泡になるはずだった人魚姫を救ったのは、王子の側近でした

ユーリ

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2日目

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「大丈夫ですか?」

心配そうに私をのぞき込むノアに、コクリとうなずく。
ぐっと足に力をこめる。
地面に立つのは久々のような気がする。
実際には昨日一日立たなかっただけど、最後に立ったのが、ずいぶん昔のことのように思える。
脳内に、眠る王子と落ちた刃物がよぎって慌てて首を振った。

・・・そういえば、刃物、どうなったんだろう。
王子の寝室に刃物が落ちていた、なんて、大事になっているんじゃないだろうか。

「ああそれと、王子の寝室にあったものですが、私が処分しておきました。」
「っ!」

エスパーですか、ノアさん。
思わずそうつっこんでしまいそうなタイミングで言われ、括目する。
ノアはそんな私に困ったように微笑んで、その長い指を私の唇に添えた。

「姫にも何らかの事情があったのだと思います。詳しく聞こうとはしないので安心してください。」

この話は、ここで終わりです。
そう言われてしまって、私はうなずいた。
それはとても助かる、けど。
ノアは王子の側近。
それでいいんだろうか。
視線をやればあ、何もかも分かっているようにノアが片目を瞑った。

「言ったでしょう?あなたを口説き落とす、と。私情をはさみまくりですが、あなたには傍にいてもらわなくては。それに、姫が王子に害を為すとは到底思えません。」

く、口説きおとす、って・・・!
そんなことを言って、果たしてこの人は恥ずかしくないのだろうか。
熱くなっていく頬を自覚しつつ見上げれば、ノアは照れ一つ見せていない。
なんか・・・ずるい。
私ばっかり赤くなってる。
プクウッと知らず知らず頬を膨らませていた。
そんな私にクスリと笑って、ノアは視線を私の足に移した。

「足、今は大丈夫そうですね。」
「・・・?」

今は?
どういうことだろう?
私の疑問を知ってか知らずか、労わるように頭を撫でられた。

「姫はいつも、足を痛そうにしておられたので。」

あ・・・
確かに私は、魔女のおかげで人間の体を手に入れたけど、足には常に焼け付くような痛みが付きまとっていた。
王子の傍にいれるのならと我慢していたけど。
なのに、今は痛み一つない。
うそ・・・
信じられない、と目を見開いて、恐る恐る歩いてみた。
ほんとに、痛くない。

「よかったです、痛みがないようで。少し、お薬を使いましたが大丈夫なようですね。」

薬?ノアが?
だからこんなに楽なの?
ぺこりと頭を下げる。
ありがとうございます!
口にだしてお礼を伝えられないのがもどかしい。
でも、ずっと悩ませられていた痛みが消えたというのはとっても嬉しくて。
自然と笑みがこぼれる。

「どういたしまして。」

ここで初めて、ノアが照れくさそうな笑みを見せた。
それがなぜか、妙に心に残った。
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