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高校生編 7月
願わくば、 ~白川 奏矢side~
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「火よ、水よ、土よ、風よ。その力を示せ。」
桐谷さん・・・いや、蒼来の凜とした声が空気に溶けていく。
と、次の瞬間。
「っ!」
ズドン、と一気に空気が重くなった。
なんだこれ、息がしづらい。
ブワリと嫌な汗がにじむ。
「これが、私の力の属性。四つの属性すべてを持っています。」
蒼来の方を見れば・・・ウソだろ。
火、水、土、風。
四属性それぞれの色である赤、青、黄、緑が蒼来をとりかこむようにして美しく、力強く輝いている。
あんなの、見たことない。
四属性全部持ってるなんて・・・
二属性持ちは、遠い昔にいたとかいないとか聞いたこともあるけど、四属性。
数時間前の自分だったら、なんだそれ、と一笑に付していただろうに。
この光景を見せられたら、信じるしかない。
彼女は、本当に四つの力を持っているんだ。
それだけじゃない。
この、力。
圧倒的な、この力。
僕たちはみんな、指一本動かせずにただただ目を見開いて四つの光を見つめることしかできない。
彼女が力をふるうだけで、空気が重くなって、尋常じゃない威圧感が体を襲う。
「―――ソラ。」
温かい音色が彼女の名前を紡いで、時が動き出した。
「そろそろ、いいんじゃないかな。みんなが苦しそうだ。」
「・・・あ、ごめん!忘れてた。」
僕にとって、朱雲会長は、完璧な人。
なんでもできて、冷静で、穏やかで。
富金原先輩や翠野先輩の前ではどこか砕けたようなところもあったけれど。
こんな、こんな声、聞いたことがない。
温かくて、優しくて―――愛しくてしょうがない、って声。
笑いあう2人は、確かに兄妹だった。
そこまで思って、チラと彼の方を見る。
何を考えているか、分からないな。
でも、彼・・・蒼羽もまた、朱雲会長と同じようにあまりダメージを負っていないようだ。
朱雲家は、特別。
能力は、遺伝によって後世へと受け継がれる。
必然的に能力者の家系というのは定まって、その世界でのネットワークも形成される。
なぜだかわからないけれど、能力者の家は社会的地位が高い。
能力に関わらず、ハイスペックな人間が多いのだ。
もしも神とやらがいるのなら。
僕たち能力者に能力を与えて、妖怪との闘いを強いていることの引き換えとしているのかもしれない。
でも、そんな能力者の家系の中でも、種雲はずばぬけている。
彼らが受け継ぐ能力自体は、ずばぬけて強力とか、そういうんじゃない。
でも、何かが違うんだ。
『朱雲の血は、そう簡単に隠せるものじゃない。』
さっき、蒼羽が言っていた。
その言葉は、まさしく核心をついていると思う。
朱雲の人間は、負けを知らない。
勉学でも、スポーツでも、人としての魅力も、リーダーとしての統率力も。
それが、朱雲。
思い浮かぶのは、前期考査の結果。
あのとき、蒼羽が、朱雲蒼羽が、蒼来に負けた。
朱雲の人間が、負けたのだ。
でもそれも、蒼来が朱雲ならば納得できる。
蒼羽はきっと、薄々気付いていたんだろう。
僕たちだって、そう。
彼女が朱雲だなんて分からなくても、みんな、大なり小なり惹かれていた。
どんな形であれ、彼女を無視できなくて。
僕たちを魅了してしまう何かが、彼女にはあるんだ。
ほう、と息をついて、目を細めて蒼来を見た。
なんだか、彼女がまぶしい。
朱雲の事情は分からないし、彼ら兄妹三人の間にうずまく感情も、当事者じゃないから分からない。
けれど。
「それで、蒼来。お前はこれから、どうしたいんだ?」
願わくば、僕たちと共にある未来を選んでほしい。
無茶なことだと分かっている。
けど、声をあげた富金原先輩をはじめとして、僕らはきっと、同じ気持ち。
