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第2章 いざ異世界
4、仲直りの朝食
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冷静になって考えてみれば、カイリの言っていたことは最もだった。
まるで覚えのない異性から言い寄られ『あなたはこうだよね』と勝手に自分の内面を決めつけられたりしたら、百花だって不快な気分になるだろう。
(後悔先立たずーー)
とんでもない失敗をしてしまった。
けれど、リカバリーの方法がすぐには思いつかなかった。その日は放心状態のまま一日を過ごし(オウルに心配された)、夜にはカイリの姿はなく、朝になっても気配はなかった。外泊してきたのだろうか。それとも百花が眠っている間に帰ってきて、また朝に出て行ったのかもしれない。
このままじゃ完全に嫌われる。
いや、今ですらそうなのだろうけれど、おそらく時がたてばたつほど、カイリは頑なに百花を拒むだろう。
(そんなんじゃだめだ。せっかく会えたのに!)
怒っている相手には、真心をこめて謝り続けるしかない。
(そして、わたしはもう受け入れないといけないんだーー)
カイリが自分を忘れているという事実を。思い出すかどうかは未知数だけれど、少なくともカイリ自身は思い出したいなんてこれっぽっちも思っていない。
それはものすごく寂しいことで、百花を孤独に突き落としたが、それでも百花の中でカイリを恋しいと思う気持ちは消えなかった。
だとしたら、自分がやるべきことは一つ。
百花はすぐにオウルから文字を習った。
それまでは識字に関しては、とりあえずメニューが読めればいいくらいのモチベーションの低さだったが、一変した。カイリはきっと百花を顔を合わせたくないだろう。そんな人に気持ちを伝えるには、手紙しかない。
こちらの国の文字は、日本語とも英語ともまるで違う、しいていうならばアラビア文字のような一見して難解なものだ。だから手紙と言っても、すぐには大したことは書けなかった。
『おはよう』『おつかれさま』『おやすみなさい』『あいたい』『ごめんなさい』
百花のレパートリーはこれだけだ。
まず『ごめんなさい、あいたい』と手紙を書いて、夜眠る前にカイリの部屋の前に置いた。朝起きた時には回収されていたから、読んではもらえたらしい。それならばと百花は毎日手紙を書いた。『おつかれさま。あいたい』とか『おはよう。あいたい』とか、とりあえず会いたいという気持ちを前面に押し出した、下手したらストーカーと訴えられそうな手紙をひたすらカイリの部屋の前に置き続けた。
そうして二週間が過ぎた。
百花はあれ以来カイリと顔を合わせていない。三日に一度は来ていたというオウルの店に食事にも来ないから、完全に避けられている。このまま約束の期限になるまでこのままなんだろうかと思うと絶望しかけたが、それでも毎日手紙を置いた。
ある朝いつものように『おはよう。あいたい』と書いた手紙をドアの前に置いたところで、内側からそれが開いた。
「……毎日のそれ、やめてくれない?」
ぶすっとした表情でカイリが百花を見下ろしている。寝起きらしく少しぼさっとした髪と、その下で細められた目はどこかぼんやりとした光をこぼしている。
(会えた! カイリに会えた!)
