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第3章 旅で得るもの、失うもの
3、置いてきぼりの真実
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「私もアリスも国王もニアだ。……この意味はわかるかな?」
「えーっと……分身の魔法とか?」
「そう。それはかなり正解に近い」
「私たちニアは何にでもなれるし、同時に複数存在することもできるの。それぞれで人格はあるけれど、記憶や意識は共有している。そして、その気になればすぐに消えることもできる」
言いながらアリスはそれを実践してみせた。
閃光のような強い光が放たれ、眩しさにつむってしまった目を開けると、もうアリスの姿はない。
「私の中にアリスは還った。目を開けていれば吸い込まれる様子が見えたのに、残念だね」
ちっとも残念がっていない調子でウェインは言い「それで、今日ここに呼んだのは、君にお礼をしたいと思ったからなんだ」と続けた。
「お礼?」
一体何の? と聞き返したところで、ドアをノックする音がした。先ほどの騎士がお茶を持ってきたのだ。アリスは疲れて先に眠っているというウェインの言葉に騎士はうなずき、お茶を二つだけ置いていった。それと、カゴいっぱいのパン。百花が焼いたもので、食べやすいように切り分けられていた。
「国王様より持って行くよう言付かりました」
「そう。ちょうど食べたいと思っていたんだよ。ありがとう」
騎士は会釈をすると音もなく出て行く。それを見送った後で百花は「……国王も、あなたなんですよね?」とウェインを見つめる。彼が微笑みで是とこたえたので、今のは自作自演ってことかと頭を整理する。
「……自分が何人もいるって大変そう」
ふと浮かんだ素朴な感想を思わず口にしていて、百花ははっと口元を手でおさえた。失礼だったかも!? という心配は杞憂だったようで、ウェインは小さく吹き出した後で「確かにね、たまに滑稽だなと思う時はあるかな」と微笑んだ。
「でもやってみると案外面白いものだよ。いくつも目があるというのは大事なことだから」
ウェインの言葉は虚勢をはっているわけでもなく本心なのがみて取れた。取るに足らないこと、そう言われている気がする。
「もしかしてダイス王家の人みんながニアなんですか? 王妃様とかも……」
「いや、王妃だけは人間だよ。さすがに自分と性行為するのはごめんだからね」
「!! 神様にも性欲があるんですか!」
目を見開く百花を見て、ウェインはますます楽しそうに笑った。サラサラと栗色の髪が揺れ、ランプの明かりに透ける。まるで金糸のようだった。
「君もおかしなことを聞くね。感情がなければ何も生まれないだろう? 人間の君たちが蔑むような後ろ暗い感情も、何もかも持っているよ。もしかしたら君たち以上に感情には正直かもしれない。私にとっては全ての感情が等価値だから」
言いながらウェインはカゴの中に手を伸ばした。チオ麦配合のテーブルロールを選ぶと、それを口に運ぶ。
「うん、美味しいね。……こんなふうに味覚もちゃんとある。面白いもので、私はあっさりした味が好みなんだが、アリスは甘いものが好きなんだよ」
「へぇ……」
感心している百花にウェインは「君もどう?」とカゴを目の前に移動させたが、さすがに会食の直後だけあって何も入る気がしない。丁重にお断りして、代わりにお茶を一口飲んだ。薄いオレンジ色をしたお茶は、紅茶のような風味がする。
「あ、美味しい……」
「ありがとう。これはダイス名産のお茶なんだ。よければお土産に持っていくといい」
あとで包ませるよとウェインは微笑み、自身もカップに口をつけた。優雅な所作は王族らしく高貴な印象を醸し出していて、しかも中身は神でもあると思うと一層輝いて見えた。今にも後光を発しそうだ。
不思議な状況に何となく落ち着かないでいると、ウェインは「それで本題に戻すけど」と百花の目を見つめた。
「君がニホンでカイリの面倒をみてくれたこと、そして君がこちらの世界に来てからも彼に献身的に尽くしてくれたこと。これらのことに私は深く感謝しているんだ」
「は、はあ……?」
百花は確かに異界渡りしてきたカイリの面倒はみたが、こちらに来てからは特別カイリに尽くしたつもりはなかった。たかが朝食を作っただけで尽くすなんて言われても、目が点になるばかりだ。
「わけがわからないっていう顔をしているね」
「そりゃそうです。だってわたしは別に特別なことをしたつもりもないし、それにカイリの病気はまだ治ってない。向こうでちゃんと治療を終わらせなかったわたしの責任で……」
