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高校生編 5月
決意 ~紫月 司side~
しおりを挟む本当は、傍で守りたい。
学年の違いが、とても悔しく感じられる。
どうにかして、力になれないだろうか・・・
ああ、そうだ。
「我が名は紫月 司。紫月の血を受け継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。水よ、我が望みに従い、我が力を形とせよ。」
まだ慣れない、力を使う感覚と共に、おれの手には澄んだ蒼色の石がついたペンダントがあった。
「桐谷、いや、朱雲か。って、朱雲がこの学校に三人もいるな。まぎらわしいし、ソラでいいか?」
「は、はい。」
理由をこじつけて下の名前を呼ぶ権利を手に入れた。
「このペンダント、ずっと身に付けていてくれないか?もしさっきみたいにおれの助けが必要な時が来たら、おれの名前を呼べば、それで届くから。もし、妖怪が出て水属性の力が必要なら、その石に願えば石を媒体にしておれの力が使えるから。」
渡したのは、おれの力を込めた石。
本で読んだことがあるんだ。
力を込めた石を渡す相手は自分の力を出し尽くしてでも守りたい、愛しい人なのだと。
この頃は能力者を減らさないために政略結婚が多くなっていて石を作る人もいなくなった。
でも、おれはソラに、渡したかった。
まだ出会って少しだけど、ソラなら、渡してもいいと思ったから。
きっとソラは石の意味を知らないんだろう。
「こんなことができるんですね・・・本当にいいんですか?」
キラキラと瞳を輝かす姿が何だか可愛くて、思わず微笑んだ。
いつも人から無表情だと言われているのに、ソラが相手だと自然と表情が動いてしまう。
「ありがとうございます。大事にしますね。あ、じゃあお礼に私も。」
え?と思った時にはもう、ソラは文言を唱え始めていた。
しかも、おれ達光陰部が使うものとは少し違う文言を。
「我が名は朱雲 蒼来。魂の記憶を保持する者。我が名の下に、我が力を行使する。」
それは、今まで聞いたどの文言よりも力にあふれていて。
「火よ、土よ、水よ、風よ、森羅万象を司る四つの力よ、我が望みに従い、我が力を形とせよ。」
ソラが唱え終わったその瞬間、おれは一瞬、息ができなくなった。
それくらい濃密で、強力すぎる力がソラからあふれ出た。
神々しく、畏怖の感情を抱かせる。
それなのにどこか優しい力で。
短いのか長いのかよく分からない時間が過ぎて、気付くとソラの手の上には一つの石がのっていた。
「うそだろ・・・」
石の大きさはおれが作り上げたものと変わらなかった。
けれど、その石は燃えるような赤色、温かみのある茶色、澄み切った蒼色、凜とした緑色の光が踊っていた。
決して混ざることがなく、それでいてどれかの光が弱くなったり強くなったりしない。
ただただ美しかった。
「これ、お返しです。もらって下さい、紫月先輩。」
ソラの少しひんやりとした白い指がおれの手の中に石を入れ込む。
こんなすごいものをもらってもいいんだろうかと戸惑いながら受け取ると、ソラは嬉しそうに笑った。
花が咲いたような、笑顔。
おれは彼女の笑顔に目を奪われてしまった。
そういえば、彼女の笑顔を見たのは初めてかもしれない。
ただただ美しくて、可愛くて、胸が熱くなった。
「あ、ごめんなさい。カイお兄ちゃんとの約束の門限が近づいているので帰りますね。今日は本当に、ありがとうございました。」
少し慌てたように、でも丁寧にお辞儀をしてソラは出て行った。
石を見ると、さっきまで確かに四色だったはずなのに、いつのまにか蒼色になっていた。
なぜだろう・・・
でも、彼女が関わることならなんだって不思議な気がするんだ。
どんな不思議なことがあっても、ソラをずっと見ていたい。
「ああ・・・」
右腕で目を覆いながら床に寝転がる。
どうしよう、まだ出会って少ししかたっていないのに、どんどん夢中になってしまう。
熱くなった体に、床の少しひんやりとした冷たさが伝わってきて気持ちよかった。
***
その晩、ソラからもらった石をチェーンに通してネックレスにした。
石の意味を知らないソラを騙しているみたいだが、いずれソラが俺のことを好きになってくれれば、問題ないはずだ。
もし、ソラが他の男を好きになった時は、この石をソラに返そう。
そんなこと、考えたくもないけど。
石の色の変化の意味は、正直よく分からない。
でも、文言からソラはきっと、四つの力を全て持っているのだと思う。
そんなの聞いたことないし、信じられないがきっとそうなのだろう。
あんなに強い力を持つソラの存在が知られれば、朱雲家は当然のこと、他の家からもソラは脅威として狙われるだろう。
守らなければならない。
決意とともにネックレスを首にかけた。
チリッと、瞳の奥が熱くなった。
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