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45. マウント

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「篠原君。番さんとは順調?」

 クラスの女子が取り巻きを連れてまた聞いてきた。

「何で?」

 質問を質問で返すと彼女はクスクスと笑う。

「番さんってイケメンだから心配じゃない?相手に困らなそうだし」

 自分が怪我した日と元番の逮捕が関係していると疑っているからだろうか。
 自分の好きな人が逮捕されたのに目の前のコイツが幸せそうなのが不服なのか彼女はあえて洋を不安にさせるような発言をする。

「そういう奴には幸せアピールしてマウント取っておけばいいんだよ」

 この間、何気ない会話の中でこの話をした際に昊にそんな事を言われたなと、思い出す。

「大丈夫だよ。だってアイツ




    しか見えてねぇもん」


 笑顔でハッキリと彼女達にそう答えるとヒクリと口元がひくついたのがわかった。

「よく言ったぞ篠っち!!」

「!?」

 売店から教室に帰ってきた友人達が洋が女子達に絡まれていたのを見たと同時に洋の惚気発言を聞いて友人達は大声で拍手喝采をした。

 マウントを取られ、男子達から大声で笑われた彼女達は「何なのよ?!」と、悪態をつきながら洋の席から離れた。


「よく言った!」

「言うじゃん!」
 
 女子達が離れて入れ替わるように友人達に褒められた洋は照れくさそうに笑った。




----番にしか見ていない。





 その言葉は間違いないだろう。
 二人の絆は普通の番とは違うのだ。


「篠ッチと昊さんの絆は俺らがよく知ってるよ」

 病院まで駆けつけた日を思い出しながら友人達は言う。

 心配して病院まで走って、泣きながら自分達に自転車を貸してくれと頭下げてきた洋と
 

 洋の為に夜職をやめて昼職の正社員となり家族ぐるみの付き合いをしている昊の絆が女子の一声でちぎれるわけがわけがない。

「昊さんの方が篠っちにぞっこんじゃん」

「いやいや、篠っちも大概じゃね?ふだん澄ました顔してるけど昊さんの事になると乙女モード全開にして話すから「めっちゃ好きじゃん」って思うもん」

「俺もこんなツンデレな恋人欲しいぃぃいぃ!!」

「すみませんけどやめてくれませんか!?」

 昊の話題の時に乙女モードだなんて知らない聞いてないと言えば

「今度鏡持ってきてやる」

 と、言われてショックを受けていた。




---------








「こちらが部屋の鍵となります」

 契約を完了した木ノ本にマンションの鍵を渡す。

「ありがとうございます」

 やっと一人で落ち着けそうな場所に住めると彼は言った。

 Ωだからだろうか。木ノ本は中年男性にしては年齢より若く見える。

 元の配偶者とは番契約をしていたのかそうでないのかは首輪をつけているから分からないが、もし配偶者と番契約をしていたのなら番が亡くなればその契約は解消される。

 確か、個人情報の記入欄で配偶者の家と同居をしていたと書かれていたが姻族関係終了届を役所に出したと言っていた。



---やっと一人で落ち着けそうな場所。



 配偶者が亡くなって姻族関係終了届を出すまでさぞや肩身の狭い思い生活をしていたのかもしれない。

 




 


 
 
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