「そんなことはない。彼の病気は治るから、君が気に病むことはないよ」
ウェインは百花の言葉を笑って否定した。
「本当に!? 治るんですか!?」
はっきりと断言された言葉に興奮して身体が動いてしまい、テーブルを揺らしてしまった。お茶がゆらりと波打ったのをあわてて抑えて(あまり意味はなかったが)、百花はもう一度「……確かなことなんですか?」とたずねた。
ウェインは首肯して「いずれわかるよ」と含みを持たせた。そして百花がリアクションするより早く「カイリはね、この世界にとって重要な存在になる可能性があるんだ」と話題を変えた。
「重要な存在って、どういう?」
「凪いだ世界に波紋をひろげる一滴とでも言おうか。すまないが詳細は教えられない。……ただ、彼の周りにはあまり良くない未来ばかりがあった」
まるで実際に未来を見てきたかのような言い方だ。ウェインは悲しげに目を伏せたけれど、すぐに顔を上げると、続けた。
「未来に決まった道はない。人間は生きる中で様々な選択をし、それによって細かく枝分かれしていく。私は直接それに干渉することはできない。ただ、その道筋全てを見ることはできるから、間接的に何かをすることはできる」
「……それが、カイリをわたしの世界に送ることだったんですか?」
「察しがいいね」
ウェインは満足そうに微笑む。
つまり、カイリが日本に来たのはニアの気まぐれなんかじゃなくて、はっきりした意図があったということだ。
そして、それが果たされたから、今ウェインが百花にあらましを話して、感謝の意を伝えてくれている。
(こういう理解であってるかな)
何しろ、全てが突拍子もない話だから、いちいち頭の中でかみ砕かないと、まるでわからないのだ。難しい顔でお茶を飲む百花を、ウェインは柔らかい表情で見つめながら「ちなみに」と彼女の意識を向けさせた。
「カイリには、国境での戦闘で命を落とす可能性、病気で死ぬ可能性、そして帝国に単身乗り込んで、人質になったあげく拷問されて死ぬ可能性など、いくつもの不幸な未来があった」
流れるように語られた未来は、どれも凄惨なものばかり。
百花は「嘘でしょ」と顔を青くした。
「全部恐ろしすぎるんですけど!! も、もう大丈夫なんですか、それ!?」
思わず身を乗り出して聞くと、ウェインは「大丈夫」と微笑んで百花の肩に手を置いた。
「いつ道を踏み外すかと心配していたけれど、今は私の望む未来にほぼ近づいてきている。君が彼をあきらめずに、そばにいて影響を与え続けたからだよ」
言葉で聞いただけでも、パンチがありすぎる未来だった。それが回避できたのかと心の底からほっとしたら、涙が盛り上がった。安堵の涙なのか、一瞬想像してしまった恐ろしい彼の未来の姿への恐怖なのかは分からなかった。
「だから、望みがあれば言って欲しい。大抵のことは叶えてあげられる」
百花を安心させるように、ウェインが彼女の手を握った。優しい暖かさに、百花もうなずく。
(わたしの望みなんて……思いつくのは一つしかない)
百花がそれを伝えようと口を開きかけると、先にウェインが「ただ一つ」と言い聞かせるようにゆったりと言葉を紡いだ。
「こちらに留まりたいというのは、なしだ」
少し困ったような目をしているから、きっと百花がそれを望むことを察していたのだろう。
出鼻をくじかれて百花は「どうして……?」とたずねる。ウェインは申し訳なさそうに眉尻を下げて「君のことは期日がきたらニホンへ帰さないとならない。君のところの神と、そういう約定を結んでいるんだ」と告げた。
一瞬で目の前から色が失われた気がした。
がーんという効果音とともに、がらがらと足元が崩れていく感覚。
一気に心が冷え込むのを感じながら、百花は震える声で「今、思いっきりそれを頼もうとしてたんですけど……期日っていつなんですか……」とたずねた。
すまないね、とウェインは申し訳なさそうに眉尻を下げて「具体的に言うとあと三十日」と残酷な宣告をした。
何でもカイリが百花のところに滞在した期間を同じだけ、百花はこちらの世界にいられるらしい。神話の中だけの存在だと思っていた神がいるということにも驚いたけれど、そのシステムにはもっと驚いた。
呆然としたまま言葉を発さない百花を気遣ってか、ウェインは「残された時間は限られているからこそ、私は君の願いを叶えたい」と優しく告げた。
◆
こちらにいられるのは、あと三十日。
その宣告を頭の中で反芻しても、理解したくないと心が叫ぶ。
(あと一ヶ月しかないなんて、短すぎるよ!!)
