能力者は正体を隠す

ユーリ

文字の大きさ
4 / 105
幼児編

出逢い

しおりを挟む

次に目覚めた時、体にのしかかっていた倦怠感は綺麗に消えていた。
力はかろうじて制御できているが、少し乱れている。
やっぱり体調が悪いのに無理して制御しようとしたのがいけなかったんだろうか。
でもまあ、体調も良くなったし、今なら完全な制御ができるだろう。
目を閉じて、力を感じる。
膨大すぎる力が爆発しないよう、体内を血液のように循環させた。

「これで、よし。思ったより、力が大きかったな。慣れるまで時間がかかりそうだ。」

力が大きいほど、制御には繊細なコントロール力と精神力が求められる。
弥生の時よりもずっと大きな力はまだ蒼来には馴染んでおらず、時間がたつにつれて疲労感が増してくる。
それでも力がダダ漏れになるよりはマシだ。
力がダダ漏れになっていることはつまり、力の持ち主が未熟なことを示している。
力を持つものは、妖怪に狙われる。
妖怪にとっての天敵が未熟なうちに始末しておこうという考えだ。
その上、力を持つ者を食らえば、その妖怪の力は格段に上がる。
その力が強いほど、食らった妖怪は強くなるのだ。
蒼来のように濃度が高い、膨大な力を放出しているとそれを嗅ぎつけた妖怪達が寄ってきて、そのまま喰われてしまう。

「・・・ん?妖怪達が、寄ってきて?」

蒼来は、私は今まで、力を放出していたよね。
力を放出させる、つまり妖怪達が寄ってくる・・・
頭から血の気がひいていくのを感じた。
さすがにまだ死にたくない。
今度こそ、寿命を全うしたい。

「落ち着け、落ち着け。」

複数の妖怪に狙いをつけられれば、アウト。
前世での常識だった。
一体ならなんとかなる。
弥生の場合、力が大きかったため、三体までなら対処できた。
しかし、それ以上は無理だ。
弥生は妖怪に殺された。
複数の妖怪に囲まれてはなすすべがなかった。
死への恐怖からか、冷汗がでてきた。
今の私は、力の制御で疲労している。
いくら力が大きかろうが、制御で精一杯の私には、抵抗できない。
それほどまでに、妖怪の力は強大だった。

今の私の体は、推定五歳。
五年間の間に、妖怪を引き寄せてしまっていたら、諦めるしかないのかもしれない。
というか、五年もの歳月の間に力に敏感な妖怪達をひきよせていないなんて不可能なことなのだ。
そこまで考えて、私は矛盾を感じた。

・・・なんで私、生きてるの?
どう考えてもおかしいだろう。
生まれてから5年もの間、力がダダ漏れで無防備な状態だったら、とっくの昔に妖怪が集まってきて喰われているはずなのに。

「え、ホントになんで生きてるのさ、私。」

いや、生きててよかったけどさ。
死んでたら困るけどさ。
ホント、なんで無事なの?
ベッドに寝転んだまま、目をつぶって考える。
ところで、目をつぶると視覚以外の五感が研ぎ澄まされるという話がある。
私はまさにその状態だった。
ただし、研ぎ澄まされたのは五感ではなく第六感だったが。

「結界!?なんでここに張られているの?」

私が今いる部屋、そして、この家の敷地全体が、結界で覆われていた。

「いやでも、結界が張られてるんなら私が生きてる理由は分かるね。」

結界が私の力が外に漏れていくのを抑えていたんだろう。
問題は、なぜこの家に結界が張られているのか、ということだ。

「んしょっと。」

勢いをつけてベッドからとびおりる。
とりあえず、部屋から出よう。
誰かいるかもしれない。
いや、いるはずだ。
こんな小さな子供を1人残して外出なんて、しないだろう。

「え、開かない!?」

なんだ、このドア、ビクともしない。
外側から鍵が掛けられてるのかな。
いや、違う。
封印の術がかけられてる。
私、閉じ込められてたの?
それならなおさら、脱出するためにも情報収集大事!
封印を解除しよう。
幸い今の私には、有り余るほどの力がある。
能力者がよく術のと共に使う札はないけど、今の私が封印を解除するのに札なんて必要ない。
札はそもそも、能力者の力を補うためのもの。
こんな小技に札はいらない。
フッと小さく息を吹く。
蒼来が初めて使う術。
ドアに片手をかざし、文言を唱える。

「我が名は朱雲 蒼来。桐谷 弥生の心を引き継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。」

相変わらず、言うのが恥ずかしい文言だ。
まあそれはしょうがないか。
力を言葉にのせ、最後の文言を唱える。

「我が望みに従い、封印を解除せよ。」

ドアにかざしていた手が、ぼんやり光った。

「うん、大丈夫みたいだね。」

そっと、ドアノブに手をかけ、回した。
そして、ゆっくりとドアを開いた。

「っっっっ!!!」

目が、合った。

ドアの前に立っていた人と、目が合った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜

具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。 主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。 みたいなはなし ※表紙はAIです

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

処理中です...