大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

ユーリ

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私は母さまを殺してしまったのです

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「ねえエリン、あなた、まだ神力を使わないの?」
「あ・・・はい。父さまが、私に使ってほしくないみたいなので。」

神力。それは天使と神だけに許された力のことです。
人間界にいる人間や魔族、獣族たちが使うのは魔力です。

天使には生まれた時から神力が宿っていて、大体5歳くらいになったら力を扱う練習を始めるのですが・・・

「エリンはもう14歳なのよ?私達だって随分昔から練習しているのに。」

不満げに口をとがらせているカリンに私は困ったように笑みを浮かべました。
分かっては、いるのですが・・・

「確かに、エリンも神力を使えるようにならなきゃいけないな。いかにエル様が過保護だったとしても、エリンの年まで力を使わせないようにしているというのは少し度が過ぎている。それに、いつまでも力を使えないのでは一人前の天使として認められないだろう。」

シンの的を射た意見に、私はうつむきました。
私だって、分かっているのです。
うつむいた時に、首から下げているペンダントが目に入りました。
金色に輝くペンダント。

「なあ、なんでエル様はエリンに力を使わせたくないんだ?」

カイの純粋な疑問が、胸に突き刺さります。
悪意はないのでしょうが・・・

「そのペンダントが、エリンの力が暴走しないように漏れ出る力を吸い込んでいるんでしょ?どうしてそこまでしてエリンの力を使わせないようにしてるのか、教えてもらってもいい?」

カリンも興味を持ったようで、私に近づいてきました。
みんなの視線が、私に集まります。

・・・みんなになら、話してもいいのかもしれません。
そう思って、乾いた唇をなめました。

「私は母さまを殺してしまったのです。」

この、力で。
私のせいで、母さまは死にました。

室内が、しんと静まり返りました。
みんな、何て言えばいいのか迷っているような、そんな顔。

「なんで私には母さまがいないのか、父さまに尋ねてみたことがあります。その時ははぐらかされてしまいましたが、後になって人から聞きました。私の力は、とても強いんだそうです。」

父さまは、私が母さまについて尋ねると困ったような顔をします。
決して私に母さまがいない理由を教えようとはしませんでした。
けれどある日、近所の人が噂しているのを聞いてしまったのです。

「大きすぎる力は、母親への負担になります。私は生まれる時に、この力で、母さまの体を壊してしまったのです。それで母さまは、私を産むと同時に亡くなってしまいました。」

母さまがいないのは、私のせいです。
父さまは私のことを愛してくれています。
でも、私が力を使わないように、さりげなくその話題を避けているのです。

直接確認したことはありませんが、この年まで力を制御する練習を私にさせていないのが、証拠です。

「父さまは、私の力が憎いのです。大好きな母さまを殺した力だから。」

今まで誰にも言ってこなかったこと。
胸にずっと抱えていた、私の罪。

それを吐き出すと、そんなつもりはなかったのに目に熱いものがこみあげてきて、涙が頬を濡らしました。
泣いちゃ、ダメなのに。

本当に泣きたいのは、父さまなんです。
私に泣く資格なんて、ない・・・

ゴシゴシと目をこすっていると、温かい手が、私の顔をつつみました。

「カリン・・・?」

涙で歪む視界には、少し怒ったようなカリンがいました。
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