せめてもう少し期間を伸ばせないか。
百花は必死でウェインに頼み込んだが、彼の返答はにべもなかった。
「つらいとは思うが受け入れて欲しい」
その一点張りで埒が明かず、百花は茫然自失な状態のままで彼の部屋を退出した。
足元がおぼつかなくて、ふらつきながら案内役の騎士について行く。
百花たち一行には、大臣のはからいで城内のゲストルームが用意されているそうだ。その他にも騎士は色々な話をしていたが、期限のことで頭がいっぱいの百花はその全ては右から左へと抜けていった。
階段を降りて少し進んだ先、等間隔で並ぶ意匠をこらしたドアの一つの前で騎士は立ち止まる。ここが百花の部屋のようだ。
騎士がノックをすると、ややあって内側から「はい」と応答がある。その声はカイリのもので、百花が驚いている間にドアが開いて本人が顔を出した。
「えーっと……分身の魔法とか?」
「そう。それはかなり正解に近い」
「私たちニアは何にでもなれるし、同時に複数存在することもできるの。それぞれで人格はあるけれど、記憶や意識は共有している。そして、その気になればすぐに消えることもできる」
言いながらアリスはそれを実践してみせた。
閃光のような強い光が放たれ、眩しさにつむってしまった目を開けると、もうアリスの姿はない。
「私の中にアリスは還った。目を開けていれば吸い込まれる様子が見えたのに、残念だね」
ちっとも残念がっていない調子でウェインは言い「それで、今日ここに呼んだのは、君にお礼をしたいと思ったからなんだ」と続けた。
「お礼?」
一体何の? と聞き返したところで、ドアをノックする音がした。先ほどの騎士がお茶を持ってきたのだ。アリスは疲れて先に眠っているというウェインの言葉に騎士はうなずき、お茶を二つだけ置いていった。それと、カゴいっぱいのパン。百花が焼いたもので、食べやすいように切り分けられていた。
「国王様より持って行くよう言付かりました」
「そう。ちょうど食べたいと思っていたんだよ。ありがとう」
騎士は会釈をすると音もなく出て行く。それを見送った後で百花は「……国王も、あなたなんですよね?」とウェインを見つめる。彼が微笑みで是とこたえたので、今のは自作自演ってことかと頭を整理する。
「……自分が何人もいるって大変そう」
ふと浮かんだ素朴な感想を思わず口にしていて、百花ははっと口元を手でおさえた。失礼だったかも!? という心配は杞憂だったようで、ウェインは小さく吹き出した後で「確かにね、たまに滑稽だなと思う時はあるかな」と微笑んだ。
「でもやってみると案外面白いものだよ。いくつも目があるというのは大事なことだから」
ウェインの言葉は虚勢をはっているわけでもなく本心なのがみて取れた。取るに足らないこと、そう言われている気がする。
「もしかしてダイス王家の人みんながニアなんですか? 王妃様とかも……」
「いや、王妃だけは人間だよ。さすがに自分と性行為するのはごめんだからね」
「!! 神様にも性欲があるんですか!」
目を見開く百花を見て、ウェインはますます楽しそうに笑った。サラサラと栗色の髪が揺れ、ランプの明かりに透ける。まるで金糸のようだった。
「君もおかしなことを聞くね。感情がなければ何も生まれないだろう? 人間の君たちが蔑むような後ろ暗い感情も、何もかも持っているよ。もしかしたら君たち以上に感情には正直かもしれない。私にとっては全ての感情が等価値だから」
言いながらウェインはカゴの中に手を伸ばした。チオ麦配合のテーブルロールを選ぶと、それを口に運ぶ。
