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第二章
セフレ
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◇◇◇
LINEの通知音でうたた寝から目が覚めた。大地からだ。
《ごめん。今日帰り遅くなる。先に晩ごはん食べといて》
「……」
まあ、彼女(仮)と会ったら野郎しかいない家になんか帰りたくなくなるわな。
俺はノロノロと返信を打った。
《りょ。帰り何時ごろになる?》
コンビニで適当なメシを食ったあとにスマホを覗いても、大地からの返事はなかった。
夜に大地が〝用事〟に出かけることは今までも何度かあった。でも、晩ごはんまでには帰って来ていたから、特訓をしなかった日はない。……俺がチカちゃんとヤッた日以外では。
あの日からなんかおかしくなった。いや、おかしくなったのは大地と特訓を始めた日からか。
大地が〝用事〟に出かけることがおかしいんじゃない。大地が帰ってこない夜を退屈だと思うようになった俺がおかしいんだ。
体がむずむずする。夕方までずっと大地とベタベタしていたのに、俺の体はもう大地に触れられたくなっている。
俺はぼんやりとした足取りで大地の部屋に入り、布団に脱ぎ捨ててあったシャツの上に倒れこんだ。
大地の匂いがする。嗅いだだけで、体が余計にうずいた。
気が付けば俺は、大地の部屋で、大地のシャツに顔をうずめながらちんこを握っていた。
「はっ……んん……っ、んっ……!」
布団に精液が垂れる。
俺、大地の部屋に勝手に入って、大地のシャツの匂い嗅ぎながら、大地の布団の上でオナニーした。
……なにやってんだ、俺。
このままじゃなんかダメな気がする。
俺は顔を青くして、自分の部屋に戻った。
◇◇◇
「ん……」
いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。灯りも消さず、布団もかぶらないまま。
目が覚めたのは、首筋に何かが這ったからだった。
薄目を開けると、俺に覆いかぶさって首筋に吸い付いている大地がいた。
「……大地……?」
「ただいま。遅くなってごめんな」
「……別に」
「寂しかったか?」
「全然」
俺がそっぽを向いて応えると、大地はフッと笑い俺を指さした。
「なんで俺のシャツ着てるんだ?」
「……え"っ」
「お前、俺の部屋でシコッただろ」
「ぅ"え"……」
「布団にホヤホヤの精液飛び散ってたぞ」
「ん"ぁ"……」
やっべえ……。自分の行いに動揺しすぎて、後処理なんて何もせずに自分の部屋に戻っちまった。しかもなんで俺大地のシャツを自分の部屋まで持ってきて、あまつさえ着ちまってるんだよバカか。
あー、大地の顔腹立つわー。ニマニマしやがって。俺の気も知らねえでクソがぁ……。
大地は俺の服の中に手を差し込みながら耳元で囁く。
「ごめんな、爽」
「お前が謝ることなんかなにもなくね?」
「今からしてもいいか?」
「……」
いつもと違うシャンプーの匂い。皺のついた服。ズボンの奥からチラ見えしている、家を出た時と違うパンツ。
「……お前、さっきまで彼女とヤッてたんだろ?」
そう言うと、大地の動きが止まった。
「……彼女じゃない」
「じゃあセフレ?」
「……そうなるのかな」
「……」
こいつ、やっぱり女の体が良いんじゃねえか。俺と毎晩あんなことやってても満足できねえのか。わざわざセフレまで作って外でヤラねえと、俺の相手なんてできねえってか。
「俺とヤッてるとき、あんなに気持ちよさそうに見えるのに……。もしかして演技?」
俺がそう尋ねると、大地は首を傾げた。
「お前何言ってんの? 演技なわけねえだろ」
「じゃあなんでセフレいるんだよ。説得力ねえー」
「……お前マジで何言ってんの?」
