能力者は正体を隠す

高校生編 ４月

クラスメートと先生

普通さ、入学式の後のホームルームって自己紹介をするもんじゃない？
いくら中等部から進学してきた人がほとんどだって言ってもさ。
というか、外部からの新入生がこのクラスでは私だけってどういうこと？

光陰学園は４クラス編成で、私は１年３組だった。

「このクラスの担任になった藤沢　聖（ふじさわ　こうき）だ。１年の英語科を担当する。」

ガラッと扉を開けながら素っ気ない自己紹介をした先生の姿を認め、思わず目を見張る。

銀髪に、紫の瞳。
私と全く同じ色彩。

入学式の時、生徒の数は多かったのに、銀髪や紫の瞳は全くいなかった。
紫の瞳は何人かいたけど。
珍しい色だとカイお兄ちゃんからも聞いていたからこの先生の色彩に驚いてしまった。

ちなみに私の瞳、昔は翠だったけど、成長の共にだんだんと紫に変わっていった。
翠から青、青から紫、というように。
今では私の瞳は完璧な紫色になっている。
カイお兄ちゃんは、成長と共に能力が強くなっているからだろうって言ってた。
実は瞳の色が完璧な紫になったのはつい昨夜のことで、まだ慣れない。
日々、変わっていく瞳の色を見ているのはなんだか奇妙な感じで、自分が自分ではなくなるような気がして少し怖かった。

多分もう、瞳の色が変わることはないと思う。
なんとなく、だけど、高校に入学するこの日に合わせて瞳の色が変化したような気がするから。

「まあ、藤沢様よ！！」
「うそ、藤沢様のクラスだなんて・・・幸せすぎますわ。」
「一ヶ月の君、藤沢様にご指導してもらえるなんて！」

女子生徒が興奮気味に囁き合っている。
囁いているといっても、内容は周囲にダダ漏れなのだけれども。
一カ月の君って・・・何だろう。
変なあだ名。

「俺はめんどくさいことが嫌いだ。お前ら面倒事は持ってくんなよ。じゃーとりあえず学級委員決めるぞ。方法はくじ引き。出席番号順に並べ。」

ぞろぞろと生徒が移動する。
この学園の出席番号はちょっと特殊だ。
１クラス３６人なのだけど、男子が出席番号１番から１８番、女子が１９番から３６番となっているのだ。
つまり、渡邉（わたなべ）くんの次が阿座上（あざかみ）さんなんていうおかしなことになっているのだ。
ちなみに私は桐谷なので２４番だ。
席も出席番号順に並べられているのでどこに並べばいいのかはすぐに分かった。
どんどん私の順番が近づいてくる。
くじには番号が書かれていて、全員が引き終わった後で先生が一つ番号を発表するらしい。

その番号を引いていた人が、学級委員。
とうとう私の番になり、藤沢先生の前に進み出た。