「うん、美味しいね。……こんなふうに味覚もちゃんとある。面白いもので、私はあっさりした味が好みなんだが、アリスは甘いものが好きなんだよ」
「へぇ……」
感心している百花にウェインは「君もどう?」とカゴを目の前に移動させたが、さすがに会食の直後だけあって何も入る気がしない。丁重にお断りして、代わりにお茶を一口飲んだ。薄いオレンジ色をしたお茶は、紅茶のような風味がする。
「あ、美味しい……」
「ありがとう。これはダイス名産のお茶なんだ。よければお土産に持っていくといい」
あとで包ませるよとウェインは微笑み、自身もカップに口をつけた。優雅な所作は王族らしく高貴な印象を醸し出していて、しかも中身は神でもあると思うと一層輝いて見えた。今にも後光を発しそうだ。
不思議な状況に何となく落ち着かないでいると、ウェインは「それで本題に戻すけど」と百花の目を見つめた。
「君がニホンでカイリの面倒をみてくれたこと、そして君がこちらの世界に来てからも彼に献身的に尽くしてくれたこと。これらのことに私は深く感謝しているんだ」
「は、はあ……?」
百花は確かに異界渡りしてきたカイリの面倒はみたが、こちらに来てからは特別カイリに尽くしたつもりはなかった。たかが朝食を作っただけで尽くすなんて言われても、目が点になるばかりだ。
「わけがわからないっていう顔をしているね」
「そりゃそうです。だってわたしは別に特別なことをしたつもりもないし、それにカイリの病気はまだ治ってない。向こうでちゃんと治療を終わらせなかったわたしの責任で……」
「そんなことはない。彼の病気は治るから、君が気に病むことはないよ」
ウェインは百花の言葉を笑って否定した。
「本当に!? 治るんですか!?」
はっきりと断言された言葉に興奮して身体が動いてしまい、テーブルを揺らしてしまった。お茶がゆらりと波打ったのをあわてて抑えて(あまり意味はなかったが)、百花はもう一度「……確かなことなんですか?」とたずねた。
ウェインは首肯して「いずれわかるよ」と含みを持たせた。そして百花がリアクションするより早く「カイリはね、この世界にとって重要な存在になる可能性があるんだ」と話題を変えた。
「重要な存在って、どういう?」
「凪いだ世界に波紋をひろげる一滴とでも言おうか。すまないが詳細は教えられない。……ただ、彼の周りにはあまり良くない未来ばかりがあった」
まるで実際に未来を見てきたかのような言い方だ。ウェインは悲しげに目を伏せたけれど、すぐに顔を上げると、続けた。
「未来に決まった道はない。人間は生きる中で様々な選択をし、それによって細かく枝分かれしていく。私は直接それに干渉することはできない。ただ、その道筋全てを見ることはできるから、間接的に何かをすることはできる」
「……それが、カイリをわたしの世界に送ることだったんですか?」
「察しがいいね」
ウェインは満足そうに微笑む。
つまり、カイリが日本に来たのはニアの気まぐれなんかじゃなくて、はっきりした意図があったということだ。
そして、それが果たされたから、今ウェインが百花にあらましを話して、感謝の意を伝えてくれている。
(こういう理解であってるかな)
何しろ、全てが突拍子もない話だから、いちいち頭の中でかみ砕かないと、まるでわからないのだ。難しい顔でお茶を飲む百花を、ウェインは柔らかい表情で見つめながら「ちなみに」と彼女の意識を向けさせた。
「カイリには、国境での戦闘で命を落とす可能性、病気で死ぬ可能性、そして帝国に単身乗り込んで、人質になったあげく拷問されて死ぬ可能性など、いくつもの不幸な未来があった」
