能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 6月

遭遇

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六月は、前期考査がある。
高校に入学してから最初のテストだ。
入試では1位だったから、今回もトップをとりたい。
そう思って、テスト勉強を本格的に始めている。
もちろん、今までも日々の学習を怠ってはいなかったんだけど。

ガララ・・・

おそるおそる図書室のドアを開けると、中は見事に空っぽだった。
テスト期間だから、それなのに人がいると思ってたのになあ・・・

多分みんな、家で勉強をするんだろう。
公共の場では勉強をしたくない、とか?
私も、家で勉強してもいいのだけど、なんとなく、家にいたくなくて。
図書室で勉強した方が、きっとはかどると思ったんだ。

「すごい、穴場だ、ここ。」

一人でこの空間を使っていいだなんて、すごい。
光陰学園の図書室はとても広くて、蔵書数も多い。
ジャンルも様々で、私にとっては天国みたいなところ。

人が来ないなんて、もったいない。
そう思いながら、席に着く。
参考書を広げると、すぐに私は数式の海に溺れていった。

  ***

ガララ・・・

ドアが開く音がして、顔を上げる。

「「あ・・・」」

思わず零れた声が、澄んだテノールと重なる。
サラリと揺れる金髪に、深い海の色を写し出したような瞳。

カイお兄ちゃん・・・?

ドクンと心臓が跳ね上がったけど、すぐに違和感に気付く。
違う、カイお兄ちゃんは、こんなふうに敵意に満ちた眼差しを私に向けない。
それに、カイお兄ちゃんよりも少し背が低くて、線も細い。

「朱雲、くん・・・」

朱雲 蒼羽、私の、双子の弟だった。

ソウくんは私を見て、その端正な顔を歪めた。
まるで、私がここにいるのが不愉快だとでもいうように。
そして、軽い舌打ちを響かせて荒々しく私のはす向かいの席に座った。

えっと・・・私、何かしたかな、怒らせてしまうようなこと。
いやでも、本当に私のことが嫌いなら、もっと離れた席に行くよね。

・・・何がしたいんだろう、この子。

内心首を傾げながら、私は何もなかったかのように勉強を再開。
でも、頭の半分ではソウくんのことを考えていた。
なんでソウくんはここで勉強しているんだろう。

朱雲家はそれなりに、というか、かなり裕福。
朱雲ほど裕福でない他家の子でさえ、公共の場で勉強することを忌み嫌って家で快適に勉強しているのに。

・・・変なの。

チラリ、と視線を向けると、バッチリ目が合ってしまった。
なんとなく、視線を外せなくてそのまましばらく見つめ合う。

本当に、カイお兄ちゃんに似てる。
紫月先輩は、私も二人と似てるって言っていたけど、言われてみれば少しだけ、似ている気がしないわけでもない。
目元の雰囲気や、髪質、とか・・・

ジイッと見つめていると、やがてソウくんがフイッと視線を外した。
参考書と向き合って勉強を再開した彼が、どことなく尖った雰囲気を醸し出しているように感じた。

『あの家は、ソラにとって害でしかない。』

昔、カイお兄ちゃんが言っていた言葉が頭の中に蘇る。
私にとって害でしかない家。
それはきっと、ソウくんにとっても同じ。
私はたまたま覚醒するタイミングが良くてカイお兄ちゃんに助けてもらった。

でも、ソウくんは違う。
私が逃げたあの家で、今も暮らしているんだよね・・・
何を思って暮らしているんだろう。
『朱雲 蒼来』のことは、きっと知ってるよね・・・
どう思っているんだろう、彼の姉である私のことを。
様子を見た限りでは、『桐谷 蒼来』が『朱雲 蒼来』だと気づいた様子はない。

ごめんね・・・
逃げてしまった罪悪感が胸を占め、思わず心の中で謝った。

ごめんね、ソウくん。
私だけ逃げてしまって。
全ての重荷をソウくん一人に負わせてしまって。

ソウくんを前に、初めて双子の弟の苦しみに気づいた。
今まで考えようともしなかった自分が情けないけど、私には、どうしてあげることもできない。

どうせ1年後には、私は死ぬのだから。

だから、今更家に戻ったとしても待ち受ける運命は同じなのだ。

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