君との恋の物語-Red Pierce-

日月香葉

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卒業

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卒業式と言えば、男はスーツ、女は袴と相場は決まっている。

もちろん俺も例外ではない。

ただ、俺の場合はそのスーツをやたらと着慣れているところが、他の学生とは違うところだろうか。

例の出版社の契約社員となってもうすぐ2年、単純に仕事量が増えるだけだと思っていたが、実際は全然違っていた。

今となっては昔の自分に『当たりまえだろ』と言ってやりたいところだが、
例え一年契約であろうと、社員である以上それ相応の責任を伴うものだ。

仕事量が増えるのは当然のこと、必要書類の提出や申請も自分で行うことになる。

従って、出社する機会も増える、というわけだ。

それに、契約社員という立場は俺が学生であるということを配慮しての物だった。

卒業後、正社員になることがほぼ決まっている俺は、契約社員の立場であっても会議に呼ばれることもあった。

バイト時代が長いせいか、最初から、「右も左も分からない」という言い訳は通用せず、少々くろうすることになった。

こうして、仕事に関してはかなり忙しくなった。

幸いなことに教職も取らず、就活も必要ない俺は、基本的には家か大学の図書館で仕事をして、たまに授業に出るという生活スタイルになった。

家は引っ越して広くなったし、さぎりも就職が決まったあたりから泊まりに来る頻度が上がった。

俺は、学生からどんどん大人になっていく過程をさぎりと一緒に過ごせて本当に幸せだと思った。

だから、辛い時期もあったけどあの時距離をおいた二人の判断は、正しかったんだと、今は胸を張っていえる。

本当によかった。


大学の友達とは、徐々に疎遠になっていしまったが、決して仲が悪かったわけではない。

やつらは本当にいいやつらで、たまに大学で顔を合わせれば声を掛けてくれた。

それに、仕事で知り合った人達の中にも、仲間と思える人がたくさんできた。

俺は本当に人に恵まれている。

そうそう、恵まれているというのは、教授もそうだ。

かなり早い段階から相談していたこともあり、学校と仕事の両立にすごく協力的で、どちらもしっかりやりたいという俺の気持ちを理解してくださった。

おかげさまで卒業論文の提出も無事に間に合った上、高評価をいただいて卒業できることになった。

卒業論文が通った時は本当に嬉しかった。

この時ばかりは友達数人と朝まで飲み歩いてしまった。w

まぁ、若気の至りってやつだw

それが、つい2ヶ月ほど前のことだ。

あれから、たったの2ヶ月で、今日はもう卒業式。

それでも、やはり自覚が人を変えるのだろうか?

皆キリッとした表情だ。

この日ばかりは、学長の無駄に長い話もちゃんと聞いていた。

長いようで短かった学生生活も、もう終わるんだな。

俺は、学長の話を聞きながらそんなことを考えていた。

思えば、学生でありながら、生活の半分以上は仕事だったと思う。

好きなことだし、苦にはならなかったが、遊ぶ時間は極端に少なかったかな。

もう半分は、もちろんさぎりのことだ。

途中距離も置いたが、今となっては、いつも一緒だったように思っている。

駆け出しのバイト時代は少々苦労したが、今は収入面では同世代の中では頭ひとつ抜けていていて、良い部屋に住んでいるし、良い物も食べている。

さぎりと2人で、コンビニスイーツでお茶をしていた頃とは明らかに違う。

そりゃそうだよな。学生でありながらほとんど遊びもせずに働いていたんだし、このくらいの見返りはないと。

金銭的余裕があるおかげで、今は気持ちにも余裕がある。

さぎりとの同棲も、ここ半年を目処に始めるつもりでいる。

そうそう、さぎりの就職がどうなったかって、その話もしようと思ったんだけど、それは、本人から聞いてくれw

ともあれ、俺たちは今日、本当の意味で学生を卒業して社会人になろうとしている。

そして、2人で新たなスタートを切るんだ。
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