蒼来のことを、もっと知りたい。
ただ、その気持ちだけは、偽ることなく存在している。
桐谷さん・・・いや、蒼来の凜とした声が空気に溶けていく。
と、次の瞬間。
「っ!」
ズドン、と一気に空気が重くなった。
なんだこれ、息がしづらい。
ブワリと嫌な汗がにじむ。
「これが、私の力の属性。四つの属性すべてを持っています。」
蒼来の方を見れば・・・ウソだろ。
火、水、土、風。
四属性それぞれの色である赤、青、黄、緑が蒼来をとりかこむようにして美しく、力強く輝いている。
あんなの、見たことない。
四属性全部持ってるなんて・・・
二属性持ちは、遠い昔にいたとかいないとか聞いたこともあるけど、四属性。
数時間前の自分だったら、なんだそれ、と一笑に付していただろうに。
この光景を見せられたら、信じるしかない。
彼女は、本当に四つの力を持っているんだ。
それだけじゃない。
この、力。
圧倒的な、この力。
僕たちはみんな、指一本動かせずにただただ目を見開いて四つの光を見つめることしかできない。
彼女が力をふるうだけで、空気が重くなって、尋常じゃない威圧感が体を襲う。
「―――ソラ。」
温かい音色が彼女の名前を紡いで、時が動き出した。
「そろそろ、いいんじゃないかな。みんなが苦しそうだ。」
「・・・あ、ごめん!忘れてた。」
僕にとって、朱雲会長は、完璧な人。
なんでもできて、冷静で、穏やかで。
富金原先輩や翠野先輩の前ではどこか砕けたようなところもあったけれど。
こんな、こんな声、聞いたことがない。
温かくて、優しくて―――愛しくてしょうがない、って声。
笑いあう2人は、確かに兄妹だった。
そこまで思って、チラと彼の方を見る。
何を考えているか、分からないな。
でも、彼・・・蒼羽もまた、朱雲会長と同じようにあまりダメージを負っていないようだ。
朱雲家は、特別。
能力は、遺伝によって後世へと受け継がれる。
必然的に能力者の家系というのは定まって、その世界でのネットワークも形成される。
なぜだかわからないけれど、能力者の家は社会的地位が高い。
能力に関わらず、ハイスペックな人間が多いのだ。
もしも神とやらがいるのなら。
僕たち能力者に能力を与えて、妖怪との闘いを強いていることの引き換えとしているのかもしれない。
でも、そんな能力者の家系の中でも、種雲はずばぬけている。
彼らが受け継ぐ能力自体は、ずばぬけて強力とか、そういうんじゃない。
でも、何かが違うんだ。
『朱雲の血は、そう簡単に隠せるものじゃない。』
さっき、蒼羽が言っていた。
その言葉は、まさしく核心をついていると思う。
朱雲の人間は、負けを知らない。
勉学でも、スポーツでも、人としての魅力も、リーダーとしての統率力も。
それが、朱雲。
思い浮かぶのは、前期考査の結果。
あのとき、蒼羽が、朱雲蒼羽が、蒼来に負けた。
朱雲の人間が、負けたのだ。
でもそれも、蒼来が朱雲ならば納得できる。
蒼羽はきっと、薄々気付いていたんだろう。
僕たちだって、そう。
彼女が朱雲だなんて分からなくても、みんな、大なり小なり惹かれていた。
どんな形であれ、彼女を無視できなくて。
僕たちを魅了してしまう何かが、彼女にはあるんだ。
ほう、と息をついて、目を細めて蒼来を見た。
なんだか、彼女がまぶしい。
朱雲の事情は分からないし、彼ら兄妹三人の間にうずまく感情も、当事者じゃないから分からない。
けれど。
「それで、蒼来。お前はこれから、どうしたいんだ?」
願わくば、僕たちと共にある未来を選んでほしい。
無茶なことだと分かっている。
けど、声をあげた富金原先輩をはじめとして、僕らはきっと、同じ気持ち。
蒼来のことを、もっと知りたい。
ただ、その気持ちだけは、偽ることなく存在している。
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