もうこの機会を逃してはならないと、百花は勢いよく頭を下げた。
「この間は無神経なことして、本当にごめんなさい!」
カイリからの反応はなかったが、百花は顔をあげて「もうあんなこと言わない。カイリのことを自分の記憶と重ねたりしないから、改めてわたしと知り合ってくれないかな。お願いします!」と必死でうったえた。
カイリは目を見開いた状態で百花を見つめてくる。
信じられないと表情で言っていた。彼にとって百花の行動は、まるで理解できないもののようだ。
ぐっと胸をつかまれたような痛みが走るけれど、負けるわけにはいかない。百花は目をそらさずに、視線に願いを込めた。
やがてカイリは小さく息を吐くと、片眉をあげた。
「なんでそんなに必死なの?」
(そりゃ、カイリのことを好きだからだけど、それを言ったら、また嫌な気持ちにさせるんだろうな……)
今でも気持ちが残っていると伝えれば、またこの間の二の舞だ。
でも、それ以外の理由なんてあるんだろうか。
どう答えたらいいのかわからない。
けれど、曖昧にごまかしたくもない。
「……だって、せっかく会えたんだし、こうして家に置いてもらってるわけだし、一緒にいる時間は楽しくすごしたいじゃん」
たとえカイリが百花を忘れているとしても、百花はカイリを忘れていない。
会いたいと願っていた人だから、また近づきたいと思うから、どうしても諦めたくないのだ。
「僕があなたを知らなくても?」
「もう切り替えたから大丈夫。わたしの知ってるカイリとあなたは、同じ顔の別人だってーーそう思ってるから」
今はまだ完全に切り替えられたわけではないけれど、ひたすら思い込めばいつかきっとそれが自分にとっての事実に変わっていくはずだ。悲しくなんかない。思い出の中のカイリは生きている。
カイリの沈黙は重く、とても長く感じた。まだ疑われてると感じて、百花は焦って言い募った。
「ほ、ほんとだって! パラレルワールドだと思うことにしたんだって! それなら説明つくし、なんとなく納得もできたから!」
「パラレルワールドって何」
「え? えーと…別次元の平行世界、だっけ? なんかとりあえず似てるけど違う世界ってこと!」
「そんなのあるの?」
「いや、実際あるかはわかんないけど、あるって前提にすればあるっていうか……」
「意味わかんない」
「で、ですよねー」
年下相手にしどろもどろしている自分がアホすぎて、泣きたくなる。カイリがしっかりしすぎているのだ。本当に十八歳か!?
あーとかうーとか言っている百花をしばらく眺めていたカイリだったが、ふっと肩の力を抜いて、かすかに口元をゆるませた。
「もういいよ。わかったことにしてあげる」
そう告げられて驚きに目をむく百花に「今日は僕が朝ごはん作ってあげるよ」と言い置いて、カイリは自室のドアを閉じた。
「できたら呼ぶから、部屋で待ってて」
ドアの向こうから声がかかり、百花は慌てて「あ、ありがとう!」と返事をした。
夢のようだ、と思った。急いで部屋に戻って、やりとりを何度も繰り返し、ようやく現実かもしれないと思い始めたところで「できたからおりてきて」と声がかかる。
(現実だ……)
思わず百花は泣いた。
◆
カイリが作ってくれたのは、トルティーヤと豆のスープだった。トルティーヤには、マイルドベリーのジャムが添えられている。いちごとブルーベリーの合いの子のようなこの果実は少し酸味が強いが、砂糖と煮詰めたジャムはとても美味しい。オウルもよく大量に作っては、デザートに使ったり、小瓶につめて売ったりしている。
「美味しそう!」
食卓についた百花は感動のあまり、また涙ぐんでしまった。オミの国でカイリが作った料理を食べるのは初めてだ。大した時間もかからずにこれだけ作れるのだから、さすがの一言に尽きる。
いただきます、と両手を合わせて、まずは湯気のたつスープを一口すする。
豆の風味が柔らかく広がる。塩加減もちょうどよくて、朝にぴったりの味だった。ジャムをつけて食べるトルティーヤも美味しい。ぱくぱくと食をすすめながら「すごく美味しいよ。カイリは料理上手だね」と百花は惜しみなく賛辞を送った。対するカイリは「これくらい普通だよ」と肩をすくめる。謙遜している様子はなく、本心からそう思っているようだった。
「そうかなぁ。このスープなんて味の濃さも絶妙だし、お豆も柔らかいし、本当に美味しいよ?」
「……それは、どうも」
カイリは困ったように頭をかいて「まあ、僕も」と少しだけトーンを落として言った。
「この間は少し、大人気なかった、と思う。ーーごめん」
「そんなことないよ。後になって考えたら、カイリの反応は当然だと思うもん。嫌だよね、知らない人になんか色々押し付けられたらさ」
百花はカラカラと笑って「カイリは全然悪くないから大丈夫!」とうなずいた。カイリは虚をつかれたような表情だ。百花は更に「悪いのは百パーセントわたしだって! だからカイリは何にも気にしなくていいんだよ」とたたみかけた。それはまごうことなき本心なのだが、カイリは奇妙な表情のまま口をつぐんだ。
(あれ、わたし変なこと言った?)
