能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 4月

我慢 ~朱雲 海~

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富金原 龍之翼が廊下で女子生徒に迫っている。

その囁きを耳にしたとき、またか、と思った。
何度目だろう。
迫ってもどうせ飽きて捨てるだろうに。
遊ばれる女子生徒が気の毒だと思っていた。

しかし、助ける気はない。
リュウが誰と遊ぼうと、知ったことではない。
そう思っていた。

けど、耳に飛び込んできたもう一つの囁きが、僕の体を突き動かした。
今回の相手は、新入生代表挨拶をした銀髪に紫の瞳という珍しい色彩を持つ女子生徒らしい、という情報だ。

まさか、ソラがリュウに目をつけられたのか?
リュウは綺麗なものが好きだから、人並み外れた美貌のソラを見初めてもおかしくはない。
急いで1年の教室まで行くと、人だかりができていた。
強引に道を空けさせて進んだ先には、リュウと、その腕の中にとらわれているソラの姿があった。
カッと胸が熱くなって、気付けば怒気をまき散らしていた。

人の妹に手を出すな!

その時ほど僕とソラの関係を口にだせないことをもどかしく思ったことはない。
兄弟だと明かせたら、僕がソラを守る口実ができたのに。
いや、兄弟だと明かせなくても、守る口実なんていくらでも出来る。
ここでリュウからソラを助け出したらどんな噂がたつか想像してみる。

『富金原の長男と朱雲の長男が1人の女子生徒を取り合っている。』

別に、それでもいい。
例えソラが嫉妬の炎に焼かれそうになっても、僕が側にいて守ればいいことだ。

「今後一切、彼女に関わるな。」

リュウに言っても無駄だろうなとは思いつつ、牽制する。
そのままソラの手を握り、ここから連れだそうとしたのだが・・・

パアンッ!

僕は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
いや、正確には、何が起こったのか、理解したくなかった。
ソラが僕の手を弾くなんて、考えたくもなかった。
理由なら、分かっている。
昨夜の出来事が原因だろう。
僕は、ソラの信頼を裏切ってしまったから。

けれど、ソラの瞳を見て、考えが変わった。
僕達の関係がばれる恐れがあるような行動はとらない。
二人で決めた約束事だ。
それを忘れるなと、ソラの瞳は訴えている。

リュウには、一言もの申したい。
ソラに関わるな、と。
でも、それをしてはいけないんだ。
ぐっと感情を抑える。

他人の振りをしてやり過ごすけど、正直、ソラから他人行儀な態度をとられるととても辛くなる。
今まで過ごした年月の中で、僕はすっかりソラに依存してしまっていて。

ソラが、踵を返して去って行く。
ソラの背中で揺れる銀の髪を眺めながら、僕は胸に広がる苦い思いを何とか封じ込めた。

「カイ、お前、本当にあいつとは関係ないのか?」
「ああ。」

リュウが疑っている。
それを感じながら、僕は苦笑しながら前髪を軽くかきあげた。
周囲の女子生徒が悲鳴をあげた。

「後ろ姿があまりにも似ていたから、思わず駆け寄ってしまった。・・・疲れがたまっているのかな。」

やれやれと言うようにため息をつき、僕は真面目な顔して言い放った。



「ところで、例の女子生徒はどう?」

リュウがげんなりとした顔でため息をついた。

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