそれを嗅ぎつけた妖怪達が寄ってきて、そのまま喰われてしまう。
「・・・ん?妖怪達が、寄ってきて?」
蒼来は、私は今まで、力を放出していたよね。
力を放出させる、つまり妖怪達が寄ってくる・・・
頭から血の気がひいていくのを感じた。
さすがにまだ死にたくない。
今度こそ、寿命を全うしたい。
「落ち着け、落ち着け。」
複数の妖怪に狙いをつけられれば、アウト。
前世での常識だった。
一体ならなんとかなる。
弥生の場合、力が大きかったため、三体までなら対処できた。
しかし、それ以上は無理だ。
弥生は妖怪に殺された。
複数の妖怪に囲まれてはなすすべがなかった。
死への恐怖からか、冷汗がでてきた。
今の私は、力の制御で疲労している。
いくら力が大きかろうが、制御で精一杯の私には、抵抗できない。
それほどまでに、妖怪の力は強大だった。
今の私の体は、推定五歳。
五年間の間に、妖怪を引き寄せてしまっていたら、諦めるしかないのかもしれない。
というか、五年もの歳月の間に力に敏感な妖怪達をひきよせていないなんて不可能なことなのだ。
そこまで考えて、私は矛盾を感じた。
・・・なんで私、生きてるの?
どう考えてもおかしいだろう。
生まれてから5年もの間、力がダダ漏れで無防備な状態だったら、とっくの昔に妖怪が集まってきて喰われているはずなのに。
「え、ホントになんで生きてるのさ、私。」
いや、生きててよかったけどさ。
死んでたら困るけどさ。
ホント、なんで無事なの?
ベッドに寝転んだまま、目をつぶって考える。
ところで、目をつぶると視覚以外の五感が研ぎ澄まされるという話がある。
私はまさにその状態だった。
ただし、研ぎ澄まされたのは五感ではなく第六感だったが。
「結界!?なんでここに張られているの?」
私が今いる部屋、そして、この家の敷地全体が、結界で覆われていた。
「いやでも、結界が張られてるんなら私が生きてる理由は分かるね。」
結界が私の力が外に漏れていくのを抑えていたんだろう。
問題は、なぜこの家に結界が張られているのか、ということだ。
「んしょっと。」
勢いをつけてベッドからとびおりる。
とりあえず、部屋から出よう。
誰かいるかもしれない。
いや、いるはずだ。
こんな小さな子供を1人残して外出なんて、しないだろう。
「え、開かない!?」
なんだ、このドア、ビクともしない。
外側から鍵が掛けられてるのかな。
いや、違う。
封印の術がかけられてる。
私、閉じ込められてたの?
それならなおさら、脱出するためにも情報収集大事!
封印を解除しよう。
幸い今の私には、有り余るほどの力がある。
能力者がよく術のと共に使う札はないけど、今の私が封印を解除するのに札なんて必要ない。
札はそもそも、能力者の力を補うためのもの。
こんな小技に札はいらない。
フッと小さく息を吹く。
蒼来が初めて使う術。
ドアに片手をかざし、文言を唱える。
「我が名は朱雲 蒼来。桐谷 弥生の心を引き継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。」
相変わらず、言うのが恥ずかしい文言だ。
まあそれはしょうがないか。
力を言葉にのせ、最後の文言を唱える。
「我が望みに従い、封印を解除せよ。」
ドアにかざしていた手が、ぼんやり光った。
「うん、大丈夫みたいだね。」
そっと、ドアノブに手をかけ、回した。
そして、ゆっくりとドアを開いた。
「っっっっ!!!」
目が、合った。
ドアの前に立っていた人と、目が合った。
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