お互い見つめあい、奇妙な沈黙が落ちる。カイリが口を開かない様子だから、百花は「……一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」と切り出してみる。
「なに?」
普通に返答があることに内心感動しながら、百花は「好きな料理教えてほしい!」と身を乗り出した。
「朝ごはん作るときチャレンジしたいから、ぜひ教えて!」
カイリは何度も瞬きして百花を見つめる。あどけない表情は愛らしく、それこそ少年らしい。彼の年齢はれっきとした大人と認定されているけれど、見た目はやっぱり少年のようだ。
(相変わらずかわいい……)
眼福だ……とこっそり心の中で手を合わせる。
カイリは目が大きいから、視線が強いと光線でも出ているんじゃないかというオーラがある。けれど、こんなふうに柔らかい表情の時は底抜けに愛らしい小動物のようだ。
カイリは何度か瞬きした後、バツが悪そうに視線をそらした。
「変なこと聞くね」
「そう?」
「……別に特別好きなものなんてないよ」
「えー、それだと、わたし好みの朝食になっちゃうよ? いいの?」
「それでいいよ」
(そんなこと言いつつ、またスフレパンケーキとか出したら怒るかな……)
まあそのあたりは様子を見てからにしよう。まずは、あたりさわりのないオミの国流の朝食をオウルに聞いてみて、それを作ればいい。
カイリにとって百花は、きっとまだマイナス印象の強い存在だろう。
けれど、こうして関わる機会を作れるようになったということは、その印象を少しずつでも変えていけるということ。
(恋人になれなくても、せめて友達くらいのポジションになりたい!)
心の中でメラメラと闘志を燃やし、改めて百花は日々を精一杯生きることを誓った。
まるで覚えのない異性から言い寄られ『あなたはこうだよね』と勝手に自分の内面を決めつけられたりしたら、百花だって不快な気分になるだろう。
(後悔先立たずーー)
とんでもない失敗をしてしまった。
けれど、リカバリーの方法がすぐには思いつかなかった。その日は放心状態のまま一日を過ごし(オウルに心配された)、夜にはカイリの姿はなく、朝になっても気配はなかった。外泊してきたのだろうか。それとも百花が眠っている間に帰ってきて、また朝に出て行ったのかもしれない。
このままじゃ完全に嫌われる。
いや、今ですらそうなのだろうけれど、おそらく時がたてばたつほど、カイリは頑なに百花を拒むだろう。
(そんなんじゃだめだ。せっかく会えたのに!)
怒っている相手には、真心をこめて謝り続けるしかない。
(そして、わたしはもう受け入れないといけないんだーー)
カイリが自分を忘れているという事実を。思い出すかどうかは未知数だけれど、少なくともカイリ自身は思い出したいなんてこれっぽっちも思っていない。
それはものすごく寂しいことで、百花を孤独に突き落としたが、それでも百花の中でカイリを恋しいと思う気持ちは消えなかった。
だとしたら、自分がやるべきことは一つ。
百花はすぐにオウルから文字を習った。
それまでは識字に関しては、とりあえずメニューが読めればいいくらいのモチベーションの低さだったが、一変した。カイリはきっと百花を顔を合わせたくないだろう。そんな人に気持ちを伝えるには、手紙しかない。
こちらの国の文字は、日本語とも英語ともまるで違う、しいていうならばアラビア文字のような一見して難解なものだ。だから手紙と言っても、すぐには大したことは書けなかった。
『おはよう』『おつかれさま』『おやすみなさい』『あいたい』『ごめんなさい』
百花のレパートリーはこれだけだ。
まず『ごめんなさい、あいたい』と手紙を書いて、夜眠る前にカイリの部屋の前に置いた。朝起きた時には回収されていたから、読んではもらえたらしい。それならばと百花は毎日手紙を書いた。『おつかれさま。あいたい』とか『おはよう。あいたい』とか、とりあえず会いたいという気持ちを前面に押し出した、下手したらストーカーと訴えられそうな手紙をひたすらカイリの部屋の前に置き続けた。
そうして二週間が過ぎた。
百花はあれ以来カイリと顔を合わせていない。三日に一度は来ていたというオウルの店に食事にも来ないから、完全に避けられている。このまま約束の期限になるまでこのままなんだろうかと思うと絶望しかけたが、それでも毎日手紙を置いた。
ある朝いつものように『おはよう。あいたい』と書いた手紙をドアの前に置いたところで、内側からそれが開いた。
「……毎日のそれ、やめてくれない?」
ぶすっとした表情でカイリが百花を見下ろしている。寝起きらしく少しぼさっとした髪と、その下で細められた目はどこかぼんやりとした光をこぼしている。
(会えた! カイリに会えた!)
