能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 7月

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しまった!
先輩たちに気を取られて、妖怪の気配に気づかなかった!
悲鳴が喉の奥で凍る。
目を大きく見開いたまま、体が動かない。
転生して初めて、生命の危機を感じた。
と、その時。

「我が名は富金原 龍之翼。富金原の血を受け継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。」

力強い声が耳に届き、そして、肌が熱さを感じた。
ジュッ、と音がして、一瞬妖怪の動きがとまる。
その瞬間を見逃さず、私は陽月さんの腕をとって妖怪から距離を取った。

ガラガラッ!

「おい、何が・・・え?」

最っ悪!
心の中で悪態をつく。
扉の向こうには、光陰部が勢揃いしていた。
図書室の中の様子を見るなり固まったカイお兄ちゃんと、目が合う。
どうしよう!?とお互いに目でつたえるけどいい考えなんて出てこない。
とにかくこの妖怪をどうにかしなきゃ!
この妖怪、属性は・・・うそ!
こんなの、知らないんですけどっ!?

「紫月先輩、いますか!?」
「え?いや、今日は風邪で休みだ!」

こんな時に・・・!
さっとメンバーを確認するけど、妖怪の属性を見極められる人はいない。
おまけに・・・

「こいつ、属性は水だ!」

富金原先輩の火に対する反応を見て、間違った判断が下される。
水じゃ、ないのに!
どうしよう、ここで私が口をだしたら、秘密がバレてしまう。
でも、このままじゃ!
水は、土に負ける。

「我が名は朱雲 海。朱雲の血を受け継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。土よ、彼の者を貫け。」

しまった!
妖怪は、カイお兄ちゃんの土属性の攻撃を吸収して。

「なっ!?」

一回り大きくなった。
私のせいだ。
私が足踏みしたから。
あの妖怪は、今みで見たこともなかったけど、2属性を持っている。
水と、風。
風は、土に勝つ。
パワーアップした妖怪は、視界にカイお兄ちゃんを捉えた。

「危ない!」

風が吹く。
そして・・・

「カイお兄ちゃん!」

カイお兄ちゃんの姿を見て、思わず駆け寄った。
私の呼び方に、その場の空気が凍ったのが分かったけど、そんなのどうだっていい。
カイお兄ちゃんの脇腹から、赤い血が流れ出している。
きっと、風で貫かれたんだ。
カッと頭が熱くなった。
許せない。
秘密とか、もうこの際どうだっていい。
ユラリと立ち上がり、妖怪と向き合った。

「我が名は朱雲 蒼来。魂の記憶を引き継ぐ者。我が名の下に、我が力を行使する。」

言葉を発したとき、誰かぎ息を呑んだのが聞こえた。
2属性なら、その二つの弱点を同時にお見舞いしたいところだけど。
水の弱点は土。
でも土を使うと、風属性もあるためパワーアップしちゃう。
なら先に、風を潰す。
風での弱点は、火。

「火よ、彼の者を焼き尽くせ。」

本に火がかからないよう、威力をコントロールしながら火を操る。
私が放った火は、妖怪の風を巻き込み、焼き尽くす。
炎が小さくなったときには、妖怪は半分ほどの大きさになっていた。
残るは、水の部分だけ。
水には、土を。

「土よ、邪悪を貫け。」

ザッと音がして、土が槍状のものとなって妖怪を文字通り貫いた。
そして・・・消えた。

「すげ・・・」

感嘆の声を漏らしたのは誰だったか。
私はすぐにカイお兄ちゃんの傍らに座った。

「お兄ちゃん、すぐ手当てするね。」
「ああ、お願い。」

小さく頷かれ、私はカイお兄ちゃんの患部に手を添える。

「ちょっ、待て!何するつもりだ!?」

慌てる翠野先輩を一瞥して、私はそっと目を瞑った。

「聞いてるのか!?病院に!」
「黙ってください。」

集中できない。
病院なんかより、力を使った方がよっぽど確実。
そうして私は、自分の力をカイお兄ちゃんに注ぎながら以前青竹くんにそうしたように、治癒の力を使った。
ただ複数の属性を組み合わせて使うだけだけど、やっぱり集中力が必要。

「ありがとう、ソラ。」

全てが終わったとき、私はけっこう疲労を感じていた。


「おい、カイ、蒼来。これはどういうことだ?」


富金原先輩の質問に、思わず私はカイお兄ちゃんを見てしまった。
どうしよう・・・?


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