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高校生編 7月
忠告
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「ソーラーちゃーん!」
「うぐっ!」
突然体を襲った鈍い衝撃に思わず声を漏らす。
なんだなんだ。
とりあえず私に向かって突っ込んできたものの正体を確認しようと私は視線を下に向ける。
そこには、橙色の物体がいた。
「・・・萌黄、くん。」
その名を口に出せば、大きな黄緑色の瞳でキッとこちらを見据えるようにして睨まれた。
うん、可愛い。
嘘くさいけど、可愛い。
「だーかーらー!萌黄くん、じゃなくて、春馬!は、る、ま!」
この子は、毎回私に下の名前で呼ばせようとする。
「はいはい、萌黄くん、ね。」
まあ、毎回私もスルーするのだけど。
これは、1つの線引きだ。
光陰部に絡まれることが多くなった今、間違っても絆されないように、馴染みすぎないように。
そのための、大事なライン。
「~!いつか絶対呼ばせてやるんだもんね!」
プクウッと頬を膨らませて睨まれた。
悪いけど、そのいつかは永遠に訪れないよ、萌黄くん。
そう思ったけど言葉にはせず、ただ困ったように微笑んだ。
「ねえ、ソラちゃん。」
ふと、真剣味を帯びた彼の声。
今までこんなこと、なかったのに。
「・・・何?」
少し警戒を強める。
一体何だというのだろう。
黄緑色の宝石が、意味ありげに瞬く。
「3年の、光陰部の先輩たちには近づかない方がいいよ。」
「え。」
3年の光陰部って。
カイお兄ちゃんに、富金原先輩、それから・・・翠野先輩。
『もう、2人には近づくな。』
温度のない、翡翠の瞳を思い出す。
青の髪、翡翠の瞳。
背筋が凍るほどの冷たい視線や声色こそ、普段の彼とは違うものの、その色合いは・・・翠野 天斗、彼のものだ。
あの時、彼が言った言葉と、タイミングよくあの場に現れたことを合わせて考えれば、導きだされる答えはただ一つ。
翠野先輩が、私を閉じ込めようと企てた主犯だということ。
おそらく、実行した女子生徒はいいように使われただけ。
「ここだけの話なんだけど、天斗先輩って、ヤバイよ?」
瞳を妖しく光らせる萌黄くんは、普段とはまるで違っていて。
やっぱり猫被りだったか、と思うと同時に、ヤバイ、とはどのようにヤバイんだろう、と疑問に思った。
翠野先輩といえば、明るくて、お調子者。
そんなイメージだ。
でも、あの時見た彼は、そんなイメージからはかけ離れていて。
「あの人・・・カイ先輩と、龍先輩に、依存してる。」
龍先輩って、富金原先輩のことか。
「依存・・・」
依存って、あれだよね。
この人がいなきゃ、ダメ!みたいなの。
それを、翠野先輩が、お兄ちゃんたちに?