苛立ちを孕んだ大地の声に俺は我に返った。
まじで俺、何言ってんだ? まるで俺と大地が付き合っているような文句の言い方じゃねえか。
違うだろ。俺と大地はそんな関係じゃない。ただ、俺の早漏を治すための特訓に大地が付き合っているだけだ。
なんか苦しい。なんで自分がこんなゲロ吐きそうになっているのか分かんねえ。
布団に潜りこもうとした俺を大地が抱き寄せる。
「……なに?」
「なにって……しようよ」
「なんで?」
大地はしばらくじっと俺の顔を見てからニッコリ笑った。
「なんでって、今日の分の特訓してねえじゃん! 特訓は毎日しねえと意味ねえだろ?」
あー……。こいつってこういうヤツだったわ。
自分がやるって決めたことは、最後までやり抜かないと気が済まないタイプ。
男の体じゃ満足できなくても、自分から言い出したんだからって、セフレ作ってまで遂行しようとしてやがる。
責任感で抱かれるほど虚しいもんはねえぜ。
俺は大地から離れ、布団に潜りこんだ。
「……いや、いい」
「……おい爽。まじでどうした」
「なんでもねえ。その気になれねえ。あっちいけ」
「あっちいけ? その気になれねえ? 俺の部屋でシコッて精液ぶちまけて、俺のシャツ着て寝てたのに?」
「もうそれ忘れろ。今後もう特訓しなくていい。自分でなんとかする」
「……」
大地が静かになった。でも、俺の上からはどいてくれない。
妙な間が気持ち悪くて、布団から顔を覗かせた俺はチラッと大地を窺い見た。
目が合った瞬間の大地は虚無の顔で茫然としていたけど、目が合ったことに気付くとすぐにいつもの作り笑顔を浮かべた。
そして、また俺に覆いかぶさる。
「もうひとつの理由言おうか」
「……?」
「俺、セフレで全然満足できなかったんだよ。だからお前のケツ貸してくれ。俺、お前のケツじゃねえとイケねえんだわ」
だったらなんでセフレなんか作ってんだよ。俺だけでいいじゃん。
って言いそうになって、俺は慌てて口を噤んだ。
LINEの通知音でうたた寝から目が覚めた。大地からだ。
《ごめん。今日帰り遅くなる。先に晩ごはん食べといて》
「……」
まあ、彼女(仮)と会ったら野郎しかいない家になんか帰りたくなくなるわな。
俺はノロノロと返信を打った。
《りょ。帰り何時ごろになる?》
コンビニで適当なメシを食ったあとにスマホを覗いても、大地からの返事はなかった。
夜に大地が〝用事〟に出かけることは今までも何度かあった。でも、晩ごはんまでには帰って来ていたから、特訓をしなかった日はない。……俺がチカちゃんとヤッた日以外では。
あの日からなんかおかしくなった。いや、おかしくなったのは大地と特訓を始めた日からか。
大地が〝用事〟に出かけることがおかしいんじゃない。大地が帰ってこない夜を退屈だと思うようになった俺がおかしいんだ。
体がむずむずする。夕方までずっと大地とベタベタしていたのに、俺の体はもう大地に触れられたくなっている。
俺はぼんやりとした足取りで大地の部屋に入り、布団に脱ぎ捨ててあったシャツの上に倒れこんだ。
大地の匂いがする。嗅いだだけで、体が余計にうずいた。
気が付けば俺は、大地の部屋で、大地のシャツに顔をうずめながらちんこを握っていた。
「はっ……んん……っ、んっ……!」
布団に精液が垂れる。
俺、大地の部屋に勝手に入って、大地のシャツの匂い嗅ぎながら、大地の布団の上でオナニーした。
……なにやってんだ、俺。
このままじゃなんかダメな気がする。
俺は顔を青くして、自分の部屋に戻った。
◇◇◇
「ん……」
いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。灯りも消さず、布団もかぶらないまま。
目が覚めたのは、首筋に何かが這ったからだった。
