夏やすみ 姉妹奇談

tomonoshin

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姉妹奇談 幼少期その1

姉妹奇談 幼少期

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 姉と私は二段ベッドで寝ている。
姉が上。私も上が良かったけど、姉だから上なの!と、よくわからない一言で決まった。
まだ6才の私と7才の姉二人だけの部屋だった。我が家は古い祖母の時代に建てた大きな家だった。その二階建ての階段の下、離れのような変わった造りだ。
階段の下に引き戸があり、そこから出入りする。部屋をでると目の前が廊下でつきあたりがトイレ。と、いっても和式のくみ取りだ。
田舎町の古い家。祖母があたりの土地を買い取って建てた大きな木造の家。
玄関は広くガラス張りの引き戸。
土間があり、また引き戸がある。
それを開けると外に出る。
私は玄関が嫌いだった。

あの日を境に私は日に日に視えるのだ。

外を歩けば毎日同じお兄さんが繰り返し歩いている。
少し透けているけれど、そのまま人間らしく、歩いている。

私は気付かないふりをする。

気付かれてはいけないのだ。

こちらの世界から覗いているのを知られてしまう。
家に帰る。玄関を開ける。土間にはいりガラス張りの引き戸を開ける。
そこには、小さな女の子とおじいさんが立っているのだ。
うちの祖父はとっくに亡くなっているし、写真とまったく違う人だ。

その人達も少し透けている。
二人揃ってただ立っている。玄関に。

私は視えないふりをして、さっさと玄関を通りすぎる。

目は合わせない。うつむき加減にサッと入るのだ。毎日毎日。そんな日々を過ごすのだ。

6才の私はそれほど恐怖は感じず、ただ邪魔だ、と思っていた。

家族の誰にも視えていない。

父に聞いたら、この土地は、家を建てる前に御祓いなどはしていない、誰の土地かもわからないで祖母は買ったとだけ聞いた。

多分、この土地の前の持ち主だなぁ、と感じるのだけど、誰にも視えないのだから、説明のしようはない。

「もう、寝るよー」
姉とベッドに入る。しばらくすると、ギシギシと廊下を歩く音がする。
(またか..。)
おじいさんと女の子はそっと夜中に廊下を歩く。
ギシギシ、ギシギシ。

部屋には入って来ないようにと心で思う。

さぁ、もう、寝なくちゃ。

私は気付かないふりをするのだ。
気付かれてはいけないのだ。

こちらの世界の人間なのだから。

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