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第二章
呼び出し※
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土曜日の夕方、大地は〝用事〟に出かけた。
何回も鳴るスマホを気にする様子もなく俺に盛っていたのに、夕方にスマホを開けたとき、血相を変えてコートを羽織った。
「悪い、爽。用事行ってくる」
「ふぅん」
不機嫌に唸る俺を見て、なぜか大地は嬉しそうにニコついた。
「晩ごはんまでには帰ってくるから、な」
「別に気にしてねえから。どうぞごゆっくりぃ」
「ヒヒヒ」
「なに笑ってんだよお前ぇ!」
「悪い悪い! できるだけ早く帰ってくるよ。じゃな」
今までも休みの日に一人ってことはよくあった。それについて何も感じたことがなかったのに、今日はなんかイライラとモヤモヤで気持ち悪かった。
俺はのそのそと自分の部屋に戻り、テレビを付けたままうたた寝をした。
……あいついねえと暇すぎてつまんねえな。
◆◆◆
インターフォンを鳴らすと、チカちゃんが飛んできた。ムスッとしている俺とは対照的に、チカちゃんはニマニマ笑っている。
「いらっしゃい大地~。入って~」
「……」
部屋に入った俺は、さっさと用事を済ませるためにチカちゃんとベッドの上に押し倒す。チカちゃんは抵抗なんて一切せず、俺の首に腕を回した。
一時間ほど経っただろうか。俺はチラッと掛け時計に目をやったあと、俺の下で力なく喘いでいるチカちゃんに視線を落とした。
ずっとビクビクしている彼女は、数えられないほどイッているせいでか意識が朦朧としているようだった。
そろそろ終わってもいいよな。
「チカちゃん、イクよ」
「……うんっ……」
俺は腰を激しく振り、イッたふりをした。爽の体を知ってしまった今、俺はもう女でイケる気がしない。だからいつもイッたふりをしてセックスを終わらせる。
さっさと服を身に着けていると、放心状態になっているチカちゃんに触れられた。
「……大地、もう帰っちゃうの……?」
「うん。今日はちょっと忙しくて」
「ダメ。泊まってよ」
「それは無理」
冷たくあしらう俺を、チカちゃんが鼻で笑った。
「じゃあ、大地帰ったあとに爽呼んじゃお」
「……は?」
睨みつけても、チカちゃんは笑うだけ。
「久しぶりに爽ともえっちしたくなっちゃった」
「なんで? 俺じゃ満足できない?」
「だって大地、イッてくれないじゃん」
そう言って、チカちゃんは、俺が先ほどゴミ箱に捨てたコンドームを拾い上げた。精液が入っていない、からっぽのコンドーム。
「爽はすぐイッてくれるもん。夢中になって腰振って、気持ちよさそうな声を上げて、何回もイッてくれる」
「……仕方ねえじゃん。爽は早漏で、俺は遅漏なんだから……」
「それでも、前までは大地もイッてたじゃん」
「……もうお前の体でなんかイケるわけねえだろ……」
小声でぼやいた俺の言葉は、ぼんやりとしかチカちゃんに聞こえなかったようだったが、チカちゃんの気分を害するのには充分だったようだ。
彼女は頬を膨らませて言った。
「昨晩からずっとLINE無視されてたのに、〝大地来ないなら爽と遊ぶ〟って送ったら秒で来たよね。そんなに爽のところにいかれたくないなら、言うこと聞いてよ」
俺は深いため息を吐き、苛立ちを込めて頭を掻いた。
「……分かった。イクまでやったらいいんだろ」
「うん! あ、でも、爽は三回イッてくれたから~、大地も三回イくまで頑張ってほしいな!」
「俺の三回と爽の三回は全く別物なんだって……。チカちゃん死んじゃうよ?」
「えへへ~。私、一回失神するまで抱かれてみたいんだよね~」
チカちゃんは俺の背中に抱きつき、耳元で囁く。
「アナルセックス解禁しちゃえばいいじゃん。だって大地、おしりの方が気持ちよさそうだったし」
「それはしない。……爽にLINEだけ送らせて。晩ごはん待ってるかも」
俺が爽にLINEを送っている間も、チカちゃんは俺の体にへばりついて離れなかった。
「ほんと、大地って最低だよね~。ルームシェアしてる幼馴染の親友の彼女寝取っちゃうんだもん。ねえ、どんな気持ちなの? 罪悪感とかないのぉ?」
「別になにも思わないけど。罪悪感? ないよ」
「うわ、最低~」
そう言ってチカちゃんはケタケタ笑った。
「爽が本当のこと知ったら泣いちゃうね!」
俺が彼女を寝取っていたと知ったら爽は泣くのだろうか。
泣かせてしまったとしても、誰かに取られるよりマシだ。
早く終わらせたかった。必死で腰を振った。それでも絶頂は訪れない。
帰りたい。早く爽の待っている家に戻りたい。
あいつ、晩御飯ちゃっと食ったのかな。料理ができないから、きっとコンビニで済ませているんだろうな。こんなことなら、昨晩ちょっと多めに作っておいたらよかった。
せめて夜中までには帰ってやりたい。俺が家を出る時、すごく寂しそうな顔をしていた。
あいつが求めているのが俺の体だけだとしても、俺は俺の全てを使ってあいつを満たしてやりたい。
