君の友達になりたかった

茉夜ママ

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一章

ハンカチ

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 僕はどうしても彼女が気になったので、話しかけてみることにした。
しかし、急に話しかけたら彼女はびっくりするのではないか?不審者と思われたっておかしくはない。怖がらせてしまうかもしれない。
 色々考えて、結局は目の前でハンカチを落として、そこから会話を始めてみようと思った。
 僕は普段ハンカチを持ち歩かないので、次の日忘れずに家から持ってきた。
彼女はあいかわらず学校に行かず、ベンチに座っている。僕が声をかけるのは学校帰りだから今は素通りしよう。
 放課後、公園に着いた。
いざ、作戦決行だ。
彼女はよく、公園の床の一点を見つめたまま動かない。その視線の先にハンカチを落としてみよう。
ハンカチはひらひらするわけでもなく、普通にポトンと落ちた。
彼女は直ぐに気がついてベンチから立ち上がると、僕を追いかけてきてくれた。
声が小さいのかと思えば、意外と普通の声のボリュームで、「ハンカチ落としましたよ」と言った。
僕は急に緊張した。
普段学校でも、女の子とはあまり話さない。
しかも年下。見知らぬ女の子。
落ち着け。落ち着くんだ。
「あ、ありがとう」
「綺麗なハンカチですね。男の子のなのに」
「どういう意味?」
「私の周りの男子はハンカチくっしゃくしゃなんですよ」
それはわかる気がした。僕はハンカチを持ち歩かないので、よく友人に借りる。そのハンカチはいつもしわっしわだ。
「そういわれてみれば・・・。あ、でもこのハンカチまだ使ったことなくて・・・」
あまりの緊張に、しどろもどろになってしまう。
初めて近くで見て、初めて話した。
初めて近くで見た彼女は想像をはるかに超えて整った顔立ちをしていた。
可愛い顔立ちというよりは、かっこいい顔立ちで、目がキリッとしてて、鼻が高くてとても綺麗な顔だった。
とても中学生とは思えないような美貌だった。
 彼女はベンチに戻って行った。僕は隣に座った。
そしてずっと抱えていた疑問を聞いた。
「どうしてずっとベンチに座っているの?」
彼女は驚いたように僕の顔を見た。それからゆっくりと答えた。
「ここから見る景色が好きなんです」
「どうして?」
「ここからだと、登校している友達や子どもたちを見ることができるんです」
僕は正面を見た。いつも登校に使っている公園だ。見慣れた風景のはずなのに、その景色はいつもと違って見えた。
目の前は、夕日で空が赤かった。
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