大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

ユーリ

文字の大きさ
4 / 44

きっと大丈夫

しおりを挟む

「カリン・・・?」

少し怒ったような、カリンの顔。
どうしたんでしょうか。

「バカじゃないの。」
「え・・・」

いつか三人には打ち明けるかもしれないと思って、その時の反応を想像してみたことがあります。
でもまさか、バカじゃないのと言われるなんて・・・

「エル様はそんなこと思ってない!むしろエリンがそんなこと思ってたなんて知ったら、すっごく悲しむ!」
「カリン・・・でも。」

でも、本当のことです。
父さまが私の力を憎らしく思ってしまうのは、しょうがないことなのです。

「エリン、それ、エル様に確認したか?」
「ううん・・・」

シンが言うように、確認できたらどれだけよかったことか。
変にその話を持ち出して、父さまに思い出させたくないし、何より。

「確認して、肯定されたら、私、私・・・」

立ち直れなくなっちゃう。
拒絶されたくない。
嫌われたくない。
そんな思いから、私は父さまに確認できないのです。

「難しいこと考えずにさ、スパッと聞いてみろよ。どうにかなるって!」

楽天的なカイの言葉。

「私も、本当は聞きたいんです。でも、怖くて。」

そう、本当は直接確かめたいのです。
直接確かめなくては、何も変わらないことは、分かってます。

「じゃあ聞こう!大丈夫、絶対悪いようにはならないから。」
「カリンの言う通り、絶対に大丈夫だ。僕が保証する。」
「オレも保証するぞ!何が何でも、大丈夫だ!」

力強い、幼なじみたちの言葉。
大丈夫。
私が聞きたかったのは、たぶん、この言葉だったんです。
きっと大丈夫。
だから、勇気を出して。


        *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

「父さま、あの、お話があるのです。」
「ん?」

夜、お仕事から帰ってきた父さまに声をかけます。
心臓が、ドクドクと音を立てます。

「父さまは、父さまは・・・」

怖くて、言葉が尻すぼみになってしまいます。

『大丈夫』

三人がくれた言葉を思い出して、ゆっくり息を吸いました。

まっすぐに父さまを見つめます。
もう、逃げません。

「父さまは、私の力が憎い、ですか?」

ああ、言いました。
やっと言えました。
ずっとずっと言いたくて、でも言えなかったこと。

父さまを見ると、父さまはポカンとした顔をしています。

「え。なんでそんなこと思ったの?」

「私の力のせいで、母さまが亡くなってしまったから。だから、私に力を使わせないようにしているんですよね。」

胸にかかる金色のペンダントを握りしめます。
怖くて、思わずうつむいてしまいそうですが、ダメです。
背中を押してくれた三人のためにも、ここでしっかりと父さまと向き合わないと。

「そんなこと・・・」

いつのまにか、父さまはうつむいてしまっています。

「そんなこと、思ってるわけないじゃないかっ!エリンは、エリンは僕たちの宝なんだ。母さまもそんなこと、絶対に思ってない。」

父さまに抱き寄せられて、私は目を閉じました。
ずっとずっと、この言葉が聞きたかったのです。

「確かにね、エリンの力に耐えきれなくて、母さまは亡くなってしまった。でも、母さまは自分が死んでしまうことを覚悟で、それでもエリンを産みたいと言ってエリンを産んだんだ。命に代えても、エリンに生を与えたかったから。」

母さま・・・
父さまから初めて聞く、母さまの話。

「親の愛情を舐めないでほしいな、エリン。もちろん母さまには生きていてほしかったけど、でもエリンのせいだなんて考えたこと、微塵もない。エリンは僕の、唯一の宝なんだから。」
「父さま・・・ごめんなさい、ありがとうございます。」

ごめんなさい、バカな勘違いをしてしまって。
ありがとうございます、私を愛してくれて。

私も父さまが、大好きです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...