もうこの機会を逃してはならないと、百花は勢いよく頭を下げた。
「この間は無神経なことして、本当にごめんなさい!」
カイリからの反応はなかったが、百花は顔をあげて「もうあんなこと言わない。カイリのことを自分の記憶と重ねたりしないから、改めてわたしと知り合ってくれないかな。お願いします!」と必死でうったえた。
カイリは目を見開いた状態で百花を見つめてくる。
信じられないと表情で言っていた。彼にとって百花の行動は、まるで理解できないもののようだ。
ぐっと胸をつかまれたような痛みが走るけれど、負けるわけにはいかない。百花は目をそらさずに、視線に願いを込めた。
やがてカイリは小さく息を吐くと、片眉をあげた。
「なんでそんなに必死なの?」
(そりゃ、カイリのことを好きだからだけど、それを言ったら、また嫌な気持ちにさせるんだろうな……)
今でも気持ちが残っていると伝えれば、またこの間の二の舞だ。
でも、それ以外の理由なんてあるんだろうか。
どう答えたらいいのかわからない。
けれど、曖昧にごまかしたくもない。
「……だって、せっかく会えたんだし、こうして家に置いてもらってるわけだし、一緒にいる時間は楽しくすごしたいじゃん」
たとえカイリが百花を忘れているとしても、百花はカイリを忘れていない。
会いたいと願っていた人だから、また近づきたいと思うから、どうしても諦めたくないのだ。
「僕があなたを知らなくても?」
「もう切り替えたから大丈夫。わたしの知ってるカイリとあなたは、同じ顔の別人だってーーそう思ってるから」
今はまだ完全に切り替えられたわけではないけれど、ひたすら思い込めばいつかきっとそれが自分にとっての事実に変わっていくはずだ。悲しくなんかない。思い出の中のカイリは生きている。
カイリの沈黙は重く、とても長く感じた。まだ疑われてると感じて、百花は焦って言い募った。
「ほ、ほんとだって! パラレルワールドだと思うことにしたんだって! それなら説明つくし、なんとなく納得もできたから!」
「パラレルワールドって何」
「え? えーと…別次元の平行世界、だっけ? なんかとりあえず似てるけど違う世界ってこと!」
「そんなのあるの?」
「いや、実際あるかはわかんないけど、あるって前提にすればあるっていうか……」
「意味わかんない」
「で、ですよねー」
年下相手にしどろもどろしている自分がアホすぎて、泣きたくなる。カイリがしっかりしすぎているのだ。本当に十八歳か!?