流れるように語られた未来は、どれも凄惨なものばかり。
百花は「嘘でしょ」と顔を青くした。
「全部恐ろしすぎるんですけど!! も、もう大丈夫なんですか、それ!?」
思わず身を乗り出して聞くと、ウェインは「大丈夫」と微笑んで百花の肩に手を置いた。
「いつ道を踏み外すかと心配していたけれど、今は私の望む未来にほぼ近づいてきている。君が彼をあきらめずに、そばにいて影響を与え続けたからだよ」
言葉で聞いただけでも、パンチがありすぎる未来だった。それが回避できたのかと心の底からほっとしたら、涙が盛り上がった。安堵の涙なのか、一瞬想像してしまった恐ろしい彼の未来の姿への恐怖なのかは分からなかった。
「だから、望みがあれば言って欲しい。大抵のことは叶えてあげられる」
百花を安心させるように、ウェインが彼女の手を握った。優しい暖かさに、百花もうなずく。
(わたしの望みなんて……思いつくのは一つしかない)
百花がそれを伝えようと口を開きかけると、先にウェインが「ただ一つ」と言い聞かせるようにゆったりと言葉を紡いだ。
「こちらに留まりたいというのは、なしだ」
少し困ったような目をしているから、きっと百花がそれを望むことを察していたのだろう。
出鼻をくじかれて百花は「どうして……?」とたずねる。ウェインは申し訳なさそうに眉尻を下げて「君のことは期日がきたらニホンへ帰さないとならない。君のところの神と、そういう約定を結んでいるんだ」と告げた。
一瞬で目の前から色が失われた気がした。
がーんという効果音とともに、がらがらと足元が崩れていく感覚。
一気に心が冷え込むのを感じながら、百花は震える声で「今、思いっきりそれを頼もうとしてたんですけど……期日っていつなんですか……」とたずねた。
すまないね、とウェインは申し訳なさそうに眉尻を下げて「具体的に言うとあと三十日」と残酷な宣告をした。
何でもカイリが百花のところに滞在した期間を同じだけ、百花はこちらの世界にいられるらしい。神話の中だけの存在だと思っていた神がいるということにも驚いたけれど、そのシステムにはもっと驚いた。
呆然としたまま言葉を発さない百花を気遣ってか、ウェインは「残された時間は限られているからこそ、私は君の願いを叶えたい」と優しく告げた。
◆
こちらにいられるのは、あと三十日。
その宣告を頭の中で反芻しても、理解したくないと心が叫ぶ。
(あと一ヶ月しかないなんて、短すぎるよ!!)
せめてもう少し期間を伸ばせないか。
百花は必死でウェインに頼み込んだが、彼の返答はにべもなかった。
「つらいとは思うが受け入れて欲しい」
その一点張りで埒が明かず、百花は茫然自失な状態のままで彼の部屋を退出した。
足元がおぼつかなくて、ふらつきながら案内役の騎士について行く。
百花たち一行には、大臣のはからいで城内のゲストルームが用意されているそうだ。その他にも騎士は色々な話をしていたが、期限のことで頭がいっぱいの百花はその全ては右から左へと抜けていった。
階段を降りて少し進んだ先、等間隔で並ぶ意匠をこらしたドアの一つの前で騎士は立ち止まる。ここが百花の部屋のようだ。
騎士がノックをすると、ややあって内側から「はい」と応答がある。その声はカイリのもので、百花が驚いている間にドアが開いて本人が顔を出した。
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