能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 5月

三年三組学級委員長

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光陰学園には、七つの建物がある。
日の棟、月の棟、炎の棟、水の棟、風の棟、大地の棟の六つと、宙(そら)の塔だ。

カイお兄ちゃんに聞いたところによると、日と月は光陰学園の名前になっている光と影を表しているらしい。

そして炎、水、風、大地は力の四属性を表している。
日の棟には、各クラスの教室が。
月の棟には、職員室や各教科の研究室などが。
炎の棟には、各部活動に使われる部室が。
水の棟には、温室や室内プールなど、趣味のための部屋が。
風の棟には、ダンスフロアやピアノ室など、生徒が芸術面を磨くための部屋が。
大地の塔には、体育の授業に使われる体育館や武道場などがある。

そして、宙の塔は別名秘されし塔と言って、他の六つの棟は四階建てなのに対し、宙の塔は七階建て。
六つの棟に囲まれるようにしてそびえ立っている。
宙の塔は一階と二階が光陰部の部室になっているけど、三階から上は立入禁止になっている。

何があるのか、なぜ立入禁止なのか、誰も知らない。
それが秘されし塔と呼ばれているゆえんだ。

今回、私を含めた三組の学級委員長のために振り当てられたのは風の棟の三階にある第三ダンス練習場。
一つ一つの部屋が広いから、自然と廊下も長くなるし、階段の段数だって多くなる。
まあ、エレベーターがあるから大丈夫なんだけど。

教室で足止めをされたせいで、時間ぎりぎりになってしまった。
エレベーターよりも、非常階段を使った方が早い。
そう思って急いで階段を上り始めた。

けど、途中で信じられないものを見ることになる。

肉食獣と、それに捕食される寸前の哀れな獲物。
肉食獣の方には見覚えがある。

三年の、富金原 龍之翼先輩。
尊大な光をたたえた茶色の瞳が私を捕らえる。

「この前はカイに邪魔されたが、今日は邪魔する者はいないな、蒼来。」

人を支配することになれきった口調に、捕食寸前の哀れな小動物、おそらくは二年三組の学級委員長が大きく震え、命からがらというように逃げていった。
獲物が逃げたのを見届けて、肉食獣は新たな獲物を見据えるように、私に向かって口の端を吊り上げた。

・・・何を考えているのだろう、この先輩は。

「三年三組の学級委員長、ですか?」

もう大体分かっているけど、念のために問いかける。

「素っ気ないな、オレはお前と会えるのを夜も眠れないほど楽しみにしていたというのに。」

恋人に愛の言葉を囁くように語りかけてくるけど、その瞳は爛々と光っている。
どんなに言葉で繕おうと、その瞳が全てを伝えている。

私を罠にはめようとしている。
どんな思惑があるのか知らないけど、何か裏があるのは確か。

相手の思い通りになんて、なるものか。
華麗な笑みを意識して表情を作る。

「初めてお目にかかります。一年三組の桐谷 蒼来と申します。以後、お見知りおきを。」

弧を描く口から、クククッと笑いが零れるのを私は聞いた。

「そうか、初めて、ねぇ・・・」

私は平然と笑い返す。

「はい。あ、もしかして、以前にお会いしたことがありますか?でしたら申し訳ありません。私、必要ないと判断したことは全て忘れてしまう性格なので。」

あなたみたいな人のこと、覚えている必要がない。
言外にそう示すと、富金原先輩は怒るでもなく、ちょっと興味深げに笑った。

「なるほど、そういうことにしておいてやろう。さてと、第三ダンス練習場に行こうか。二年の学級委員長はサボるようだから、二人きりで、練習しよう。ゆっくり、時間をかけて教えてやる。」


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