あーとかうーとか言っている百花をしばらく眺めていたカイリだったが、ふっと肩の力を抜いて、かすかに口元をゆるませた。
「もういいよ。わかったことにしてあげる」
そう告げられて驚きに目をむく百花に「今日は僕が朝ごはん作ってあげるよ」と言い置いて、カイリは自室のドアを閉じた。
「できたら呼ぶから、部屋で待ってて」
ドアの向こうから声がかかり、百花は慌てて「あ、ありがとう!」と返事をした。
夢のようだ、と思った。急いで部屋に戻って、やりとりを何度も繰り返し、ようやく現実かもしれないと思い始めたところで「できたからおりてきて」と声がかかる。
(現実だ……)
思わず百花は泣いた。
◆
カイリが作ってくれたのは、トルティーヤと豆のスープだった。トルティーヤには、マイルドベリーのジャムが添えられている。いちごとブルーベリーの合いの子のようなこの果実は少し酸味が強いが、砂糖と煮詰めたジャムはとても美味しい。オウルもよく大量に作っては、デザートに使ったり、小瓶につめて売ったりしている。
「美味しそう!」
食卓についた百花は感動のあまり、また涙ぐんでしまった。オミの国でカイリが作った料理を食べるのは初めてだ。大した時間もかからずにこれだけ作れるのだから、さすがの一言に尽きる。
いただきます、と両手を合わせて、まずは湯気のたつスープを一口すする。
豆の風味が柔らかく広がる。塩加減もちょうどよくて、朝にぴったりの味だった。ジャムをつけて食べるトルティーヤも美味しい。ぱくぱくと食をすすめながら「すごく美味しいよ。カイリは料理上手だね」と百花は惜しみなく賛辞を送った。対するカイリは「これくらい普通だよ」と肩をすくめる。謙遜している様子はなく、本心からそう思っているようだった。
「そうかなぁ。このスープなんて味の濃さも絶妙だし、お豆も柔らかいし、本当に美味しいよ?」
「……それは、どうも」
カイリは困ったように頭をかいて「まあ、僕も」と少しだけトーンを落として言った。
「この間は少し、大人気なかった、と思う。ーーごめん」
「そんなことないよ。後になって考えたら、カイリの反応は当然だと思うもん。嫌だよね、知らない人になんか色々押し付けられたらさ」
百花はカラカラと笑って「カイリは全然悪くないから大丈夫!」とうなずいた。カイリは虚をつかれたような表情だ。百花は更に「悪いのは百パーセントわたしだって! だからカイリは何にも気にしなくていいんだよ」とたたみかけた。それはまごうことなき本心なのだが、カイリは奇妙な表情のまま口をつぐんだ。
(あれ、わたし変なこと言った?)
お互い見つめあい、奇妙な沈黙が落ちる。カイリが口を開かない様子だから、百花は「……一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」と切り出してみる。
「なに?」
普通に返答があることに内心感動しながら、百花は「好きな料理教えてほしい!」と身を乗り出した。
「朝ごはん作るときチャレンジしたいから、ぜひ教えて!」
カイリは何度も瞬きして百花を見つめる。あどけない表情は愛らしく、それこそ少年らしい。彼の年齢はれっきとした大人と認定されているけれど、見た目はやっぱり少年のようだ。
(相変わらずかわいい……)
眼福だ……とこっそり心の中で手を合わせる。
カイリは目が大きいから、視線が強いと光線でも出ているんじゃないかというオーラがある。けれど、こんなふうに柔らかい表情の時は底抜けに愛らしい小動物のようだ。
カイリは何度か瞬きした後、バツが悪そうに視線をそらした。
「変なこと聞くね」
「そう?」
「……別に特別好きなものなんてないよ」
「えー、それだと、わたし好みの朝食になっちゃうよ? いいの?」
「それでいいよ」
(そんなこと言いつつ、またスフレパンケーキとか出したら怒るかな……)
まあそのあたりは様子を見てからにしよう。まずは、あたりさわりのないオミの国流の朝食をオウルに聞いてみて、それを作ればいい。
カイリにとって百花は、きっとまだマイナス印象の強い存在だろう。
けれど、こうして関わる機会を作れるようになったということは、その印象を少しずつでも変えていけるということ。
(恋人になれなくても、せめて友達くらいのポジションになりたい!)
心の中でメラメラと闘志を燃やし、改めて百花は日々を精一杯生きることを誓った。
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