夏やすみ 姉妹奇談

tomonoshin

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姉妹奇談 幼少期その1

姉妹奇談 幼少期

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  その年の夏はとても暑かった。
居間の窓と台所の窓をあけても風がなくムシムシとしていた。
蚊取り線香の煙も少しも揺れることはなくそのまま上へ上へと昇り広がってゆく。
田舎町の古い木造の我が家にクーラーなどはもちろんなく、小さな扇風機が必死に首をまわすだけだ。
「暑いよーママ、アイス食べていい?」
「いいわよ、一本だけね」 
 ユリねえがアイスをとりに台所の冷凍庫をあけた。私も欲しくてソファから立ちあがった。壁際のソファの真上は居間の窓になっている。
 わたしはふと窓辺から視線を感じでとっさに振り向いた。
「叔母さん..。」
 「えっ?叔母さんなんているわけないじゃないこの子はまた..」
 その瞬間、物凄い風が一気に窓から吹き抜けたのだった。
それこそ、ブワァーっと表現すればいいのだろうか?
「きゃー、なに!?」
ユリねえの叫ぶ声。
ジリリリーン!!
「きゃっびっくり!電話!」
 急いで受話器をとり話し込む母。
 しばらくの沈黙のあと、母はこう言った。
「たった今、入院中の叔母さん亡くなったと..。」
 だって、窓のはしっこに叔母さんがこっちを見てたもの。顔は真っ白だったけど、怖くはなかったよ。ニッコリと笑ってたの。
  母とユリねえは私の方を向いて黙っていた。
「みんなのとこさ、回ってたんだねぇ..叔母さん、苦しんでたけどこれで、苦しまなくてよくなったんだ..。」
 母はそういって、明日は叔父さんとこにいくから、早く寝なさいといって、誰かに電話をしていた。
  そう、叔母さん、親戚とかともだちのとこを回るから急いでたんだって。風のようにすり抜けてすぐにいっちゃったの。風だけでも気付いてもらって、良かったね、叔母さん。姿は見えてなかったみたいだけど。また、私だけだったみたいだね。
さぁ、今夜も階段下の部屋に二人で寝なくちゃ
きっとまたギシギシとうるさいから、早めに寝なくちゃ。
明日は叔母さんのこと、また見えるかな。なにか話してくれるかな。そしたらみんなに教えてあげるのに。でも、そういう事いうとお父さんが怒るんだ。幽霊なんてこの世には居ないって。死んだらそれで終わりだって。なら、毎日歩いてるあの、お兄さんや、玄関のお爺ちゃんと小さい子にもそう言えばいいのかな..。

「もう、死んでますよ」って..。
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