君との恋の物語-Red Pierce-

日月香葉

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新入社員

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その場にいるほとんど全員が慣れないスーツに身を包んで立っている中、俺は着慣れたスーツを着てそこに立っていた。

入社式が終わったら社員研修。

これはどこの会社も同じだと思うのだが、俺はその社員研修をちょっと不思議な気持ちで受けている。

というのも、研修の内容については新しいことばかりだが、研修の場所はほとんどが1度は訪れたことのある場所だからだ。

かといって、あまり目立ちたくないので、全員が案内図を見て歩き出してから着いて行く。

同期の中には俺のように契約社員から上った者は一人もいないし、それに研修後の配属先がすでに決まっているものもいない。

まぁ、当たり前だ。俺が特殊なだけだし、それだって、たまたま峰岸さんという知り合いがいたからというだけだ。

仕事には慣れてはいるが、能力に大差はないと思う。

だから、油断なんて少しもない。むしろ周りの同期より、気を引き締めていないと。


周りの同期は、学生時代の名残なのか、一緒に行動したり話したりしているが、俺はあまり参加しないようにしていた。

学生時代は、同級生とは長くても4年間一緒にいれば離れることになる。

でも会社員ともなればそうもいかない。基本的には終わりなく一緒に働くことになる。

仲が良いうちはいいかもしれないが、距離が近づけばそれだけお互いの嫌な部分も見ることになる。

それでも一緒に働かなければいけないのだから、最初から一定の距離を保っていた方がいい。

これが、学生半分会社員半分だった俺の出した結論だった。


全員での新入社員研修は1週間ほどで終わり、その後は何人かのグループに分かれて各部署での研修に入った。

大きく分けて4つある部署の研修をそれぞれ1週間ずつ受けるので、全部で1ヶ月になる。

既に配属の決まっている俺は、編集部の研修が最後になっていた。

研修についても、俺は少しも手を抜かなかった。というのも、もう配属が決まっているので他部署に関われるのはこれが最初で最後だと思っていたからだ。

とまぁ、仕事に関してはこんな感じだ。至って順調。今まで通りだ。


仕事を終えたら家に帰る。学生の頃から住んでいる部屋だ。会社からも近い。

研修期間だけは、編集部の仕事を免除してもらっているので、むしろ学生時代よりも時間がある。w

それに、研修期間中は土日休みなので、スケジュールも立てやすい。

今週は金曜日から週末の間だけさぎりが泊まりに来ることになっている。

この状態ならいつでも同棲が開始できそうだ。

俺としてはそんなに同棲や結婚をそんなに遠い未来として考えていないので、今から少しずつ準備を進めようと思っている。

具体的には、半年後、同棲を始めるタイミングでプロポーズをして、更に半年後に入籍。

結婚式や披露宴については、結婚を決めてから考えてもいいと思っている。


となると、俺1人で進められるのは、婚約指輪だけだ。

これは、少し特別な物を用意したい。いわゆる「一点物」だな。

一生に一度の事だし、高級であることよりも、世界でただ一つの物を渡したい。

そりゃそうだよな。唯一無二の相手なんだから。

これまでにも少し調べてみたのだが、俺が求めるようなものは都内まで行かないとダメそうだ。

研修が終わるとさぎりとも休みを合わせなければ会えなくなって行くので、指輪に関しての下見や打ち合わせは研修後に回して、今はなるべく2人の時間を取ろう。

お互いに今は大事な時期だ。

お互いの立場や生活を尊重しながら、時間を共有していくということ。

ベタベタに依存するのが大好きだったころとは、考え方もずいぶん変わったな。

これが、大人になるって事なんだろうか?


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