薄目を開けると、俺に覆いかぶさって首筋に吸い付いている大地がいた。
「……大地……?」
「ただいま。遅くなってごめんな」
「……別に」
「寂しかったか?」
「全然」
俺がそっぽを向いて応えると、大地はフッと笑い俺を指さした。
「なんで俺のシャツ着てるんだ?」
「……え"っ」
「お前、俺の部屋でシコッただろ」
「ぅ"え"……」
「布団にホヤホヤの精液飛び散ってたぞ」
「ん"ぁ"……」
やっべえ……。自分の行いに動揺しすぎて、後処理なんて何もせずに自分の部屋に戻っちまった。しかもなんで俺大地のシャツを自分の部屋まで持ってきて、あまつさえ着ちまってるんだよバカか。
あー、大地の顔腹立つわー。ニマニマしやがって。俺の気も知らねえでクソがぁ……。
大地は俺の服の中に手を差し込みながら耳元で囁く。
「ごめんな、爽」
「お前が謝ることなんかなにもなくね?」
「今からしてもいいか?」
「……」
いつもと違うシャンプーの匂い。皺のついた服。ズボンの奥からチラ見えしている、家を出た時と違うパンツ。
「……お前、さっきまで彼女とヤッてたんだろ?」
そう言うと、大地の動きが止まった。
「……彼女じゃない」
「じゃあセフレ?」
「……そうなるのかな」
「……」
こいつ、やっぱり女の体が良いんじゃねえか。俺と毎晩あんなことやってても満足できねえのか。わざわざセフレまで作って外でヤラねえと、俺の相手なんてできねえってか。
「俺とヤッてるとき、あんなに気持ちよさそうに見えるのに……。もしかして演技?」
俺がそう尋ねると、大地は首を傾げた。
「お前何言ってんの? 演技なわけねえだろ」
「じゃあなんでセフレいるんだよ。説得力ねえー」
「……お前マジで何言ってんの?」
苛立ちを孕んだ大地の声に俺は我に返った。
まじで俺、何言ってんだ? まるで俺と大地が付き合っているような文句の言い方じゃねえか。
違うだろ。俺と大地はそんな関係じゃない。ただ、俺の早漏を治すための特訓に大地が付き合っているだけだ。
なんか苦しい。なんで自分がこんなゲロ吐きそうになっているのか分かんねえ。
布団に潜りこもうとした俺を大地が抱き寄せる。
「……なに?」
「なにって……しようよ」
「なんで?」
大地はしばらくじっと俺の顔を見てからニッコリ笑った。
「なんでって、今日の分の特訓してねえじゃん! 特訓は毎日しねえと意味ねえだろ?」
あー……。こいつってこういうヤツだったわ。
自分がやるって決めたことは、最後までやり抜かないと気が済まないタイプ。
男の体じゃ満足できなくても、自分から言い出したんだからって、セフレ作ってまで遂行しようとしてやがる。
責任感で抱かれるほど虚しいもんはねえぜ。
俺は大地から離れ、布団に潜りこんだ。
「……いや、いい」
「……おい爽。まじでどうした」
「なんでもねえ。その気になれねえ。あっちいけ」
「あっちいけ? その気になれねえ? 俺の部屋でシコッて精液ぶちまけて、俺のシャツ着て寝てたのに?」
「もうそれ忘れろ。今後もう特訓しなくていい。自分でなんとかする」
「……」
大地が静かになった。でも、俺の上からはどいてくれない。
妙な間が気持ち悪くて、布団から顔を覗かせた俺はチラッと大地を窺い見た。
目が合った瞬間の大地は虚無の顔で茫然としていたけど、目が合ったことに気付くとすぐにいつもの作り笑顔を浮かべた。
そして、また俺に覆いかぶさる。
「もうひとつの理由言おうか」
「……?」
「俺、セフレで全然満足できなかったんだよ。だからお前のケツ貸してくれ。俺、お前のケツじゃねえとイケねえんだわ」
だったらなんでセフレなんか作ってんだよ。俺だけでいいじゃん。
って言いそうになって、俺は慌てて口を噤んだ。
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