【完結】【BL】気付いてないのは篠原だけだよ。【オメガバース】

ちゃっぷす

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第一章

第二話

 週末に、鴨橋主催の合コンに行って、その中のオメガ女子と付き合うことになって。
 一カ月付き合って、別れた。

 別れを切り出すときはいつもしんどい。女の子の泣き顔も、怒り狂った顔も、見ると胸がギュッとなる。
 この時ばかりは、ごめんなぁっていつも思う。
 ちゃんと好きになれなくてごめんなって。

 はじめて付き合ったのは女子だった。中学一年生のときに、二歳年上の先輩に告られてさ。テンション上がって、即答でOKを出した。
 でも、なんかしっくりこなかったから、別れた。

 次に付き合ったのは大学生のオメガ男性だった。友だちの兄ちゃんだったんだ。初めて会ったときに、「この人だ」ってお互いに思った。
 でも、気付いたらその人のオメガの匂いが分からなくなって、別れた。鼻が慣れてしまったんだと思う。

 そうやって、次こそはって思いながら、告ってきた人と付き合ってきた。
 でも、だいたいは途中で「なんか違うなあ」って思ってしまうんだ。
 どの相手でも、時間が経てばオメガの匂いが分からなくなってしまうし。
 どうやっても、友だちの枠をはみ出さないというか。

 まあ、恋人がいる期間も、いない期間も、同じくらい楽しいからいいんだけどさ。


 ◇◇◇


 それは、なんでもない出会いだった。

 俺は、休み時間に鴨橋と廊下を歩いていた。
 そのときに、向かいから歩いてきた知らない男子生徒と肩がぶつかった。

 その瞬間、ふわっと甘いオメガの匂いがした。

「あ、やべ」
「どした?」

 俺はぶつかった男子生徒に「ごめん」とジェスチャーをしたが、相手は応じることなくそそくさとその場を去っていった。

 俺は軽くため息を吐き、頭をかく。

「たぶんあの子、俺に惚れた」
「はぁ?」
「だってオメガだったし」
「あー……」

 オメガは俺と接触すると、だいたいフェロモンにやられて俺に惚れてしまう。ちょーっと肩がぶつかっただけでも、オメガにとっては媚薬をぶっかけられたくらいの感覚だろう。
 オメガには触れないように気を付けてるんだが、たまにこういう事故がある。

 鴨橋は、さっきの男子生徒の背中を目で追っている。

「あいつ、放送委員の古賀じゃね?」
「へー。知ってんだ?」
「顔と声だけな。声だけならお前も知ってる。よく校内放送してる」
「そうなのか! へー、知らなかった」
「けっこう有名だよ。女子から〝良い声〟ってこっそり人気だ」
「声でモテるってすげーなぁ~!」

 声。声かあ。オメガは声も大事だからな。顔もなかなか悪くなかった。きっとあいつはモテるほうのオメガだろう。

「んー。アリかな」
「なにが」
「告られたらOKするかなー」
「気が早い」

 しかし。
 古賀はいつまで経っても俺に告ってこなかった。

 アレなのか。奥手なのか。まあ、見るからに大人しそうで清廉タイプのオメガだったしな。自分からアルファに告るのなんてはしたないとでも思っているのだろうか。

 あれから鴨橋は、校内放送が流れるたびに俺をからかうようになった。

「お、篠原。古賀の声だぞ」
「もー、分かってるよ! 何度も教えてもらったからな!」
「お前がはじめてフラれた相手だ」
「フラれてねえよ! まだ告られてないだけだっつの!」
「お前、まだ古賀がお前に惚れたと信じてやまないの?」
「当たり前だろっ! 普通にそうだろ! 俺とぶつかったんだぞ!」

 鴨橋がバカにしようとしたとき、俺は別のクラスのオメガに呼び出されて告られた。そのせいで、鴨橋は俺をバカにできなくなって、俺は鴨橋にドヤ顔できた。

「OKしたのか?」
「んー。断った」
「お、珍しい」
「先約があるからなー」
「……お前ってほんと、愛おしいほどのバカだな」
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