待ってろよ、爽。
お前のところに帰るために、俺、頑張って女の体で射精するから。
何回も鳴るスマホを気にする様子もなく俺に盛っていたのに、夕方にスマホを開けたとき、血相を変えてコートを羽織った。
「悪い、爽。用事行ってくる」
「ふぅん」
不機嫌に唸る俺を見て、なぜか大地は嬉しそうにニコついた。
「晩ごはんまでには帰ってくるから、な」
「別に気にしてねえから。どうぞごゆっくりぃ」
「ヒヒヒ」
「なに笑ってんだよお前ぇ!」
「悪い悪い! できるだけ早く帰ってくるよ。じゃな」
今までも休みの日に一人ってことはよくあった。それについて何も感じたことがなかったのに、今日はなんかイライラとモヤモヤで気持ち悪かった。
俺はのそのそと自分の部屋に戻り、テレビを付けたままうたた寝をした。
……あいついねえと暇すぎてつまんねえな。
◆◆◆
インターフォンを鳴らすと、チカちゃんが飛んできた。ムスッとしている俺とは対照的に、チカちゃんはニマニマ笑っている。
「いらっしゃい大地~。入って~」
「……」
部屋に入った俺は、さっさと用事を済ませるためにチカちゃんとベッドの上に押し倒す。チカちゃんは抵抗なんて一切せず、俺の首に腕を回した。
一時間ほど経っただろうか。俺はチラッと掛け時計に目をやったあと、俺の下で力なく喘いでいるチカちゃんに視線を落とした。
ずっとビクビクしている彼女は、数えられないほどイッているせいでか意識が朦朧としているようだった。
そろそろ終わってもいいよな。
「チカちゃん、イクよ」
「……うんっ……」
俺は腰を激しく振り、イッたふりをした。爽の体を知ってしまった今、俺はもう女でイケる気がしない。だからいつもイッたふりをしてセックスを終わらせる。
さっさと服を身に着けていると、放心状態になっているチカちゃんに触れられた。
「……大地、もう帰っちゃうの……?」
「うん。今日はちょっと忙しくて」
「ダメ。泊まってよ」
「それは無理」
冷たくあしらう俺を、チカちゃんが鼻で笑った。
「じゃあ、大地帰ったあとに爽呼んじゃお」
「……は?」
睨みつけても、チカちゃんは笑うだけ。
「久しぶりに爽ともえっちしたくなっちゃった」
「なんで? 俺じゃ満足できない?」
「だって大地、イッてくれないじゃん」
そう言って、チカちゃんは、俺が先ほどゴミ箱に捨てたコンドームを拾い上げた。精液が入っていない、からっぽのコンドーム。
「爽はすぐイッてくれるもん。夢中になって腰振って、気持ちよさそうな声を上げて、何回もイッてくれる」
「……仕方ねえじゃん。爽は早漏で、俺は遅漏なんだから……」
「それでも、前までは大地もイッてたじゃん」
「……もうお前の体でなんかイケるわけねえだろ……」
小声でぼやいた俺の言葉は、ぼんやりとしかチカちゃんに聞こえなかったようだったが、チカちゃんの気分を害するのには充分だったようだ。
彼女は頬を膨らませて言った。
「昨晩からずっとLINE無視されてたのに、〝大地来ないなら爽と遊ぶ〟って送ったら秒で来たよね。そんなに爽のところにいかれたくないなら、言うこと聞いてよ」
俺は深いため息を吐き、苛立ちを込めて頭を掻いた。
「……分かった。イクまでやったらいいんだろ」
「うん! あ、でも、爽は三回イッてくれたから~、大地も三回イくまで頑張ってほしいな!」
「俺の三回と爽の三回は全く別物なんだって……。チカちゃん死んじゃうよ?」
「えへへ~。私、一回失神するまで抱かれてみたいんだよね~」
チカちゃんは俺の背中に抱きつき、耳元で囁く。
「アナルセックス解禁しちゃえばいいじゃん。だって大地、おしりの方が気持ちよさそうだったし」
「それはしない。……爽にLINEだけ送らせて。晩ごはん待ってるかも」
俺が爽にLINEを送っている間も、チカちゃんは俺の体にへばりついて離れなかった。
「ほんと、大地って最低だよね~。ルームシェアしてる幼馴染の親友の彼女寝取っちゃうんだもん。ねえ、どんな気持ちなの? 罪悪感とかないのぉ?」
「別になにも思わないけど。罪悪感? ないよ」
「うわ、最低~」
そう言ってチカちゃんはケタケタ笑った。
「爽が本当のこと知ったら泣いちゃうね!」
俺が彼女を寝取っていたと知ったら爽は泣くのだろうか。
泣かせてしまったとしても、誰かに取られるよりマシだ。
早く終わらせたかった。必死で腰を振った。それでも絶頂は訪れない。
帰りたい。早く爽の待っている家に戻りたい。
あいつ、晩御飯ちゃっと食ったのかな。料理ができないから、きっとコンビニで済ませているんだろうな。こんなことなら、昨晩ちょっと多めに作っておいたらよかった。
せめて夜中までには帰ってやりたい。俺が家を出る時、すごく寂しそうな顔をしていた。
あいつが求めているのが俺の体だけだとしても、俺は俺の全てを使ってあいつを満たしてやりたい。
待ってろよ、爽。
お前のところに帰るために、俺、頑張って女の体で射精するから。
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