「天斗先輩、あの2人に害があると判断したら、容赦なく排除しちゃうから。」
だから、気をつけてね?と告げた萌黄くんは、次の瞬間、いつものふわふわした笑顔になった。
無表情と笑顔のオンオフがあまりにも急すぎて、若干恐怖さえ感じた。
あー、でも、納得。
つまり、翠野先輩は、2人に近づいた私が、2人に害をなすものとみなして、排除しようとしたんだろう。
だから、近づくな、って言ったんだ。
「今の話、秘密だよ?」
ゆるゆるとした笑みさえ浮かべ、私の口元に人差し指を持っていった萌黄くん。
その目は笑っていない、けど。
「忠告、どうもありがとう。」
すっと口元におかれた彼の指をなぞり、ニコリと笑った。
そんな威圧に負ける私なはず、ないじゃないか。
でも、今の話は助かった。
原因さえ分かれば、あとは簡単。
3年組を避ければいいってことね。
・・・できるかどうか、分かんないけど。
特に、富金原先輩。
「うぐっ!」
突然体を襲った鈍い衝撃に思わず声を漏らす。
なんだなんだ。
とりあえず私に向かって突っ込んできたものの正体を確認しようと私は視線を下に向ける。
そこには、橙色の物体がいた。
「・・・萌黄、くん。」
その名を口に出せば、大きな黄緑色の瞳でキッとこちらを見据えるようにして睨まれた。
うん、可愛い。
嘘くさいけど、可愛い。
「だーかーらー!萌黄くん、じゃなくて、春馬!は、る、ま!」
この子は、毎回私に下の名前で呼ばせようとする。
「はいはい、萌黄くん、ね。」
まあ、毎回私もスルーするのだけど。
これは、1つの線引きだ。
光陰部に絡まれることが多くなった今、間違っても絆されないように、馴染みすぎないように。
そのための、大事なライン。
「~!いつか絶対呼ばせてやるんだもんね!」
プクウッと頬を膨らませて睨まれた。
悪いけど、そのいつかは永遠に訪れないよ、萌黄くん。
そう思ったけど言葉にはせず、ただ困ったように微笑んだ。
「ねえ、ソラちゃん。」
ふと、真剣味を帯びた彼の声。
今までこんなこと、なかったのに。
「・・・何?」
少し警戒を強める。
一体何だというのだろう。
黄緑色の宝石が、意味ありげに瞬く。
「3年の、光陰部の先輩たちには近づかない方がいいよ。」
「え。」
3年の光陰部って。
カイお兄ちゃんに、富金原先輩、それから・・・翠野先輩。
『もう、2人には近づくな。』
温度のない、翡翠の瞳を思い出す。
青の髪、翡翠の瞳。
背筋が凍るほどの冷たい視線や声色こそ、普段の彼とは違うものの、その色合いは・・・翠野 天斗、彼のものだ。
あの時、彼が言った言葉と、タイミングよくあの場に現れたことを合わせて考えれば、導きだされる答えはただ一つ。
翠野先輩が、私を閉じ込めようと企てた主犯だということ。
おそらく、実行した女子生徒はいいように使われただけ。
「ここだけの話なんだけど、天斗先輩って、ヤバイよ?」
瞳を妖しく光らせる萌黄くんは、普段とはまるで違っていて。
やっぱり猫被りだったか、と思うと同時に、ヤバイ、とはどのようにヤバイんだろう、と疑問に思った。
翠野先輩といえば、明るくて、お調子者。
そんなイメージだ。
でも、あの時見た彼は、そんなイメージからはかけ離れていて。
「あの人・・・カイ先輩と、龍先輩に、依存してる。」
龍先輩って、富金原先輩のことか。
「依存・・・」
依存って、あれだよね。
この人がいなきゃ、ダメ!みたいなの。
それを、翠野先輩が、お兄ちゃんたちに?
「天斗先輩、あの2人に害があると判断したら、容赦なく排除しちゃうから。」
だから、気をつけてね?と告げた萌黄くんは、次の瞬間、いつものふわふわした笑顔になった。
無表情と笑顔のオンオフがあまりにも急すぎて、若干恐怖さえ感じた。
あー、でも、納得。
つまり、翠野先輩は、2人に近づいた私が、2人に害をなすものとみなして、排除しようとしたんだろう。
だから、近づくな、って言ったんだ。
「今の話、秘密だよ?」
ゆるゆるとした笑みさえ浮かべ、私の口元に人差し指を持っていった萌黄くん。
その目は笑っていない、けど。
「忠告、どうもありがとう。」
すっと口元におかれた彼の指をなぞり、ニコリと笑った。
そんな威圧に負ける私なはず、ないじゃないか。
でも、今の話は助かった。
原因さえ分かれば、あとは簡単。
3年組を避ければいいってことね。
・・・できるかどうか、分かんないけど。
特に、富金原先輩。
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