能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 6月

気づかないフリ

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「あ、ソラ!ちょっといいか?」

昼休み、お弁当を食べる場所を探して歩いていると、紫月先輩と遭遇した。
先輩の瞳にある心配するような色に、ああ、ルーモテクトのことか、と思い至った。

「はい、大丈夫ですよ。」

心の蓋がうっかり外れないように、慎重に答える。
今まで関わりがなかった人が相手なら大丈夫なんだけど、先輩を含めた身近だった人と話す時は、やっぱりまだ心を閉じるのが慣れなくて、緊張する。
先輩に連れられて向かった先は、初めて会った時と同じ、屋上だった。
あの時はまだちょっと肌寒かったけど、今は風が当たって心地良い。

「青龍から、話、聞いただろ?おれ、早くソラと話さなきゃって思ったんだけど、なかなか見つからなくて。遅くなった、ごめんな。」

教室まで行ったら、目立ってしまうと思って踏みとどまったらしい。
私からすればありがたい判断だった。

「いえ、ありがとうございます。青龍は普段、先輩と一緒にいるんですよね。」

青龍によると、青龍の主は私一人らしい。
でも、青龍は水の性なので、水の力をもつ先輩と共に、私を守っていくらしい。

「ああ・・・ソラ、大丈夫、なのか?」

眉を寄せ、労るように私を見つめてくる先輩。
私は本心をさらけ出してしまわないように、笑顔を貼り付けた。

「大丈夫ですよ。私なら平気です。先輩こそ、これから何が起こるか分からないので周囲には気をつけて下さい。あと・・・朱雲先輩にはこのこと、秘密でお願いします。」

屋上で、誰もいないから気にしなくていいのに、あえてカイお兄ちゃんのことを朱雲先輩と呼んだことに先輩は怪訝そうな顔をする。

これは・・・私なりの、決別、けじめ。

心の境界線を誤って越えないようにするための、制御。

「本当に、教えなくていいのか?」
「はい、お願いします。では先輩、失礼します。」

深々と頭を下げて屋上から出ようと踵を返す。

「ちょっ、待て!ソラ、本当にどうした?大丈夫なのか?」

後ろから肩を掴まれて、私はキュッと瞳を閉じた。

甘えたい。
先輩の優しさに、甘えてしまいたい。

でも・・・弱くなってしまう。

これで先輩にまで裏切られたら、離れていったら。

私が、壊れちゃう。

だから、近づきすぎないようにしなきゃ。
甘えないように、依存しないように。
心の境界線を、越えてしまわないように。

瞳を開いて、平常心、平常心と心で繰り返す。
にこやかに振り返って、先輩を見た。

「どうもしていませんよ。」

私は、平気です。

そう言って、今度こそ私は屋上から出ていった。
私の名前を呼ぶ紫月先輩の声に、気付かないフリをして。

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